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第163話 (150)真夜中遊園地-1

「あかねちゃん、ごめん。待った?」


「ううん、さっき来たところだよ?どうしたの?」


 ハッタリ野郎とのジェットコースター対決に勝利した僕は次の日、あかねちゃんをバイト終わりに呼び出していた。目的はそう、告白するためである。僕の気持ちをあかねちゃんに伝える。そうしないとこの秋は終わらない。読書の秋でも、ゾンビの秋でもない。この秋は僕にとって恋の…いや、愛の秋。あかねちゃんとの燃え上がる茜色の愛の秋なのだ。


「いや、ちょっとあかねちゃんにプレゼントがあってさ」


「プ、プレゼントぉ〜?なに?急に?」


 あかねちゃんは照れくさそうな顔をする。よし、いける。プレゼントをあげると言って照れくさそうな顔をしたら、もうそれは告白OKも同然だと友人が言っていた。もうここで僕の思いの丈を伝えてもいいのだが、まだそれはしない。最高のシチュエーションで、最高のロケーションで告白したい。


「日頃頑張ってるのと、色々お世話になったからそのお礼にと思ってさ!ちょっと着いてきてよ!」


「着いてくるー?ここじゃだめなの?」


「ここじゃダメ!いいからさ!ほら!」


 そう言って僕はあかねちゃんの手を引く。2人っきりで歩く真夜中の遊園地はキラキラと輝いていて貸切のようだった。この光輝く世界に2人きり。僕と君2人だけの…。


「お疲れ様でーす」


「あっお疲れ様です…」


 ゴミ収集のスタッフとすれ違う。咄嗟に挨拶をしてしまうのは、スタッフとして馴染んだ証拠だろうか。2人だけの世界と感じたのは気のせいで、この時間でもそれなりのスタッフ達が残って作業をしている。いや、それでも、2人だけの世界だと言い切るんだ!そうだ!そうなんだ!


「ここです!じゃーーん!」


「ここは…ボリゴリ?」


 そう、ボリゴリ。『ボリウッド三つ子ゴリラ・ザ・ライド』と言う名前のジェットコースター、略してボリゴリ。ボリウッドで言わずと知れた『三つ子ゴリラシリーズ』の映画の世界観が楽しめるUPJを代表するコースターである。UPJのアトラクションの中でも歴史が古い方で、パークに来る人はまず一番に乗りたいアトラクションらしい…。らしいと言うのは、僕は乗ったことがないからだ。この説明もビッグボスの受け売りである。それに、実は『三つ子ゴリラシリーズ』の映画も実は見たことがない。


「今日は特別にボリゴリにあかねちゃんを乗せてあげます!」


「えっ?!本当に?!閉園後だけど良いの??」


「うん、オールナイトに向けた点検を兼ねて特別に良いって!許可はとってあります!」


 そう、昨日と同じく話は通してある。ジェットコースター好きのあかねちゃんに告白するために乗りたいんですと言うと、スタッフさんは快諾してくれた。ありがたい限りだ。告白頑張ってと言ってくれたスタッフさんのためにも、絶対に成功させなければならない。


「えー!嬉しい!!最近忙しくてジェットコースター乗れなかったし、ボリゴリ乗るなんて久しぶりだーー!」


「前一緒に遊びに行った時もジェットコースター乗れなかったし、その埋め合わせも兼ねてさ…」


「タテノくーん!すごいよ〜!本当に嬉しい!」


 あかねちゃんは本当に嬉しそうににんまりと笑っている。あぁ、可愛い。素敵だ。キラキラとした表情をしているあかねちゃんと僕は、乗り場までゆっくりと階段を登っていく。その間もあかねちゃんはボリゴリの豆知識やジェットコースターの歴史などを話してくれていたが、僕の頭には全くその話は入ってこなかった。


ーーこの心臓のドキドキはどっちだろう


 いつになく高鳴る心臓の鼓動。これはジェットコースターに乗る恐怖によるものなのだろうか。昨日散々ジェットコースターに乗ったから慣れるかとも思ったが、恐怖心は増すばかりだ。でも、昨日と違うことがある。横に乗るのがハッタリ野郎ではなく、あかねちゃんだということだ。そう、あかねちゃんが横にいる。ドキドキの原因はそっちかもしれない。そして、考えられる原因はもう一つ。告白だ。告白をするということに対するドキドキ。人生で初めてする告白。緊張しないわけがない。


「ちょっと!聞いてる??」


「え?あ、ああ!聞いてる聞いてるよ!」


「なら良いけど。あっ!着いた着いた!」


 いつのまにか僕たちは乗り場へと到着していた。乗り場にはお願いしたスタッフさんが待っていてくれていた。スタッフさんは僕をグイッと引き寄せ、あかねちゃんに聞こえないようにヒソヒソ声で話す。


(告白頑張れよ!今の時間はパークがまだライトアップされてるから、頂上から見る夜景は綺麗だぞー!ロマンチックで告白にはもってこいだ!)


(あ、ありがとうございます!頑張ります!)


「2人で何話してるんですか!」


「あっ、いやいや何でもないよ!」


 スタッフさんはそう言うと、僕の背中をバンッと叩いた。がんばれよ、のサインだろうか。


「さ、お二人さん!真夜中の特別便がそろそろ出発しますよ!席に座ったら安全バーを降ろしてくださいねー!」

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