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50話 思いがけない再開

すみません…

いつもより、600文字程度長くなってしまいました。

ご了承ください(>人<;)


「本日!王城前の広間にて、罪人の処刑がある!」


「執行は、正午の予定だ!」



朝早くから、ジパン国の兵士たちが街の中でそう叫びながら、ビラを放り投げて歩いていく。

人々はそれを拾い上げ、仲間内で声をかけ合う。


そんな喧騒の中を、イノチとボウは歩いていた。



「正午か…できればよく見える場所がいいんだけど…。ボウ、いい場所知らない?」


「…いい場所…ある。」


「いいね!じゃあ、1時間前になったらそこに向かおうか。」



ボウはその言葉にうなずく。



「アレックスたちの方も、首尾よく進んでるみたいだし…俺らは朝飯でも食べようぜ!」


「…」



不安げにするボウに対して、イノチは大きく笑みを向け、肩を叩いてガムルの店に向かった。


店に着くと、ガムルが迎えてくれた。

一番端の席を指差すガムルに挨拶して、イノチとボウは席につく。


店の中はあいかわらず閑散としている。

まぁ、朝も早いから仕方ないのかもしれないが。


ガムルが注文を取りに来ると、イノチはボウにメニューをたずねる。



「ボウ、何食べる?好きなの選んでいいよ!」


「で…でも…」


「いいからいいから!ねぇ、ガムルさん!」



声をかけられたガムルは、テーブルに置かれたポップを指差した。



『朝ランチ:シミ貝のスープと焼き魚定食(とれたて卵付) はい/いいえ』



イノチは迷わず『はい』を指す。

それを見たボウも、しぶしぶうなずいた。


ガムルはボウの肩をポンと叩くと、カウンターの方へと戻っていく。



「ボウ…まぁ、心配だよね。」


「…」



イノチは「安心しろ」と言いかけて口をつぐむ。

逆の立場なら、自分も不安は拭えないだろうから。

そのかわり、結果で応えようとイノチは心に誓った。


再び店内に視線を向ける。

本当に閑散としているなぁと感じながら、無意識にコップに手をかけ、口に運ぼうとしたその時だ。


店に入ってきた男の顔を見て、イノチは驚いた。


手から落ちたコップは、カシャンっと音をたて床で割れる。

その後に気づき、男はイノチを見るとニヤリと笑って、歩み寄ってきた。



「ゲッ…ゲンサイ!お前…なんでここに…!」


「なんでって…別にいちゃいけねぇ理由はないだろう?」



イスを鳴らし、立ち上がって構えるイノチに対して、ゲンサイは笑いながらそう返した。



「あの茶髪女が捕まったと聞いてな。お前もいると思って顔を拝みにきてやったわけだ。素直に喜べよ、クククク。」


「なんでお前がそれを知ってんだ…」



嫌みたらしく笑うゲンサイに、イノチは強ばった顔色で聞き返す。ボウもイノチの様子を見て、只事でないことを理解しているようだ。


それに…

ガムルもそうだが、二人はゲンサイに対して、異様なまでの強さを感じていた。


特にガムルは、傭兵としての経験が長かったためか、イノチの前に立つ男に対して、本能的に警鐘を鳴らしている。


包丁を片手にゲンサイを睨むガムルに、イノチは落ち着くようにジェスチャーで伝える。



「安心しろよ。今日はお前を殺りに来たわけじゃねぇから。俺は今、この国の雇われ傭兵をしてんだよ。だから、今日の情報も兵士に聞いて知ったってわけだ。」


「傭兵…?なんでまた…」


「答えてやる義理はねぇが…まぁ、お前と俺の仲だ。俺はよぉ、この国を出ることにしたんだ。そして、そのためには国の傭兵になるのが一番早えのさ。」


「国を…出る?」



突然、真面目な顔になったゲンサイに、訝しげな表情を向けるイノチ。



「もうすぐランク戦が始まるのは前にも言ったな…他の国でもそれは同じだが、その他国のプレイヤーを狙ってもいいんだ。だから、今のうちに殺っといて数を減らしとくのさ。」


「他国から?…ランク戦って国対抗なのか?」



イノチの言葉にゲンサイは笑う。



「ばぁ〜か、ちげぇよ。この国のプレイヤーどもは、どいつもこいつも弱い奴ばっかなんだよ。他国の奴らに横取りされたくねぇんだ!この国は、みんな俺のもんだからな!」


「一瞬だけ、お前がいい奴かもと思った俺がバカだった…」



イノチのぼやきも気にすることなく、ゲンサイは話を続ける。



「しっかしよぉ、お前の連れ、どうすんだ?このままじゃ、晒し首だぜ!」


「あぁ〜それなら手はもう打ってある。」


「ほう…意外に策士ってわけだ…」


「あっ…国側のお前には教えないよ?」



教えろとばかりに、知りたそうな表情を浮かべたゲンサイは、イノチの言葉を聞いてムッとした。



「チッ…まぁいいけどな!俺は今からジプト法国へ向かう。そこでプレイヤーどもを根絶やしにして戻ってくるからな。戻ってくる頃には、ランク戦が始まる前だろう…そしたら、今度はお前らの番だぜ。」


