表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしも、いちどだけ猫になれるなら~神様が何度も転生させてくれるけど、私はあの人の側にいられるだけで幸せなんです。……幸せなんですってば!~  作者: 汐の音
エピローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/77

ちいさな、あなたへ

 そう遠くない昔。

 あるところに、猫になってしまう女の子に恋い焦がれた王子さまがいました。


 王子さまは、最初から王子さまだったわけではありません。

 はじめはご領主の子息。

 次は、商家のあととり。

 三番めは地方貴族の若さま。

 四番めが村の神官のあととり。


 初めの恋の痛手を(いや)してくれたやさしい猫が、神さまからもらった能力(ギフト)で姿を変えた村娘だったと知った彼は、一度めの生のあと、女の子にまた会えますように、と願いました。

 猫ではなく、ことばを交わせる人の子の姿で。



 願って。

 出会って。

 指先がかすめるような近さで、いつもすれ違う女の子。


 高貴な生まれでなくとも、王さまの娘でなくとも、求めてやまない女の子は、いつしか王子さまにとってかけがえのない“お姫さま”になりました。


 いよいよ五度め。

 王子さまは――




   *   *   *




 パタン。


「はい、今日はここでおしまいです。ちい姫様、おやすみなさいませ」


「ええ~? やだ! きのうもそこまでだったわ。続きは?? ねぇ、王子さまはお幸せになれたの? 女の子は?」


「うふふ。さぁ、どうでしょう」


 お手製の絵本を閉じ、夢みるように愛らしい少女の髪を撫でるサリィは、うっとりと微笑をたたえた。


 長年大事に、大切に仕えた(あるじ)と、王子さまの間に生まれた少女は、今またサリィの得がたい宝物。


(――ずっと、『あのかた』を探してたのが()()()()なんて。そんなわけないんですからね)


 白金色の波打つ髪をゆっくりと撫でていると、やがてすこやかな寝息が聞こえて、サリィはそっと立ち上がる。


 寝台の天蓋(てんがい)から垂れた薄布を留めていた真っ白なリボンをほどき、けぶる紗の向こう側。幼いときのヨルナそっくりなちい姫は、夢のなか。


 ――きっと、貴女も幸せに。

 ()()()()()()()()()あのかたも、ようやく幸せを掴んだのだから。



 遠い、遠い記憶。

 野良の仔猫だったわたしを、やんちゃな男の子から助けてくれた。乱暴な扱いをきっぱりと改めさせてくれた。紅茶色の髪にそばかすのあるお日さまみたいな少女は、わたしの恩人。ついつい、お姿を真似てしまうくらいに。


「おやすみなさいませ」


 囁き、音をたてないように通路の明かりをもらす、扉をひらく。




   *   *   *




 ――いよいよ五度め。

 王子さまは、だれよりも、何よりも、お姫さまを大切になさってお姫さまのお父さまにお許しをこい、晴れてお姫さまが十八の年に結ばれました。


 お二人はいまも、翌年に授かったちい姫さまとご一緒に。

 今生で、仲睦(なかむつ)まじくお過ごしなのです……。







 〈おしまい〉




昨年の十二月から約四ヶ月間。物語としてはまだ外交的な部分や台風王女の恋、王太子と北の姫などまだまだ余白があるのですが、はじまりの童話だったヨルナのお話は、これで完結です。


お読みくださり、ブックマークや応援ポイント★を賜り、たくさんのご感想をいただけて本当に嬉しかったです。

これから手に取ってくださるかたにも、厚くお礼申し上げます。


完結後の追加となってしまいますが、後日、挿絵もゆっくり描きたいと思います。


駆け足となってしまいましたが、お付き合いくださった方々。

ありがとうございました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 数か月かけて、少しずつ大切に読ませていただきました。 なかなか感想が言葉にまとまりませんが、もう、何より、本当に読ませてくださってありがとうございます! とお伝えしたくて、書かせていただい…
[良い点] とてもかわいらしい恋愛ファンタジーですね。 でもちゃんとシリアスなところもあり、「桜並木の、その下で」で作者様のことを知った私としてはそのバランスがとても興味深かったです。 作者様らしいで…
[一言] 完結おめでとうございます。 どうなることかとやきもきしたヨルナとアストラッドでしたが、無事に想いを伝え合うことができほっとしました。両片思いを繰り返していたふたりですから、神さまの胃の痛さを…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