136:前回(半年前)のあらすじ:『絶滅大戦』まであと二日。ユーリと愉快な一行は隠しエリアに到着し、なんやかんやで敵の二人と行動を共にすることになるのだった!
――結論から言うと、『ヴォーティガン城』を焼き払うことは不可能だった。
流石に運営も学んだらしい。まず城自体が破壊不能オブジェクトな上、土地のほうにも属性変更不可設定が付与されていた。
おかげで前に教皇を城ごと焼いたような手は使えず、やむなく俺はヤリーオとクルッテルオ+敵であるマーリンとアリスを連れて、城に乗り込んだわけだ。
だが、ここはイタズラ好きだったというヴォーティガンの城。
入城一歩目で、『強制転移陣』なるものを踏んでしまい……、
「おえええ……ごめんねぇ、ユーリさん……!」
「まー気にすんなって」
ゴスロリ悪魔を背に、城の中を駆け回る。
俺は現在、刺客プレイヤーの一人である『逆鱗の女王アリス』と二人っきりになっていた。
ちなみにずっと彼女は青い顔だ。ここに来るまでの“激流に流されて渦潮に突っ込む”という条件を前に気持ち悪くなってしまい、酔いがまだ覚めないらしい。
使い魔のウルフキングに載せたら酔いが激しくなってしまいそうなので、おんぶ状態で揺らさないよう運んでいく。
「うぅ……ユーリさんからすれば、私も憎い敵の一人でしょうに……。もしも邪魔なら、そのへんに放り捨てても大丈夫だからね?」
心底申し訳なさそうにするアリス。
まあ確かに、こいつにはペンドラゴンやキリカと一緒に三連戦を仕掛けられたこともあったなあ。
だけど、
「んなことするわけあるかっつの。
お前のことはきっちり一回ぶっ倒したし、何より体調の悪い相手を放置しても、後味が悪いだけだろうが。それに……」
スキル【武装結界】により剣や槍を展開し、空中から襲いかかってきた巨大コウモリたちに放った。
武装に宿るポン太郎たちの力は驚異的だ。進化したことで威力とホーミング力がぐっと上がっており、瞬く間に敵を葬っていく。
「この通り、俺は両手が使えなくても戦えるからな。だから邪魔になんてならねーから、気ままに休んでおけっての」
「ユーリさん……」
本当にありがとうね……と呟きながら、アリスは気後れすることなく身を預けてきた。
――ちなみに俺の筋力値はゼロだ。実は小柄なアリスを一人背負うだけでも腕がプルプルしており、ぶっちゃけ息が上がりそうなのは秘密にしておく。
男の沽券に関わるからな……。
「私ってばリアルでも身体が丈夫じゃなくてね……VR適性もあんまりなくて、アバターを動かすのも苦手なの。
それで選んだ戦闘方法が、その場から動かないことを代償にした魔法ゴリ押しスタイルってわけ」
「あ〜、あの何百発もレーザーをブチ込んできた意味わからん戦法な……」
なるほど。あのチート攻撃の裏には、そんな制約があったわけだ。
「よくずるいって言われるけど、他にもHPを1にしたり、自分のステータスを魔力値以外1にして、ようやくあの攻撃を可能にしてるのよ?」
「へ〜、俺も似たような感じだから親近感湧くなあ。
ああ、でも明後日の『絶滅大戦』だと、刺客プレイヤーたちの異世界スキルは封印されちゃうんだろう?」
そうしたらアリスお得意の戦法は出来なくなってしまうはずだが。
そう心配する俺に、彼女は「問題ないわ」と背後で微笑む。
「刺客プレイヤーを倒したら、異世界のスキルを装備に宿せるようになる素材アイテムが手に入るでしょう?
だから私と同じく『ダークネスソウル・オンライン』からやってきた人を殺しまわってね、きっちりスキルを揃えたわ」
「何やってんだよアンタ……」
思わずドン引きしてしまう。
見た目は気弱そうな女子小学生にしか見えないが、やることはかなり滅茶苦茶だな。
そういえば刺客プレイヤー対策で別のゲームについて調べたが、『ダークネスソウル・オンライン』って初心者狩りなんかが流行ってたギスギスゲーだったそうだからな。
何よりあのペンドラゴンと同郷と思えば、過激なのも納得か。
「……となれば、ペンドラゴンも弱体化することなく戦場に立ってくるってわけか。そいつは倒し甲斐があるってもんだぜ」
なおさら大戦が楽しみになってくるな。
弱った相手を倒したところでスッキリしないからな。フルパワーのライバルをぶっ倒してこそ、勝負ってのは気持ちよく終われるものだ。
その最高の瞬間を想って胸を弾ませると、アリスがフフっと笑いかけてきた。
「うふふ、ユーリさんってばいい人な上に、本当にバトルが大好きなのね。アラタくんにちょっと似てるかも」
「アラタって?」
「私の婚約者さんよ」
へ〜……って、婚約者!?
俺はギョッと振り返り、アリスの顔を見た。
……どう見てもロリっ子にしか見えない。このゲームは顔や身長はリアルベースになるため、現実の彼女もほぼこんな感じのはずだ。
「い、違法なのでは……?」
「って合法よ! 私これでもアラサーよ!?」
涙目になってぷりぷり怒るアリスさん。どう見てもお子様です本当にありがとうございました。
「えええええ……色々な意味で、えええええええ……?」
たしかに前にロリじゃないとか言ってたけど、マジでマジかよ……てかこれでアラサーとかありえないって。
いやまぁ彼女の実際の年齢はともかく、そのアラタってヤツは間違いなくロリコンだろう。それだけは絶対だ。
「もう……私ってそんなに子供っぽく見える? 今度アラタくんのご実家に挨拶に伺うときには、高めのヒールを履いていこうかしら……」
「いやぁ、ちょっと背伸びしたくらいじゃどうにもならないと思うぞ?
……そういえばウチの兄ちゃんも、今度婚約者を連れて帰省するって言ってたなぁ」
「あらそうなの? ……まさか?」
「っていやいや、そんな偶然があるわけないだろ〜」
まさかゲームでたまたま知り合った相手が未来の義姉ちゃんなわけがない。
俺は苦笑を浮かべながら、兄ちゃんが――『新田』家の長男がどんな女性を連れてくるか、しばし思いを馳せるのだった。
『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』『マンガ版ユーリくんちゃんかわいい!』
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