82:忍び寄る影
「くそっ、酷い目にあったぜ! お前が街中でバトり始めちゃうから逮捕されちゃっただろうがーッ!」
「なにをぅ!? おぬしだってノリノリだったではござらんかッ!」
「しょうがないだろッ、バトル大好きなんだから!」
「拙者もでござる!」
二人仲良く逮捕されてから数時間後。
すっかり夜も更けた中、『絢爛都市・ナカツクニ』の裏手にある森で俺はザンソードと斬り合っていた!
何本もの桜の木が立ち並ぶ美しいところだ。月に照らされた夜桜の下、刃を握って共に駆け寄る。
「死ねぃッ!」
激しく斬りかかってくるザンソード。しかし俺は回避など一切考えず、双剣を全力で振るう――!
「オラオラオラオラオラァッ!」
防御すらも意識していない攻撃一辺倒の剣術だ。ぶっちゃけるとテキトーに振り回している状態に近い。
一見すればアホっぽく見えるが……、
「それでよい! どうせ拙者たちは素人のネットゲーマーなのだ。ならば下手にテクニックなど考えず、勢いで押し切るのが肝要よッ!」
「ハッ、勢いか! そいつぁー俺好みの理論だぜっ!」
俺は袈裟切りにされて血が噴き出るのも無視し、双剣を両側から振るってザンソードを真っ二つにしようとする!
しかしヤツはフッと笑うと、人間離れした速度でバク宙しながら避けてしまった。
――ま、人間離れしてるのはこちらも同じか。
「スキル【執念】でダメージ無効化っと。リアルの人間なら余裕で死んでる傷だったぜ」
「うむ。この世界には人間を超人化させる『スキル』や『ステータス』といった要素があるのだ。さらに魔法まであるとなれば、リアルの剣術理論など意識するだけ無駄なことよ」
再び刃を構えなおすザンソード。その渋い眼差しで俺を見つめる。
「ゆえにユーリよ。近接戦闘の感覚に慣れたら、あとは自分だけの剣術を見つけるがいい。
自身のスキルや使えるアーツとよく向き合い、己だけの剣術理論を作り上げるのだ――!」
「ザンソード……!」
お、おぉ……コイツめちゃくちゃカッコいいこと言うじゃねーか!
なんか最近どっかで見たことあるような渋顔もイケメン風味だし、なんというかアレだ。
「お前、もしかしてリアルだとモテまくってたりする?」
「なっ、何を申すか!? 女子との接触など、むしろ十年以上ないというか――あぁいや……つい最近、ビックリするほど美しい女学生と抱き合うこともあったり……!」
「ビックリするほど美しい女学生と抱き合ったぁッ!? なんだよお前っ、やっぱりリア充じゃねーかっ!」
「よ、よせやいっ!」
照れ笑いするザンソードの肩をパシパシと叩く!
そういえばなんか最近渋顔のお兄さんを抱き起こしたことがあるんだが、まぁ特に関係はないだろう!
「うしっ。それじゃあ後は自分で剣を磨くことにするぜ。ライバルなのに色々と教えてもらって悪かったな!」
「本当でござるよ。……先日のイベントでボロ負けした上に作戦も打ち破られて、拙者がどれほど悔しい思いをしたか」
ジロリと睨んでくるザンソード。しかしその口ぶりは、どこか穏やかなものだった。
「どうしておぬしに勝てなかったか、あれから拙者は悩んだでござる。悶々としていても答えは出ず、数年ぶりに外を歩くほど悩んだでござる」
数年ぶりに外に出たんだ……それはそれで気になる話なんですけど。
「――そこで少々トラブルに巻き込まれ、先ほども語った美しき女学生に出会ってな。その顔付きがどうにもおぬしをイメージさせたことで……拙者はふと思ったのだ。“そういえばユーリのヤツは、拙者と違ってどんな準備をしてきたのだろう”と」
そこまで言って、ヤツは俺の手にした双剣を見つめた。
闇色の輝く双剣ことポン九朗とポン十郎が『キシャー?』と鳴く。
「なんてことはなかった。おぬしはまさにサモナーらしくモンスターを鍛え、そして何より仲間たちを育てていたのだな。
その結果がアレだ。おぬしによって導かれた生産職部隊や初心者部隊に戦力を削られ、シルやグリムのようなトップ層以下の少女たちに作戦をブチ壊された。――仲間を『操る』ことばかり考えていた拙者の、完全なる敗北でござるよ」
「ザンソード……」
「ゆえに、だ。これからは一人で突き進むことばかり考えず、誰かにモノを教えるくらいの余裕は持とうと思ってな。おぬしは拙者の生徒、第一号でござるよ」
そう言ってザンソードは朗らかに笑うのだった。
とても素敵な笑顔だ。これまで張り詰めた顔付きばかり見せてきたコイツが、こんな顔をするなんてな。
「ははっ……やっぱりお前、カッコイイよ」
「ぬっ、世辞ならいらんぞ……!?」
「お世辞じゃなくてマジだっつーの。スキンヘッドと同じく、最高のライバルの一人だと思ってるぜ?」
「む……そうか。ならば見ているがよい! いずれスキンヘッドを打ち倒し、ヤツからおぬしを寝取って……ってゲフン! ライバルの座を勝ち取ってやるでござる!」
おーなんかめちゃくちゃやる気だな! 男として嬉しいぜっ!
そうして俺たちが、穏やかに話していた……その時。
「――なんやザンソードはん、えらい腑抜けた男になってしもうたなぁ」
突如として響く訛り言葉。
かくして次の瞬間、長刀を持った着物の女が、ザンソードの胴体を後ろから真っ二つにするのだった――!
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