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59話 イノチの決意


「か…神だとぉぉぉ!!種族を…人間を『神』に変えたと言うのかぁぁぁぁ!!」



その言葉に驚愕するウォタ。

そんな彼にイノチは苦笑いを浮かべたが、それ以外のメンバーたちの視線が痛かった。

フレデリカも目を見開いて自分を見ているし、いつものほほんとしているアレックスですら、ドン引きした表情を浮かべているのだ。



「B…BOSS…?エレナの種族を…か…『神』に変えたと言うのは…よく意味が…」



博識なフレデリカですら流石に理解が追いついていないようで、額を抑え、声を震わせながら問いかけてくる。

それらに対して、イノチは頭を掻きながら、ハンドコントローラーを発動して説明を始めた。



「いやさ、この『ハッカーの極意』ってアイテム、本当やばいんだよ。普通じゃはじかれるはずの権限まで簡単に行けちゃってさ!その権限を使ったら、ステータスとかいじり放題だし、何でもできちゃうんだよね!で、エレナを助けた後、少しいじってみたら種族が変えれちゃったんだよ。」


「いや…お主の言っている意味が全くわからん…権限とか、ステータスがいじり放題とか、一体何のことなのだ。」


「そうですわ。いくらBOSSが異常だとしても…種族を変えてしまうなど、世の理に反しているのですわ。それこそ、神の所業です…」


「そうだよぉ♪エレナさんが人間じゃなくなっちゃったなんてぇ♪びっくりだよぉ♪」



アレックスまでプンスカと怒る始末に、イノチは内心焦ってしまう。



(これは笑って誤魔化せる話ではないなぁ…やっぱり調子乗って、種族変更しちゃったのは不味かったかぁ。)



皆、ちゃんと説明しろと言う視線を向けてくる。しかも、その視線がいつになく鋭くて痛い。

しかし、イノチニにも言い分はあるのだ。



(でもさ、自分の仲間の種族を変更できるとか、やっぱゲーマーとしたらテンション上がるじゃんか!しかも、最高位の種族が選択可能とあっちゃ、誰だって試してみたくなるだろ!)



そう内心で言い訳するイノチ。

なんとか自分を正当化しつつ、皆への返答を考える。



(はぁ…視線がかなり痛い。適当な言い訳じゃ、みんな納得しないだろうな…)



周りから視線で責め立てられたイノチは、観念したように肩をすくめると、エレナに視線を向けた。


未だオーディンと激闘を繰り広げているエレナ。その攻防は、ほぼ互角と言っていい。


これは、イノチにとって嬉しい誤算だった。エレナがあそこまで戦えるならば、フレデリカやアレックス、さらにはメイだって…


それに、ウォタも少しステータスを修正しただけで、あのオーディンとほぼ互角に戦えたのだ。彼の場合、種族は『竜』のままだったから、少し力が及ばなかったが、それでも今後のことを考えると、ウォタはについても心配はいらないはずだ。


なんたって、彼は本来、この世界で一番最強の存在なのだから。


課題はある。

だが、それを補うほどのこの誤算は、イノチが決意を固めるためには十分な結果であったのだ。


なにしろ、自分がこれからやろうと考えていることは…


そこまで考えて、イノチはウォタたちへと向き直る。

突然、真面目な顔を浮かべて自分たちに視線を向けるイノチを見たウォタたちは少し驚いていたが、何かを察したように、口を開くことはなくイノチをジッと見据えている。


イノチは、そんな仲間たちの顔をぐるりと見渡して、決心したように静かに話し始めたのだ。



「この世界に来て、俺はいろんな仲間と出会うことができた。エレナ、フレデリカ、アレックス。ウォタもそうだし、ミコトやゼンさん、タケルたちにトヌスやゲンサイ…みんな、普通の生活を過ごしてたら、絶対に会えなかった仲間だ。もちろん、アキンドささんやメイさんもね。」



イノチはそう告げながら、自分の両手に目を落とす。



「初めは、なんで俺がこんな世界にって、恨みもしたんだ。嫌な思いでもたくさん思い出したし、元の世界に戻りたいって何度も考えたよ。けど、笑ったり、泣いたり、悔しんだり、共感したり、悩んだり…いろんなことをみんなで経験して、みんなで分かち合ってきて…俺は結局、楽しかったんだよなぁ。」



再びエレナの方へと視線を向けたイノチは、激しい音を響かせながら戦うその姿を頼もしく思う。



「エレナは一番初めに、俺がガチャ魔法で召喚した仲間なんだよ。あいつと出会って冒険が始まって、みんなと出会えて…元の世界に比べたら、考えられないくらいたくさんの仲間ができた。そして、俺はそんなみんなが大切なんだ。」



イノチはそう告げてウォタたちへ向き直り、オーディンやヴェーたちを親指で指差した。



「この世界にはさ、あいつらみたいな神様がいる。そして、奴らは俺たちを駒のように扱ってやがるんだ。ウォタやゼンさんには悪いが、俺はそれが許せない…勝手にこの世界に連れてきて、娯楽の駒にされるなんてまっぴらごめんだ。」



ウォタは少し複雑そうな表情を浮かべているが、イノチは話し続ける。



「しかも、あのクロノスとか言うやつは、俺のいた世界からこの世界に人を送り込んで、何かをしようと企んでいるときたもんだ。」



イノチはククッと笑うが、その表情に笑みはなかった。

フレデリカやアレックスが見守る中で、イノチはこう告げる。



「俺は信心深くないからね。この世界で、この力を使って、何をやり遂げるのか…もう決めちゃいました。だけど、あいつら、神って名乗るだけあって強いんだよ。ウォタでさえ、敵わないほどにね。だから、今回はエレナに強くなってもらって、俺たちがそれを本当に成し遂げられるのかどうか、ある意味、実験に付き合ってもらったんだ。」



そう笑うイノチ。

その言葉にフレデリカが問いかける。



「質問の答えにはなっていないですが…BOSSにはやりたいことがあって、それを完遂するためには、エレナの種族を変えるだけの事をしなければならない…そう言うことです?」



視線を逸らして、「あぁ。」と答えるだけのイノチに、今度はウォタが問いかけた。



「お主が我らに詫びを入れた理由…それがやり遂げたい事と関係あるのだな?ふむ…なんとなくわかってきたぞ。」



イノチは小さくため息をついた。そして、再び皆に視線を向け、はっきりとこう告げる。



「みんなには悪いけど、どうか俺に付き合ってもらいたい。」


「相変わらず、BOSSはくどいですわ。さっさと作戦を教えてもらえます?」



エレナの言葉に、イノチは苦笑いを浮かべた。他のメンバーを見れば、小さく頷いている。


イノチはそれが嬉しくてたまらなかった。なんだかんだ言っても、自分を信じてついてきてくれる仲間の存在が…


イノチは溢れる笑顔から顔を引き締める。そして、今度は不敵な笑みを浮かべて、皆にこう告げたのだ。



「この世界を……………………。」



だが、イノチの言葉に被さるように、大きな爆発音が聞こえる。皆が驚いて振り返れば、エレナとオーディンが距離を取って睨み合うその間の地面に、巨大な穴が開いていた。


何か大技を放ち合ったようだが、二人にはまだまだ余力があるようで、ニヤリと笑い合うと再び刃を交え始める。


その様子を見たイノチは、クスリと笑った。

そして…



「そんじゃまぁ、神様たちに一泡吹かせてやろうじゃないか!!」



そう豪語するのであった。

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