休み時間3
それにしても不思議だわ。
様子を見ていると、私のうちわを注文している生徒もいるのは確かね。
だけど本物がここにいるのに、みんなそれはいいの?
ここにファラーラ様がいるのよー!
と、声を大にして叫びたいけれど、これから昼食だからやめておくわ。
一番人気かどうかはともかく、それなりには私のうちわも売れそうだし、ひと安心。
もちろんそれ以外にも殿下や生徒会メンバーのものも注文されているようだから、マージンもばっちりね。
ふふふ。生徒会は不滅なり!
今期生徒会が立ち上げた(ことはしていないけど)この慈善事業への協力を、次期生徒会のメンバーがしないわけがないのよ。
イメージの問題だものね。
ノブレスナントカは大切よ。ええ。
今日の昼食は何にしようかしら。
最近は栄養のことも考えて、ちゃんとお野菜を取るようにしているのよね。
だけど私、成長期だから!
お肉も大切。お魚は……まあ、それなりに食べるわよ。
エルダたちとおしゃべりしながら昼食をとりつつ、ちらちらとうちわ販売を見てしまうのは仕方ないわよね。
このお昼休みに配った注文用紙にはすでに購入希望の肖像画名が記入されているらしく、あとは名前を書いて放課後提出するだけなんですって。
だから商会としてはこのお昼休みで販売数が予測できるから、この後すぐに生産体制に入るらしいわ。
それにしても男子生徒が購入しているのは意外ね。
まさか私のうちわを購入しようとしているのでは……って、あの男子生徒、会長を示しているわね。
あちらの男子生徒はリベリオ様。……ええ、わかっていたわ。
別にモテモテかもなんて思っていなかったもの。本当に。
あ! ポレッティ先輩たちが興味を持たれたようだわ!
購入されるのかしら?
それとも見ているだけ?
もし購入されるのなら誰を選ばれるのかすごく気になるわ。
「――ファラーラ様?」
「え? あ、何かしら?」
「いえ、その、ずっと肖像画販売のほうを見ていらっしゃいますが、やはり殿下のものを購入されようとお考えなのですか?」
「わ、私……え、ええ。後で購入いたしますわ」
ちらちら見ていたつもりが、じっくり見てしまっていたみたい。
大失敗だわ。
そう思って慌ててミーラ様の質問に答えたら、ミーラ様とレジーナ様はお顔を見合わせてにやりと笑った。
何、何なの?
やっぱり婚約者のキラキラうちわを買うなんておかしいのかしら?
「実は私たち、殿下のキラキラうちわも注文用紙を受け取っておりますの」
「ええ、お互い二枚ずつ」
「二枚? それもまた学園用と保管用に?」
「いいえ。ファラーラ様の婚約者でいらっしゃる殿下の肖像画を自宅で鑑賞などと畏れ多いことはいたしませんわ」
え? 保管用って鑑賞用ってことなの?
その気持ちはわかるけれど、私のキラキラうちわを鑑賞するの?
「私たち、エルダさんだけでなくファラーラ様にもとてもお世話になっているのですもの。ですからファラーラ様へも何かお礼をさせていただきたくて」
「殿下のキラキラうちわを学園用と保管用と、ファラーラ様に私たちから一枚ずつプレゼントしようって話し合ったんです。エルダさんは殿下のキラキラうちわに関しては、ご自分で購入してくださいね」
「わかりました! それでファラと殿下の二枚を一緒に持てば、お二人の応援になるのですね!」
「そのとおりよ」
そのとおりなの!?
二枚一緒に持つ発想はなかったわ。
いえ、そこに感心している場合ではなくて。
エルダまで私と殿下の応援をしてくれるつもりなの?
「う、嬉しい、わ……。ミーラ様、レジーナ様、お気遣いいただき、ありがとうございます。エルダも本当に無理はしないでね」
お二人の心遣いを無碍にはできないわよね。
だけど、今お礼を言ったことで三人にも私と殿下の婚約は確実なものになってしまった気がするわ。
どうしよう。
そろそろ本気で殿下と話し合わないと。
そして穏便に婚約解消して、悠々自適生活を送るのよ!




