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168:若人の意地



「――驚いたな。確実に殺せると思ったんだが……」


 アラタの声が遠方より響く。

 一撃死不可避の絶殺拳。俺は盛大に吹き飛ばされながらも、その衝撃に耐えきっていた。


「ああ……俺には、素敵な仲間たちがいるからな」


 背中から突っ込んだ瓦礫の中より、ふらふらと身を起こす。

 ――拳を打ち込まれんとした瞬間。自動浮遊する武器霊・ポン太郎が間に入って緩衝材となってくれた。

 さらには足装備に宿ったマーくんが咄嗟に後ろに跳ね、ダメージを軽減してくれたのだ。

 おかげで俺は生き延びることが出来た。


『キシャーッ! キシャシャーッ!』


『――ッ! ッッ――!』


 “姐さんにはあっしらがついてやす!”“さぁ逆転しようか主よ!”と、雄々しく吼える使い魔たち。

 そんな彼らを見て、仮面の悪鬼は笑みをこぼした。


「はは、意思を持った使い魔たちか。古いゲームからやってきたオレやアンジュちゃんにはない力だな」


 羨ましいじゃないかとアラタは言う。


「意思を持つほどの高知能AI。ソレをそこらのNPCや使い魔たちにまで搭載したブレスキ運営の技術力は異常だ。

 ペンドラゴンのアホも言ってたぞ、『普通なら山のように巨大なサーバーが必要になるはずだ。彼らの技術は、私を上回っている面すらある』ってな」


「マジか」


 ああ、やっぱりすごいことだったんだなぁ、使い魔やらがみんな意思を持っているのって。

 色々と残念なところがある運営だが、技術力だけは本当にビキビキなんだなぁ。


「まぁ、だがしかしだ、若人わこうどよ。使い魔たちが高性能な分、彼らに甘えてきたんじゃないか? そんな甘ちゃんにオレたちは倒せんぞ」


「ハッ、馬鹿言えよ」


 わかりやすい挑発を一笑に伏す。

 周囲に武装を展開し、VR界に巣食い続けてきた悪鬼を強く睨む。


「逆だぜ老兵。俺はいつだって本気で戦ってきた。優秀な舎弟どもに見合うように、親分たるべく全力でな」


 そして使い魔だけじゃない。俺に憧れてくれた連中や、俺がぶっ倒してきた者たちのためにも、俺は常に『最強の俺』を目指し続けてきた。

 どんな不幸も苦難も跳ね除け、その背中に続きたくなる存在。それが俺の理想とする俺だ。

 ゆえに、


「覚悟しろよアラタ。俺はもちろん、俺の背中を追い続けてきた宿敵ライバルたちは、お前なんか目じゃないくらいに強いぞ」


「なんだと――、ッ!?」


 アラタが大きく飛び退いた。次の瞬間、彼が立っていた地面がクレーターのごとく陥没する。

 突如として出来上がった陥没地帯。その中心には、『鬼』と化した頼れる漢が立っていた。


「――スキル発動、【鬼神化】。さァ、鬼さん同士殺し合おうや……!」


 赤き闘気を身に纏い、額より角を生やしたスキンヘッド。

 切り札の強化スキルを解き放った親友が、再び戦場に舞い戻った。

 さらに、


「あづぅッッッ!?」


 身体を焦がしたアンジュが後退する。

 そちらを見れば、全身より蒼き炎を噴き出したザンソードが、鋭い視線で彼女を見ていた。


「――必殺アーツ発動、『アルティメット・ファイヤ・エンチャント』。死なぬのならば、焼き尽くすのみよ……!」


 炎の剣神と化したザンソード。彼の炎熱を受けたアンジュの身は、先ほどのように高速で治ることはなくなっていた。

 彼女の有する回復スキルと『火傷』の状態異常が食い合っているのだろう。「やられたなぁ……」とアンジュは呟く。


「覚悟しやがれ、先輩がた」


 誇らしき戦友二人と共に、最強クラスの熟練コンビに言い放つ。


「俺たちの戦いは、ここからだ――ッ!」


 


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言]  「俺たちの戦いは、ここからだ――ッ!」からの最後までお読みいただきのコンボは打ち切り漫画を彷彿とさせる(笑)
[一言] 打ち切りフラグじゃないですかw
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