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47 聖剣復活

 数百年前に折られた聖剣の一振り。


 妄聖剣ゼックスヴァイス。


 聖剣が全部でいくつあるのかは知らないが、とにかくコイツは折られて剣としては死んでいる。


 しかし俺の手でもってすれば。『至高の担い手』ならば生き返らせることができるかもしれない。

 折られて喪失した分を補う素材は、純粋なマナが濃縮して物質化したマナメタル。

 それらを、聖剣の残骸ごと溶かし合わせるのはヴィールのドラゴンブレスだ。


 それらを合わせて、新居の一角に設えてあった鍛冶場に篭ること三日。


              *    *    *


「出来たーッ!!」


 妄聖剣ゼックスヴァイスはここに復活した。


 折れて失われた刀身は見事に復元されて、スラリと細長い直線がそそり立つ。

 剣より噴き出すオーラは、他の聖剣よりも強いぐらい。この妄聖剣が完全復活したことを何より物語ってた。


「折れた聖剣が……!」

「復活……!」


 妄聖剣の所有者であるアスタレスさんも、そのお相手である魔王さんも、我が目を疑うとばかりにまん丸に見開いている。


「いや、そんなこと、かつてないことよ旦那様!? マジなの!? 本当にあり得るの!?」

「新聖剣から漏れる烈気……! これは間違いなく聖剣だ。復活した聖剣だ!!」


 プラティやヴィールも外野ながら驚きを隠せぬ模様。


「じゃあ、はい」

「『はい』ってッッ!?」


 いや、アスタレスさん。そんなに驚かれても。

 元からアナタの聖剣ですしコレ。

 アナタに持ってもらうために打ち直したんですし。


「しかし……! いいのですか? もはやこの世に一振りしか残ってない聖剣を……! いや、失われたはずの邪聖剣が聖者様の手にあるのを発見されたから二振り? ここで妄聖剣まで復活したから三振り……!?」


 とにかく混乱しているようだ。

 面倒くさいので、そのまま剣をアスタレスさんに押し付けた。


「やったではないか! アスタレス!!」


 そんな彼女を、歓喜と共に抱きしめたのは魔王様だった。


「これでお前の家系は、我が家に並んで魔王の座を競い合う資格を持った! これほどの名家を勢力圏の外に置いておけるわけがない! 今すぐにでもお前は復権できるぞ!!」

「魔王様……! いえゼダン様……!!」

「そしたらすぐに結婚しよう! 我が心は既に決まっていたのに、魔王の職務にかまけてお前とのけじめを伸ばし伸ばしにしていたのが悪かった!」


 魔王さんハイテンションだあ。


「失敗は繰り返さぬ。お前が我が手から離れていくことが二度とないよう。お前との確かな繋がりを持ちたい。アスタレス。……我が妻となってくれ」

「……はい」


 うわ即答。

 めでたいことだが、出来れば余所でやってほしかった。


「やったー! アスタレス様おめでとうございます!!」

「四天王失脚からの逆転大勝利ーーッッ!!」


 バティやベレナも我がことのように喜んでいる。

 これで一件落着といったところか?


「甘 い わ ね ッ!」


 と思ったら横やりが入った

 我が妻プラティではないか。

 せっかく大団円になろうとしていたところを、何?


「魔王様、失礼ながら申し上げます。アナタも為政に携わる御方なら、複雑怪奇な政局というものがそう単純に収まると本気でお考えなのですか!?」

「そ、そういうアナタは何者か?」

「失礼しました。名乗らせていただきますと、アナタの側室になることが決まりかけていた人魚の国の王女、プラティと申します」

「側室ッッ!?」


 告げられた魔王が一番ビックリしていた。

 なんで?


「側室など我は聞いていないぞ!? 正妻すらまだ定めていないのに、どういうことだ!?」

「やっぱり。人魚国との交渉は、一部の魔族勢力が主君に無断で進めていたってことね」


 プラティとの結婚話を?

 でもそれがブチ壊しになったから彼女がここにいて、そこから尾を引いてアスタレスさんや魔王さんもここへやって来たのだが。


「アスタレスの失脚工作といい、ここまで主君の魔王に内緒で好き勝手やる輩が、何人もいるとは考えづらい。根っこにいるのは多分一人ね。多分他の四天王の一人……!」

「ソイツ殺していいカテゴリか?」

「検討はしておきましょう。でもあくまで旦那様の迷惑にならないようにね」


 ヴィールとプラティが怖いこと仰っている。

 ……できるだけ平和的にね?


「でもここでアタシが言いたいのは、そう簡単に物事は運ばないでしょう、ってこと。ここまで主命を無視して勝手放題する不届き者がいるんだもの。どんな屁理屈でもこねて、二人の結婚を邪魔しようとするに違いないわ」

「そうだな、聖剣が増えるというのは政略のカードとしては弱いかもしれない」


 ヴィールまで、真面目で非情な一言を。


「聖剣が魔族にとって重要なものなら、失脚中のアスタレスから取り上げてしまえ、という意見も出るかもしれない。聖剣を持つ家系に魔王となる資格があるなら、現魔王家との関係も微妙になりかねない」

「今まで厳密にされてきた王位継承のルートに紛れが出るってことだものね。最悪、旧権力と新権力に分かれて内紛に発展しかねないわ」


 俺にはよくわからないが、なんか難しい話?


「で、では、どうしたらいいというのだ……!?」


 魔王さんが戸惑い気味に尋ねる。

 人格者で豪胆だが、こうした謀略系は苦手らしいな。


「やるべきことは一つだと思うわ」


 そしてノリノリのプラティである。


「相手が横やりを入れてくるなら、そんな小細工を弄するよりも早くすべてを決着させちゃえばいいのよ!」

「そ、それはつまり……!?」


 プラティは言った。


「この場で今すぐ結婚しちゃえばいいのよ!!」

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