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17話 掌上のダンス


「そんな…し…死んだはずじゃ…」


「死んだふり…うまかっただろ?正直、そっちの彼女の魔法が予想外の威力で少し焦ったけどね。鎧は…正直勿体無かったけど、まぁ必要経費と思えばいいさ。」



フレデリカを指して再びクツクツと笑うレンジに対して、イノチは困惑しながらも核心をぶつけた。



「ロノスとレンジが同一人物…と言うことはもしかして、お前は最初から俺たちのこと知ってて…」


「さすがイノチくん…察しがいいね。その通り、俺は最初っからずっとレジスタンスのリーダーであり、創血の牙の団長さ。君たちがこの国に来ることはある筋から知っていてね。この国の革命に一役買ってもらったのさ。なかなか面白いゲームだったよ。」


「ある筋…だと…?」


「アハ…心配しなくていいよ。アキナイ…彼はこの計画には関係ない。本当にこの国を良くしたいと思っているだけだよ。」



レンジがそう笑みで返す中、イノチは心の中でホッとしていた。


これまでお世話になってきたカルモウ一族は疑いたくない…

それがイノチの本音だったから。


しかし、納得がいかないセイドが食いついた。



「団長…俺たちはあんたのことだけは信じてたんだ…尊敬して信頼して…それなのになんで!」


「お前がそれを言うなよ、セイド。お前は創血の牙を裏切ったじゃないか。」


「そ…それは…」



その言葉にたじろぐセイドを見て、レンジはさらに笑みを深めた。



「ククク…まぁ、お前の裏切りも全部俺の計画のうちだから安心しな。お前がそうするように前々から仕組んでいたんだから。」


「なっ…!」



その言葉を聞いて驚くセイドの横で、イノチもまた驚きを隠せずにいる。


そんな中で、レンジはさらに言葉を続けていく。



「クラン『創血の牙』は、リシア転覆のために俺が創った駒にすぎないのさ。本当に簡単だったよ…お前も、そこに転がるアカニシたちも、簡単に騙されて俺についてくるんだからな。」


「全部、お前の手のひらの上で転がされていた…そういうことか。」


「そういうことさ。君たちがサザナミに来ることも、レジスタンスの仲間になることも…そして、レオパルを討つことも…全部俺たちの計画だったのさ。唯一の誤算と言えば…彼らかな。」



レンジはそう言うと、振り向くことなく自分の後ろを親指で指した。


その先にいるのはケンタウロスとミノタウロス。



「俺らか?フフフ、そうだろうそうだろう!」



自分たちのことを言われ、腕を組んで嬉しそうに笑うケンタウロス。

ミノタウロスも鼻息を荒くして自慢げだ。



「彼らに挑めるレベルのプレイヤーは、まだ聞いたことがなかったからね。それがどうだい!倒すんじゃなくて跪かせ、手駒に加えてしまうなんて…さすがに予想はできなかったよ。」


「て…手駒…!?ちげぇーぞ!俺たちは姉さんたちについてるだけで、使われてるわけじゃねぇ!」


「そーだミノ!!お嬢のお手伝いをしているだけミノ!!」



一方では…



「ふむ…なかなかの分析力ですわ…」


「だね♪」


「姉さん!!」

「お嬢!!」



フレデリカとアレックスの冷静なコメントに、ついついツッコミを入れてしまうケンタウロスたち。



「フフフ…神獣たちをそんな風に扱えるなんて誰も予測はできないよ。でも、それも許容範囲ではあるんだけどね。」



肩をすくめ、余裕の態度でそう告げるセイド。

イノチはそんな彼に静かに問いかけた。



「な…何が目的なんだ。俺にはお前の行動の意味が全然わからない…」


「まぁ…そうだろうね。でも、今その理由説明するつもりはないし、そんな義理もない。」



レンジは再びまっすぐな目をイノチは向けた。



「だけどまぁ、状況が状況だからね。こんなこと言うのもなんだけど…ここは手を引いてくれないかな?イノチくん。」


「…お前たちを…見逃せと?」



レンジは首を振る。



「これでも立場は対等だと思ってるんだぜ。俺たちはこれからリシアを立て直す。そのためにはそこにいるアカニシたちが必要だ。でも、君たちがダメだと言うならここで戦うしかない道はないじゃないか。」