「俺たちだって、この前みたいに簡単にはやられねぇよ!」


「まぁ、せいぜい頑張りな!張り合いある奴がいてくれた方が、おもしれぇからな!」



ゲンサイはそう言い放つと、高笑いしながら店を出て行った。



「イノチの…兄貴…」


「大丈夫大丈夫!まったく、なんなんだよ。あいつは…」



笑いながらイスに腰かけるイノチは、誰にも気付かれないように拳を強く握りしめたのだった。



一方、イノチたちと別行動中のアレックスたちは、まだ倉庫で待機をしている。


すると、傭兵の一人がアレックスに声をかけてきた。



「お嬢…奴が来ました。」


「ほんとに?意外と早かったね♪それじゃあ、予定通りいってみよぉー♪」



その言葉に傭兵はうなずいた。




倉庫の前に立つヘスネビ。



「おい!開けろ!」



杖をクルクルと回して偉そうに声をかけると、傭兵が扉を開く。



「どんくせぇなぁ!俺が来たらすぐ開けろよ!」



ブツブツと倉庫の中へと入っていくヘスネビ。

入口の傭兵はそれを見送ると、再びドアを固く閉ざした。



「で、奴らはどうだ?」


「へい…飯もやらずに転がしといたんで、元気もほとんどねぇです。」


「そうか。ククク…今日の正午には、あの罪人は首落とされちまうからなぁ。それすら見られねぇのは残念なこった!カカカカカ!」



案内する傭兵へ独り言のように話しかけながら、ヘスネビは奥へと進んでいく。


そして、ロドたちを捕らえている場所へと足を踏み入れたヘスネビは、目の前の状況に一瞬、体が固まってしまった。



「よう!ヘスネビ!遅かったな!」



ロドが声をかけると、各々好きなことをしていたトヌスの部下たちが一斉にヘスネビへと顔を向ける。



「なっ…お前ら…え…?いったいこれは…どうなって…?」



状況が全く飲み込めず、動揺を隠せないヘスネビ。

ロドたちはニヤニヤと笑っている。



「おっ…お前ら…!何やってんだ!!こいつらを早く捕まえろ!」



近くにいた傭兵たちに大声をあげるが、傭兵たちは全く動く気配すらない。



「俺の言葉がわからないのか!?このアホタレどもが!いったい誰のおかげで…おい、お前!なんとか言わねぇか!!」



そう言って肩に手をかけた背の小さな傭兵が、似合わない声を上げる。



「ひゃん!おじさん、突然なにするの!?」


「なっ…!?子供?!おっ…お前、誰だ!?」


「誰って…あっ!そうかぁ♪」



小さな傭兵は嬉しそうに、飛び上がった。



「へへへへぇ〜、誰だと聞かれたらねぇ〜♪」



そう言いながら、ポーズを決めるが…



「あっ…そうだった。エレナさんいないんだ…」



相方がいないことに気づいて、気を取り直す。

ヘスネビはまったく状況が掴めず、口を開けたままその様子を見ている。



「え〜っと…それじゃいくね!誰だ誰だと聞かれたら、名乗るが世の常、人の常!」



続けて、ポーズ。



「轟く咆哮!熊!」



そして、相方のポーズも兼任。



「駆け抜けるひづめ!鹿!」



口上もクライマックス。



「森林を統べる獣王、熊鹿姉妹!参上!!」



美少女戦士顔負けのポーズをとってはいるが、相方がいないので、なにぶん中途半端ではある。


が、満足げな様子の小さな傭兵であった。



「そっ…それは…ガッ…ガムルの店で見た…」



ヘスネビの顔が驚愕に染まっていく。



「おじさん♪また会ったねぇ♪」



大きな盾がガシャンと音を立てた瞬間、ヘスネビは一目散に逃げ出した。

入ってきた入口までたどり着くと、ガチャガチャとドアノブを動かすが、扉はいっさい開かない。



「おい!ここを開けろ!早く!!」


「ねぇねぇ、どこにいくの♪おじさん♪」


「ひっ!!」



扉を叩き、声を荒げるヘスネビは、後ろから声をかけられて、ビクッと体を硬直させた。


振り向けば、可愛らしい小さな笑顔の他に、ロドたちトヌスの部下や傭兵たちが立ち並んでいる。



「おじさん♪ちよっと、僕たちに付き合ってね♪」


「付き合って…?どっ…どこへ…?」


「うふふふ♪」



声をならない叫びが、倉庫内で響き渡った。

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