54:壊すことと殺すことだけに脳の構造が特化してるよ、ユーリくん!
空洞内でぶつかり合う二つの放射光。どちらもボスモンスターなだけあって、威力はほぼ互角なようだ。
ならばっ、
「いくぞギガ太郎! 強化系アーツ発動、『ハイパーマジックバースト』!」
『グガァーーーーーーーッ!』
サモナーである俺の支援を受け、ギガンティック・ドラゴンプラントの魔力値が数倍にまで跳ね上がった!
それによって威力を高める熱光線。白き輝きはクトゥルフの放つ黒き波動を突き破り、そのタコのような身体を包み込んでいく!
『ギギャギィイイイッ!?』
ジュゥウウウウッと音を立てながら焼けただれていくクトゥルフ・レプリカ。全身は赤く発熱し、まさに茹でダコのようになっていた。
「どうだ効いただろう? ギガ太郎のレーザーには、受けた場所を『灼熱地帯』に変える効果があるからな。地脈憑依型モンスターであるお前にとっては、身体を沸騰させられるようなものだ」
予想が当たって何よりだ。
普通のモンスターだったら灼熱地帯と化した場所から退避すればいいだけだが、コイツの場合はそういうわけにはいかないだろう? フィールドそのものを肉体としているんだからな。それが地脈憑依型の弱点だ。
さぁ、一気に畳みかけてやる! 俺は時間制限により消えていくギガ太郎に礼を言いながら、悶え苦しんでいるクトゥルフへと接近していく!
『グギグゥウーーーーッ!』
迫りくる俺を警戒し、九つの首を鞭のように振り回すクトゥルフ。さらには地面からも足元からも牙を生やし、俺を抹殺せんとしていた。
だが、
「いこうぜマーくん! モンスタースキル、【瞬動】発動!」
『ッ――!』
俺の意志に応え、ブーツに宿ったボスモンスター・アーマーナイトがその力を発揮する。
ブーツ全体から闇の魔力が噴出し、駆ける速度を何倍にも高めた!
それによって足元より突き出してくる牙を置き去りにし、さらに鞭のように振るわれる首を易々と掻い潜っていく。そんな俺にクトゥルフは困惑の眼差しを向けてきた。
『グッ、グギガァ……ッ!?』
「弱点その2だクトゥルフ。お前の攻撃はおおざっぱすぎる」
フィールドを肉体としているだけあって攻撃範囲は驚異的だ。どこにだって牙を生やせるし、太い首による薙ぎ払いも厄介そのもの。数を揃えただけのパーティーでは一瞬で全滅してしまうことだろう。
だがその分、精密さとキレに欠いていた。
まず壁や足元から牙を生やす攻撃は、速度さえあれば回避できるのだ。地面を牙に変えて突き出すまでにわずかなタイムラグがあるからな。それが不定形の肉体の欠点だ。
変幻自在と言えば聞こえはいいが、『変形』するために攻撃が1テンポ遅れるんだよ。
そして首を振るってくる攻撃は、近づいてしまえばどうということはない。
鞭のように薙いでくるということは、弱点も鞭と同じなわけだ。すなわち、早くて鋭いのは先端だけで、根元にいくほどしなりはなくなる。そうなれば対処は簡単だ。
「あとは見切って避けるだけってなぁ! まぁそれでも当たったら死ぬが、いつものことだから問題なしだ!」
凶悪な攻撃を避けて避けて避けまくり、ついにクトゥルフの眼前へと迫った。俺は弓をそのへんに捨てると、両手に十一本の漆黒の矢を顕現させる。
「気合入れろよポン太郎たちッ! 強化系アーツ発動、『ハイパワーバースト』ォ!」
『キシャシャーーーーッ!』
その瞬間、矢から放たれる漆黒の光が爆発的に増大した――!
そして振るわれる矢による斬撃。切れ味を増した鏃によって、クトゥルフの眼球へと十字の傷を刻み込んだ!
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スキル【ジェノサイドキリング】発動! ダメージ二倍ッ!
スキル【致命の一撃】発動! ダメージ二倍ッ!
スキル【アブソリュートゼロ】発動! ダメージ二倍ッ!
クリティカルヒット! 弱点箇所への攻撃により、ダメージ三倍ッ!
スキル【非情なる死神】発動! クリティカルダメージさらに三割アップ!
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『ギギャギィイイイイイイイイッ!?』
ここで幸運値極振りの効果発動だ。低確率でしか発動しないはずのダメージアップ系スキルを無理やり全部起動させて、クトゥルフ・レプリカに激痛を与える。
まぁアップデートによって一発のダメージ増加率は十倍までになっちまったが、それでも矢の数は十一本だ。
一本一本にそれぞれ適用されるダメージアップ判定。それにより、クトゥルフは『百十発』分のダメージを受けて絶叫を張り上げたのだった。
クトゥルフ「えっ、なんでボク初対面で攻略されてるんですか……!?(戦慄)」
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