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37話 恥は承知がモットーです


「この街を救うですと?それはいったい…」



突然の言葉に戸惑うボア。


無理もないだろう。

いきなり街を守ろうと言われても、その理由がわからないのだ。


トヌスもそれは理解しているからこそ説明を続ける。



「会長さんはキンシャという人物に覚えはあるかい?」


「キンシャ…あのオオクラと一緒にいた者だな?覚えている。ここにもよく来ていたからな…そこの馬鹿者と一緒に。」



ギロリと睨みを効かせるボアにヘスネビはさらに小さくなる。

しかし、トヌスはそれには構わず話を続ける。



「そいつがジプトから送り込まれた間者…いわばスパイってやつだったことも知ってたかい?」


「スッ…スパイですと…!?」


「そうだ。先日の俺の公開処刑の件については、ジプト法国が一枚噛んでいて、ホニン国王の失脚を狙っていたと考えている。」


「そっ…そんなまさか!」



驚いて立ち上がるボアに落ち着くようにトヌスは声をかける。



「俺が得た情報では、ジプトだけでなくリシアとノルデンもこの国を我が物にしようと企んでやがる。現にタカハにはノルデンの差し金も入り込んでいるようだからな。」



トヌスはそう言うとソファへ背中を預けた。


タカハでタケルたちを襲った人物について、当初調べてみたが正体は分からなかった。


しかし、トヌスは先日会ったイザムからその情報を聞き出していたのだ。


彼女が言うには、各国の情勢は以下の通りだ。


リシアでは現国王の生誕祭が近づいている。

それに合わせて国内の軍の動きが活発になっていて、まるで遠征でもするかのような量の人と物資が集められている。

生誕祭には各国の外交官も呼ばれるため、おそらくはそこで宣戦布告をし、ジパンへ乗り込んでくるのだろうと。


ジプトでは同じような動きがあったが、今現在『霧雨の悪魔』と呼ばれる殺人鬼が多くの街で暗躍しており、そちらに国の意識が向きつつある。

そのため、ジパン国内にいるジプトのプレイヤーたちは、本国と連絡がつかず身動きが取れない。


ノルデンについてはわかっていることが少ないらしい。

敢えて言うならば、同じようにスパイを送り込んできていること。ただし首都トウトではなく、別の都市にだと言う。

その理由はわからないが、イザム曰く、タケルたちを襲ったのはノルデンの者で間違いはないらしい。



それらの中から、トヌスは渡していい情報だけを選んでボアに伝えていく。



「…と言った感じだ。このままだとこの国は周りの国のどっかに乗っ取られちまう。俺たちはそれを防ぐために動いてるんだが…なにせ、この国は戦乱を終えて間もない。圧倒的に人手が足りないんだよ。」


「国には…これらのことは伝えたのか?」


「そういう状況だということは伝えてる。それに俺の部下たちは国軍に引き取ってもらった。各都市の人手不足を解消させるためにな。」


「…そうか。しかし、君がここに来たということはまだまだ足りないということか。そういえば、君を救った彼らはどこに?」



ボアの問いにトヌスは身を乗り出して答える。



「うちのBOSSはリシアに行ってるぜ。ジプトにも仲間がな。ノルデンに行くのは情報も人手も足りなくて諦めたが…」


「なんと…!リシアにか。それは心強いことだが危険ではないのか?」


「まぁ、それも承知の上さ。この世界じゃリシアが1番厄介だからな。それを何とか出来そうなのはBOSSしかいないしよ。」



ボアは納得したようにうなずいた。



「しかし、それらのことから考えれば、あとはノルデンということか…君は我々には具体的に何を求めているのだ?」


「まぁそう簡単にいってくれればいいんだが…俺の願いは単純さ、人脈と人手がほしい。」



ボアはトヌスの目を見る。

真っ直ぐとした瞳には、決意すら感じさせる強さがある。


しかし、ボアには疑問があった。



「一つ疑問なんだが…君はなぜそこまでするんだ?」


「ん?」


「助かったとはいえ、この国は君を殺そうとしたんだぞ。私だってそれには一つ噛んでいたと言ってもいいほどだ…なのになぜ…」


「理由か…そんな大したものはねぇさ。」



トヌスはそう言って小さく笑う。



「確かに俺はこの国に殺されかけた。商会にもだいぶ世話になったな。こいつにもたくさん殴られたし…」



その言葉を聞いてヘスネビはもう見えなくなりそうなほど小さくなっている。



「だけどよ、自分がいる国が他の国に乗っ取られるのを黙って見ておくほど嫌いにはなってねぇ。ただそんだけさ。」


(またその目か…)



