生徒会1
私の目的はポレッティ先輩たちを味方につけること。
そのきっかけとして、殿下の名前や生徒会を利用したわ。
ええ、自覚はあるからちゃんと呼び出しは受けるわ。
殿下と生徒会からのね。
だけどお昼休みに呼び出すことはないのではないかしら。
これではまたちゃんと食事をとれないわ。
そうなると持ってきた非常食の焼き菓子だけでは足りないかもしれない。
仕方ない。いざとなったらエルダのお友達のアレに手を付けるしかないわね。
そう思った私が馬鹿だった。
まさかではあるけれど、当然でもあるのよ。
生徒会室で優雅に昼食をとれるなんてね。
ちゃんと料理人がいて、ここで盛り付けてくれているわ。
これならしっかり食事も――できるかーい!
何が悲しくて殿下とリベリオ様、そして生徒会の面々を前に女子は私一人で食事をしなければならないの?
緊張するのよ。
しかも正面は生徒会長のグイド・スペトリーノ先輩。
スペトリーノ侯爵家のご嫡男で、これもまた顔面偏差値が高いわ。
蝶子の読んでいた少女漫画でもよくあったけれど、どうして生徒会の人たちってみんな顔がいいの?
家柄がいいのは当然よ。
そういう方たちしか選ばれないんだから。
それとも顔も選考基準にあるのかしら。
あら、でも待って。
この状況ってまるで私、蝶子が読んでいた少女漫画の主人公のようじゃないかしら。
いいえ、違うわね。
ああいう物語の主人公はたいてい一般家庭出身で普通の女の子っていう設定なのよ。
私は普通じゃないから違うわね。
だって、私はファッジン公爵令嬢ファラーラ・ファッジンですもの!
とはいえ……。
生徒会
双子がいないと
物足りない
って、心の一句を詠んでいる場合じゃなくて。
そもそも「どっちがどっちでしょう?」とかどうでもいいのよ。
「遠慮せずに食べながらでいいから聞いてね」
「ほぁい!」
なぜここで噛んだの、私。
まさしく〝Why〟なんですけど。
会長の隣で笑っている副会長のリベリオ・プローディ!
私はまだあなたのことを敵認定しているんですからね。
でもここは許してあげるわ。
だって私の隣で必死に笑いを堪えている方がいらっしゃるんだもの。
ねえ、王太子殿下。
どうして隣に座っていらっしゃるの?
近いんですけど。
この円卓が憎い!
「昨日、ポレッティ嬢たちに君が制服を着るようにと働きかけてくれたことは聞いたよ」
「………差し出がましいことをいたしました。申し訳っございません!」
危ない。ようやく口に入れたお魚を危うく噴き出すところだったわ。
そのせいか小骨が喉に引っかかった気がするわ。
ん、んんんっんん!
ダメだわ。パンを食べましょう。
「いや、謝罪の必要はないんだ。僕たちは君にお礼を言いたくてね。だがあまり僕たちが動くと騒ぎになる。だからこうして来てもらったんだ」
「……そうだったんですね」
すでに生徒会室に呼び出されたことで騒ぎになっていますけど。
あと、お礼なら早く言ってください。
それと、私に足を運ばせたことにもお礼と謝罪があってもいいんじゃないでしょうか。
もう一つ、このパンちょっと固くないですか?
小骨を取るためにほとんど咀嚼をしなかったのが悪かったのかしら。
おかげさまで小骨は取れたけれど、喉の奥に傷がついたみたいで痛いわ。
二口目のパンをもぐもぐと頑張って咀嚼していると、会長がにっこり微笑んだ。
「君のおかげで女子生徒たちの制服着用率が上がったよ。おそらくこれからも増えると思う。生徒たちの見えない壁をどう取り除くか、僕たちの課題ではあったんだが、やはり女子生徒の服装にまでは口を出せなかったからね。ありがとう、ファッジン君」
会長が頭を下げられて、他の生徒会の面々まで口々にお礼の言葉を述べられて頭を下げられた。
なんて壮観な図かしら。
美少年たちをひざまずかせる私! ……膝はついていないけど。
隣で殿下が嬉しそうに微笑んでいらっしゃるわ。
一応の婚約者が褒められて誇らしいのかしら。
それなら先に幼馴染のサラ・トルヴィーニにお願いすればよかったのに。
彼女、隠れたところではかなり選民意識丸出しですよ。
とにかく、そろそろいかないと午後の授業が始まってしまうわ。
ああ、やっぱり食事は半分も食べられなかった……。




