第143話 (131)歩く幽霊-2
じわぁあ
ーーあれ?これ、いつまでじわぁあってしてたらいいの?
あれから2時間くらいじわぁあっとし続けているが一向に成仏しない。さっきは、あんなに成仏する気配があったのに!俺がじわぁあっとし続けている間にすっかりパークも閉園時間となり、俺の周りからはゾンビも客も居なくなっていた。
じわぁあ
でも何かじわぁあっとはしてるんだよな。もしかして成仏って時間がかかるのか?もうちょっとここに立って、じわぁあとすれば成仏するのだろうか?あと1時間くらいは粘って…
「あ!!ユーじゃないデスカー!」
「え?!ジョージ??」
「何日もどこにいたんデスカー!心配しましたよ!」
「じ、実は色々あって…。実は俺…」
「俺??ユーは一人称僕じゃなかったですか?」
「いや、だからそれにも理由が…」
「なんか見た目も少し大人っぽくなっているような…」
「そうそう、実は俺…」
「まさか、グレて家出してたんデスカー!悩みは何ですか!ユー!悩みがあるなら僕に話し…」
「だから!話聞けよ!!バカジョージ!」
スカッ
俺は一方的に捲し立ててくるジョージに拳を入れようとするが、その拳はジョージをすり抜けてしまう。モノには触れるのに人には触れないのだ。全く幽霊は不便だぜ!
〜〜〜
「なるほど。記憶が戻ったんデスネ」
「うん。俺は20歳の時に死んだんだ。死ぬ直前までこのパークでゾンビのダンサーをしてたから、それでここの地縛霊みたいになったんだと思う」
「記憶が戻ったから、少し大人っぽい見た目になったんですか?」
「なんかそうみたい」
「一人称が俺になったのも?」
「記憶が戻ったからかな。僕って言うキャラじゃないし、俺は」
「ふーん。そんなに一人称って大事なんですか?」
ジョージが不思議そうな顔でこちらを見る。どういうことだ?
「英語では一人称は“I”だけなので、あまりその感覚わからないです」
「え?そうなの?いや、俺が僕は変だろ」
「でも前は僕って…」
「それは記憶がなかったからで、今は違和感があるの!」
「わかったような、わからないようなー」
ジョージは納得できない顔で考え込んでいる。
「一人称なんかどうでも良いんだよ!俺の記憶が戻って、じわぁあってしたのに成仏できないんだよ」
「一人称にこだわったのはユーの方なのに…」
「あー言えば、こう言うな!」
スカッ
「Ah yeahなんて言ってないデスヨ!」
「だからいいって、もう!成仏できなかったって話なんだよ…」
俺はジョージと話していても埒があかないことに気がついた。記憶が戻る前はこっちのペースだったのに、戻ってしまうと何だかペースを取られてしまう。ジョージは俺の言葉を聞いて、何やらケータイで調べ物を始めた。
「何を調べてんだ?」
「ジョーブツはどうしたら出来るのかなって…。どうやら、この世に未練があると成仏できないようデスネ。ユー、未練あるんデスカ?」
「未練…未練ねぇ…」
俺はジョージにケンジのことを伝えた。ケンジが元気に過ごしていることを知れて、未練は晴れたように思ったことを。
「なるほど、なるほど。わかりましたヨ」
「え?わかったって成仏の方法が?」
「オフコース。それはデスネ」
「それは…?」
「ズバリ、ケンジくんにダンスを見てもらうことデスネ!」
ーーなるほど、一理あるかも知れない
俺はケンジにダンスを見てもらおうと思って、見てもらえずに死んでしまった。つまり、それが1番の未練である可能性が高い。流石ジョージだ。パークの偉い人なだけはある。
「ケンジはユーのこと見えてないんですか?」
「それが…」
俺はさっきケンジのダンスを見ていた時のことを思い出す。俺はケンジの目の前をこれ見よがしに歩いてみたり、話しかけたりしてみたが、全く反応がなかった。というか、何でジョージに見えて、ケンジに見えないんだよ。
「んーこれはアレですね。」
「アレ?」
「日本語で言うところの“お手あげ”ですね!」
そう言うとジョージは両手を上げて、文字通りお手あげ状態になった。もっとちゃんと考えてくれよ、とも思ったが俺も何も思いつかないので、どうにもジョージを責めきれなかった。
「まぁ、どうするかは今から僕の部屋に戻ってゆっくり考えまショー」
「ま、他に行くところもないし。ジョージのところ戻ってやるか」
「いやー!良かった!ユーが居ないと静かで寂しいデスヨ!」
成仏成仏と言っていたが、成仏せずにずっとジョージと話すってのもも悪くないかもな。
「僕も一人称変えようかな。僕も一人称僕はなんか違う気がしてきました…。拙者とかどうデスカ?」
「…。やめた方がいいと思う」
「そうデスカー。一人称は難しいデス」