ボアは先ほどと同じようにトヌスの瞳の奥にある強さの光の見ていた。

そして同時に、その光の正体が知りたいとも思った。


彼を突き動かすものがいったい何なのか。

彼に対する罪悪感からではなく、トヌスという男の寛容さに興味を惹かれたのである。



「人脈と人手か…」



小さくつぶやくボア。



「最善を尽くしたい。リシアもジプトもノルデンも、全ての国が攻撃を仕掛けてくると考えて準備しておきたいんだ。」


「わかった。できる限り協力しよう。まずは国王へ直接打診する。私が言えば少しは信じてくれるだろう。それからトウトとタカハの軍の増強だな。」


「そのことについてなんだけどよ…俺が依頼した手前こんなこと聞くのもなんだが、どうやって人を集めるんだ?」


「…なんだ?君は私の人脈を頼ってきたんだろ?その範囲を知っているものと思っていたが…」


「いや、すまんが知らない。教えてもらってもいいか?」



それを聞いた途端、ボアは大きく笑い出した。



「ハハハハハハッ!まさか知らずに依頼に来たのか!ますます気に入った!君は面白いやつだな!!」


「…すまねぇな。俺は恥は承知がモットーだからよ。」


「気にするな!君はジパンは島国だということを知っているか?」


「あぁ、それは知ってるぜ。」



ボアはその言葉にうなずきながら、テーブルに大きな地図を開く。



「これはこの国の領土を記した地図だ。見てわかるようにジパンの周りには多くの島が存在していて、その全てがジパンの領土だ。これら一つ一つにはだいたい2,000人程度の人々が住んでいる。」



ボアはそれらの島を赤い筆で記していく。

それらはまるで、ジパンを取り囲むように無数に存在していた。



「こんなにあるのか…」


「多いだろう?」



ボアは自慢げな表情を浮かべている。



「だが、これ全部から人をかき集めるのは一苦労じゃないか?」


「それはそうだ。海を渡るのは簡単ではないからな。陸路の移動もあるから、主要な都市に人を集めるとしたら、期限ギリギリと言ったところか…」


「それじゃあ意味がない。寄せ集めで勝てるような相手でもないだろ?」



トヌスは残念そうに首を横に振った。

しかし、ボアは笑みを浮かべて話を続ける。



「主要な都市に集まるならば…と言っただろ?そんなことはしないさ。彼らには彼らの得意な戦い方があるしな。」


「どういうことだ…?」



ボアは小さな船の模型を取り出してきて、地図の上に並べ始める。


そして、楽しげにこう告げた。



「海戦だよ。彼らは船での戦いに長けているんだ。だから、その力を借りてこうするのさ。」



ボアは船の模型を数カ所にまとめ上げていく。



「リシアからの航路がここ。ジプトからはここだな。ノルデンはここと…ここか。」


「なるほどな…要は海の上に船の防壁を作るってわけか。」


「上陸できなきゃ、奴らも何もできんだろう?」



腕を組んで自慢げに鼻を鳴らすボア。

トヌスは感服したとばかりに息をつくと、再びソファに背を預けた。



「助かるよ。これでなんとかなりそうだ。」


「気にするな。あとは各国の動きを常に探っておきたいところだが…」


「それは俺に任せてくれ。BOSSや仲間と連絡する手段は整ってるからな。」



ボアはそれを聞くと「完璧だ。」とうなずいた。



「それじゃ、細かいことを決めてすぐに動き出そう。少し待っていてくれ。副会長たちを呼んでくる。」



そう告げて部屋を出ていくボアを見送りながら、トヌスはもう一つある懸念について考えていた。



(あとは…この国のプレイヤーたちをどうするか、だな。)

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