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146:VS『逆鱗の女王アリス』




「行くぞお前たちッ!」


『ウォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーッ!』


 8万人のプレイヤーを率い、戦場目掛けて駆けだした――!

 無人の荒野をひたすら走る。全ての魔物が消えたことで、俺たちの足を止められる者は誰もいない。


「何としてでも『始まりの街』を押さえるぞ。マップによると、あの場所こそが世界の中心部なんだからな」


 元よりこちらは寡兵かへいの軍勢。倍以上の敵を討ち取るには、ポジション取りが重要となる。

 そこで狙うのが『始まりの街』の占拠だ。


「あそこさえ獲れば、世界の中心に向かって進む“『死のエリア』の浸食”を気にする必要はなくなるからな」


 そのメリットは大きい。こちらは気負いなく戦えるようになる上、逆に敵軍は背後から迫る壁に追い詰められることになるからだ。

 つまりは疑似的な挟み撃ちが完成するってわけだな。


「まぁ、おそらくは敵も同じようなことを考えるだろうがな。となると本格的に戦闘が始まるのは、街の中心に辿り着いてからか」


 色々と手は打ってきたが、さてどうなるか。

 ともかくまだまだ走る必要がありそうだな。

 

 ――かくして俺が、そんなことを考えていた時だ。前へ前へと進むたびに、妙なシルエットが視界に映り始めた。


「っ……アレ、は……?」


 この地点より遥か先。ちょうど、俺たちが目指している『始まりの街』のあたりに、真っ直ぐに伸びる光の柱が見えてきた。

 それに気付いた周囲のプレイヤーも息を呑む。直接見たものは限られているが、俺たちは“アレ”に対して心あたりがあった。全員の表情に緊張が走る。


「おいおいおい……まさか……!」


 さらに足を進めていく。

 そうしていよいよ街が遠目に見える場所まで来た瞬間、疑念は確信へと変わった。

 もはや間近に迫るまでもない。光の柱の正体がわかってしまった。

 ――『始まりの街』から伸びる“アレ”は、柱などではなく……!


「『女神の霊樹ユグドラシル』。雪原都市にあったはずの、女神側の本拠地のシンボルじゃねーか……!」


 どうしてソレがあそこにあるのか……いや、そんな疑問を考えている場合じゃない!


「全員止まれ! もしもすでに街を占拠されているとしたらっ」


 不用意に近づくのはまずい――そう叫ぼうとした時、彼方に無数の閃光が瞬く!


「ッ、現れろ盾よ! お前たちも身を庇えぇえええええー----ッ!」


『ッッッ!?』


 咄嗟に反応する魔王軍。防御系アーツを使う者や武器を盾にする者、あるいは訳が分からず立ち尽くす者など、それぞれが行動に移った刹那。何千もの長距離攻撃魔法が、俺たち目掛けて降り注いだ。


「くっ……これは……!」


 ガガガガガガァァァァァァッ! という音が総軍全域に広がっていく。

 炎が、水が、風が、雷が。そして何より熾烈極まる『闇』の魔法が、俺たちの武器や鎧を削り取っていく音だ。

 放たれ続ける死の豪雨。レベルの低い者や防御に失敗した者が死んでいく中、光の向こうに俺は見た。


「――ペンドラゴンに負けず、容赦がないな……!」


 街を取り囲む壁の上。背後に魔法使いの部隊を侍らせ、堂々と立つ悪魔を睨む。

 距離があろうが見間違えるわけがない。あのひときわ小柄な少女こそ、VR世界最古の強者『逆鱗の女王アリス』に違いなかった。

 彼女を認識した瞬間、不意に耳元に電子音が響いた。視界の端に、『フレンドのアリスさんより映像通信の要望が来ました』と表示される。


「……そういえば呪い島での別れ際、フレンド登録したんだったな」


 黒き閃光を防ぎながら思い返す。あの日の冒険は本当に楽しかったと。

 俺は複数の盾を展開しつつ、通信の要望に「許可する」と答えた。

 すると小さなウィンドウが現れ、魔導書を広げたアリスの姿が映り込む。


『こんにちは、ユーリさん。さっそくだけどピンチみたいね?』


「……あぁ、こんにちはだアリス。さっそくやってくれるじゃねえか」


 阿鼻叫喚の地獄の中で、その作り手と言葉を交わす。

 この状況下で、彼女が俺に……『敵』に対して通信を飛ばしてきた理由。そんなのはもう目に見えている。

 アリスは小さなウィンドウの中、幼い美貌に邪悪な笑みを張り付けた。


 

『――勝利宣告をしに来たわ。アナタはこのまま、私が嬲り殺してあげる……ッ!』



 


『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』

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