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迷宮アカデミア ~咲き誇れ、きざはしの七花~  作者: 悠戯
最終章『咲き誇れ、きざはしの七花』

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もうちょっとだけ先の未来④

本日二話目の更新です。

順番飛ばしにご注意ください。


「おめでとう、ルー君」


 親友に対する心からの祝福。

 レンリがどうしてそんな言葉を贈ったのかといいますと、



「写真集、なかなか好評みたいじゃないか」


「お陰様でな。出てしばらくはロクに眠れないくらい不安だったけど」



 つい先月のことですが、ルグがこれまで撮りためた写真をまとめた写真集を出したのです。今のところ売れ行きは好調。すでに出版社からは第二弾の話も出ています。



「ルー君は相変わらず心配性だね。私は最初っから成功を確信してたとも。出会った頃は、まさかキミが写真集なんて出すとは夢にも思ってなかったけど」


「それは俺だってそうだよ。正直、今でも不思議な感じだ」


「うんうん、そうだろうそうだろう。いや本当に想像もしていなかったとも、キミがまさか自分のヌード写真集を出す日が来るなんて……」


「出してねぇよ!?」



 ルグが出したのは、この世界各地の迷宮や自然環境に生息する魔物の写真集。

 時に自ら剣を振るって立ち向かい、時にその魔物と戦った経験のある冒険者に取材をし。その生き物がどんな風に暮らしており、どのように戦うのかといった情報を文章にまとめて一緒に載せた工夫が良かったのでしょう。

 魔物がいない地球のみならず、こちらの世界でも好評で早くも重版がかかっています。ちなみに、あえて言うまでもありませんがヌードの「ヌ」の字もありません。



「ははっ、軽いジョークさ。大学で講師なんてやってると、せっかくボケても周りが遠慮してツッコミを入れてくれることが少なくてさ。やっぱりルー君のツッコミはキレが違うね」


「レン、お前さぁ……だんだんコスモスさんに芸風が似てきてないか?」


「へえ、それは光栄だね。今後とも更なる精進を積むとしよう」


「はいはい、ほどほどにな」


「ちなみに私も百冊ほど買って、周りの教授連中や仲の良い学生に配っておいたから。皆、けっこう面白いって言ってたよ」


「あ、それは本気でありがたい」



 冒険者こそ辞めたものの、ルグは今でも毎日剣の稽古は欠かしていません。

 地味かつ地道に努力を重ねて、今ではなんと初めて会った頃のシモンと同等……とまではいかずとも、その半分くらいの腕前にはなっているのではないでしょうか。


 冒険者への取材目的でギルドに顔を出すと、顔馴染みの職員や元同業者から現役復帰を求められることもしばしばです。件の写真集が大コケしていたら本気で冒険者への復帰を検討しないといけないところでしたが、これなら当分は転職を考える必要はないでしょう。





 ◆◆◆




 その日の夕方。

 秘密基地には仲の良いメンバーのほとんどが集まって宴会をしていました。



「はい、ピザ焼けた……よ」


『うふふ、ローストチキンが来たのでテーブルの上を空けて欲しいのです』



 ルカやモモなど料理ができる面々が調理を担当し(面倒くさがって滅多にしませんが、モモもなかなかの料理上手だったりします)、またそれ以外の皆も来る途中であれこれテイクアウトしてきたので、食堂の大テーブルはほとんど埋め尽くされています。それでもレンリが本気で食欲を解放したら、数分と持たずに消滅してしまうのでしょうけれど。



『レンリさん、待て(ステイ)っ、待て(ステイ)よ! 他の皆の分まで食べないようにね?』


『応援。申請。念の為に奈落城の料理長にも応援に来てもらうことにするよ。ついでに追加の買い出しもお願いしようか』



 そこは心得たものでヒナが飢えたレンリを見張りつつ、ヨミは料理担当の助っ人と食材の追加を手配。長い付き合いだけあって、このあたりの対応は手慣れたものです。神様というよりは狂暴な動物の飼育員かのようですが。


 普段は自分達の神殿で澄ました顔をしている迷宮達としても、こうして気を抜いて素を出せる場というのはありがたいようです。ちなみに姉妹の中でもウルやモモやネムは常に素のまま自由に振る舞っているので、そういった理由でストレスを感じることは一切ありません。


 ちなみに、その自由側に名前が含まれていないアイについては……。



『まま、お手伝い、する』


「おや、ルカ君のお手伝いかい? アイ君はお利口さんだね」


『あい! ……じゃなくて、はい。ああ、もう、恥ずかしいっ』


「ああ、そっちのアイ君に切り替わったか。キミも難儀な体質だよね」



 ルカがアイの専属ベビーシッターを初めてから、二年くらい経った頃だったでしょうか。普段は赤ん坊らしく断片的な単語くらいしか意味のある言葉を喋れなかったアイが、突如として流暢に話し出したのです。


 本人が語るところによると、あの式典の日の夢の記憶や自身が生まれて間もない頃と同じ人格を一時的に取り戻した状態なのだそうで。まあ姿は幼児のままでしたし、最初はそれだけ話し終えたらまたすぐ幼い人格に戻ってしまったのですけれど。


 念の為、すぐ女神に連絡を取って診てもらったところによると、どうやら現在のアイは神造迷宮が創造された当時の人格と、普通の人間のように赤ん坊から育ちつつある人格の二つが混在した二重人格状態なのだとか(正しくは「人格」ならぬ「神格」と表現すべきかもしれませんが、まあ便宜上「人格」で)。


 最初のうちは年長の人格が表に出てくるのは一日のうち三分から五分程度だったのですが、時間の経過と共に表出する時間が増えていき、現在では一日のうち数度、合計すれば二時間近くも人格が切り替わるようになってきました。

 とはいえ、幼いアイが消滅の危機にあるというわけではなく、このまま放っておけば二つの人格が自然と混ざり合って、いずれ一つに落ち着くだろうというのが女神の見解。頼りない部分も多いですが一応は専門家の言うことです。


 問題といえば、年長のアイが自身の幼い振る舞いを恥ずかしがるくらいですし、積極的に対処せずとも恐らく問題ないだろうと仲間内の意見も一致していました。



「アイ君にはなんだか親近感を覚えるよ。私も呪いで苦労してるのに、ただ当事者が恥ずかしいだけだからって皆して薄情なんだよね」


『分かってくれるのはレンリさんだけだわ……優しいのね』


「はぁぁ!? 全然優しくないんだけどっ! この裏切り者!」


『え、えぇ……』



 なかなか同病相憐れむとはいかないようです。

 まあアイは放っておいてもいずれ自然と克服するでしょうし、レンリもあと幾らか年齢を重ねて落ち着きが出てきたら解呪の条件を満たす日も来るでしょう。つまり、まだまだ当分は恥ずかしさに悶える日々が続くという意味ですが。




 さて、そんな風に気の置けない友達同士の集まりが盛り上がってきた頃。



「すまぬ、遅くなった! 仕事の引き継ぎに思ったよりかかってな」


「シモン。反省」



 遅刻していたシモンとライムも登場しました。

 どうやらシモンの仕事が長引いていたようです。

 二人の姿を認めた他の面々は、一旦お喋りや食事の手を止めて、



「「「二人とも、結婚おめでとう!」」」



 式本番は明日だというのに揃いも揃って気が早いことですが、一足早い祝福の言葉を口々に投げかけました。



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