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本音2

 

「ファ、ファラーラ様……」



 その場が凍り付いてミーラ様が慌てていらっしゃるけれど、私は気にしないわ。

 だって私はファラーラ・ファッジンだもの!

 えっと、えっと……だから……。



「お、王太子殿下……大変恐縮ではございますが、お人払いをお願いできますでしょうか?」

「――わかった」

「ミーラ様……?」



 殿下はミーラ様の願いを受けて、さっと手を振り使用人たちを下がらせてしまった。

 ミーラ様は急にどうしたの?

 訳がわからなくてミーラ様を見ると、とても緊張されているようだった。

 それなのに私の手を握り、まっすぐに見つめ返してくる。



「私は……たかが子爵家の娘で、殿下にお願いする立場にはないですけど、ファラーラ様の友達なんです。友達が困っているときには助けたいですし、悲しんでいるときには慰めたいんです」



 ミーラ様の気持ちはすごく嬉しいけれど、上手く返事ができない。

 何か言わなければと思うのに、言葉が出てこないの。



「ファラーラ様、今は私と殿下だけですから、お気になさらないでください」

「な、何を……?」



 どういうこと?

 よくわからないけれど、胸が苦しくなって喉が熱くなってくる。



「殿下、ファラーラ様はずっと我慢なさっていらしたのです。殿下が遊学なさることで寂しく思っていらっしゃったのに……。私が申し上げなくてもファラーラ様のことはよくご存じでいらっしゃるかと思いますので、私は少々席を外させていただきます。初めての王宮ですから、見学させていただいてもよろしいでしょうか?」

「――もちろんだよ、ミーラ嬢。外に控えている者に言えば、案内してくれるから。ありがとう」

「そのようなもったいないお言葉、恐縮でございます」

「え……ミーラ様?」



 待って。どこにいくの?

 私を一人に――殿下と二人きりにしないで!

 今の私はちょっと調子が悪くて演技ができそうにないのよ。


 私は言葉にできないままミーラ様にいてほしいってアイコンタクトしたのに伝わらなかったみたい。

 ミーラ様はいつもの明るい笑顔とは違う微笑みを向けてから去っていく。


 ミーラ様、私を置いていかないで!

 私たち友達だと思っていたのに、アイコンタクトが通じないなんてまだまだ修行が足りなかったの?

 今日の殿下はいつもと違ってどこか冷たい感じなのに!



「ファラーラ……」

「でっ、殿下!?」



 ミーラ様に念を送っていたら、いつの間にか殿下が隣に座っていらっしゃってビックリ!

 忍者なの!? 実は殿下も忍者だったの!?



「ごめんね」

「な……何が、ですか?」



 何についての謝罪?

 謝罪してもらうことがいっぱいありすぎてわからないわ。

 この前いきなり怒ったこと、婚約者の私を置いて遊学されること、サラ・トルヴィーニのお茶会に出席されたこと、学院で会いに来てくださらなかったこと、お手紙のお返事が遅かったこと、私を待たせたこと、それに先ほどまでの冷たい態度よ。


 別に根に持っているわけではないわ。

 ただちょっとまだ少し納得いかないだけで……って何!?


 謝罪の理由をあれこれ考えていたら、殿下はいきなりハンカチを私の頬にそっと当てた。

 急に何なの?

 そのハンカチはどこから出てきたの?

 手品? 殿下は手品師なの?



「泣かせてごめん」

「な、泣いてなんかいません!」

「うん。でも、ごめんね」



 泣いていないって言っているのに。

 それに殿下は謝罪なさっていながら、どうして笑っていらっしゃるの?

 あと距離が少し近いと思うわ。

 さり気なくお尻をずらして離れたら、殿下は軽く首を傾げられてじっと私を見つめられる。


 やーめーてー!

 美少年のそれは反則なんです!

 私、怒っているんですから!


 ぷいっと顔を逸らして、ふと気づく。

 あら? 怒るのではなくて、謝罪にきたのではなかったかしら。

 もちろんみんなの前で「ごめんなさい」なんて言うつもりはなかったわ。

 ミーラ様に(無自覚で)協力してもらってファラーラ・ファッジンの健気な姿をみんなに見せつける予定だったのよ。

 それから二人きりにしてもらって謝罪するつもりで……って、予定通りだわ。



「あの、殿下……」

「寂しい思いをさせて、ごめんね」

「べ、別に寂しくなんて思っていません! あれはミーラ様が勝手に……」

「うん?」

「その、ミーラ様が言ったことは……間違い……ではないかもしれませんが、でも違います」

「うん。ごめんね、勘違いして」

「……殿下が謝罪なさることではありません」



 おかしい。絶対におかしいわ。

 予定通りなはずなのに、私の用意したシナリオが全てが使えない状況になるなんて。

 そもそも殿下が忍者だったり手品師だったり謝罪してくださったりするのが想定外なのよ。

 困ったわ。これからどうすればいいの?





 皆様、いつもありがとうございます。

 Twitterではすでにお知らせいたしましたが、

 明日9月29日より本作『悪夢から目覚めた傲慢令嬢はやり直しを模索中』のコミカライズが『がうがうモンスター(https://gaugau.futabanet.jp/)』様にて連載開始されます!

 上原誠先生が素敵にコミカルにファラーラたちを描いてくださってますので、ぜひぜひお読みくださいませ!

 よろしくお願いします(*´∀`*)ノ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久々の殿下!もっと距離縮まって欲しい(*´▽`*)甘さを求‼仲直り、どのような展開になるのかな。 [気になる点] 殿下視点のお話を又読みたいです。遊学の前後辺りに不在の間の糧(甘味)として…
[一言] 今しか素直になれないぞー? 頑張れ!ファラ!
[良い点] ミーラ様もいつもファラと一緒にいるんですね。 理解しているしフォローも上手い。 [一言] ファラの大根が良い方に
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