「いくらお前が強くても、これだけの人数さだぞ。アカニシたちも捕まったままで切り抜けられると思っているのか?」


「そうだね…まぁ、俺も無事じゃ済まないだろうけど、三人くらいは殺せると思うよ。だが、君はそれを許容できるかい?」



その言葉を聞いて、イノチは考えていた。


レンジの言うとおり、ここで戦いになった場合には、自分たちも大きな痛手を負う可能性が高いことはわかっている。


レンジ…いや、ロノスの強さはさっき見たばかりだし、イノチたちの中で最高戦力とも言えるフレデリカの力を超えるレンジに、無傷で勝つことはできないだろう。


しかし、ここで逃すことにもデメリットはある。


彼がリシアを立て直し、再びジパンにその手を伸ばさないとも言えないからだ。


イノチはその二つを天秤にかけて悩んでいた。

そんなイノチに対してレンジが提案する。



「いくら俺でもリシアを立て直すには時間がかかる。君たちがジパンへ戻り、準備を整えてもお釣りが来るほどにね。君の心配はジパンの安全だろ?向こうの王へ伝えなよ。和平を結ぼうじゃないか。」


「…それに対するお前たちのメリットは?」


「フフフ…用心深いんだな。」



肩をすくめてそう告げたレンジは、横にいるスタンに視線だけを向けた。


それを承諾したスタンが口を開く。



「レンジさまの言うとおり、我々はリシアを立て直したい。国の傾きがある程度持ち直したとしても、諸外国との貿易がなければ途中で頓挫しかねない。この世界において貿易のハブとなっているジパンとは、当分の間仲良くさせていただきたいと存じます。」


「当分ね…」



イノチはため息をついた。

レンジの言う『当分』という言葉は実に抽象的で具体性がない。


すぐに襲いかかってこないという確約もなく、まったくと言っていいほど信用できるものでもないのだ。


だが、イノチの中の天秤は仲間の命に傾いた。

そして、イノチは決断する。



「わかった…今回は手を引こう。」


「ちょ…ちょっとBOSS!!何言ってんのよ!」



エレナが驚いて反論し、ケンタウロスが腕を回しながらそれに同意する。



「そうだぜ!俺らにかかれば、こんな弱っちそうな奴ら一瞬で…」



しかし、ケンタウロスがそこまで言ったところでイノチがそれを遮るように手を上げた。



「エレナもケンタもここは我慢だ。今戦ったらほんとに誰か死ぬ…それは俺もフレデリカもセイドも理解してるんだ。」



イノチの言葉にうなずいたフレデリカとセイドの様子は、エレナを納得させるには十分であった。



「ありがたいね。君が…君たちが聡明な人間でよかったよ。」


「本当はしたくないが、今はお前を信じることにする。だが、ジパンに手を出した時は全力で止める。たとえお前と差し違えることになってもだ!」



レンジはその言葉に笑みを浮かべた。

そのまま、イノチとレンジは互いに強い眼差しをぶつけ合っていた。





イノチたちが去った後も、王宮内ではレジスタンスたちが忙しなく動き回っている。


アカニシたちを回復させ、レンジとスタンは一度拠点とする執務室へと戻っていた。



「スタン…君はどう思う?」


「イノチさん…ですか?」



イスに座り、無言で笑うレンジの前でスタンは少しだけ考えて口を開く。



「あの御方がどう思われるかは別として、我々にとって大きな障害になるでしょうね。」


「…そうだね。あの力…彼はおそらくだけどかの"御方"の加護を受けているんじゃないかと思うんだ。」


「それには同意しますね。あなたのスキルを打ち破るほどの強力な力…であれば、そう考えるのが妥当です。」



レンジは目の前のテーブルに置かれたコップを手に取り、ゆっくりと口へと運んだ。



「我らが御方はこの事を知っていると思うかい?」



コップを置きつつ、そうたずねるレンジにスタンは首を横に振る。



「私にはわかりませんよ。普段、何を考えているのかもわからない方ですから…まぁ、おそらくはご存じなのではないですか?」



悩ましげに告げるスタンの言葉に笑うと、レンジは立ち上がって窓の外を覗き込む。


綺麗な夕焼けが、山々の向こうに沈もうとしている様子が見え、それを眺めながらレンジは小さくつぶやいた。



「まるでティタノマキア…聖戦の縮図のようだね…」

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