第62話：サミュエル様が…
「キャリーヌ様、来月はいよいよサミュエル殿下の王太子就任式兼、婚約披露パーティですね」
「カリアン王国から、わざわざ王族の方もいらっしゃるのでしょう？王女殿下とは仲がよろしいとお伺いしましたわ」
「確か、ミリアム殿下とおっしゃられましたわよね。ミリアム殿下はキャリーヌ様の為に、色々と動いて下さったと聞いております。我が国の混乱も治まり、今平和に暮らせているのは、ミリアム殿下のお陰なのですよね。私たちもぜひお会いして、お礼を申し上げたいですわ」
「ええ、ミリアム様は、一番最初にできた大切なお友達ですわ。ミリアム様のお陰で私は、カリアン王国で楽しい時間を過ごすことが出来ましたの。ミリアム様は私にとって、かけがえのない大切な親友ですわ。もちろん、皆様の事も大切な友人だと思っております」
「まあ、キャリーヌ様ったら。嬉しい事をおっしゃってくださいますね。私達も今後、王妃殿下になられるキャリーヌ様をしっかり支えて参りますわ。皆様、ミリアム殿下に負けない様に、私たちも頑張りましょうね」
「「「「もちろんですわ」」」」
そう言ってほほ笑んでいる令嬢たち。この国に帰国して、早２ヶ月。サミュエル様のお陰で、すっかり令嬢たちとも仲良くなれた。
もちろん、ミリアム様とも定期的に連絡を取り合っている。私達はどんなに離れていても、大切な友人なのだ。
来月には久しぶりにミリアム様に会える、ミリアム様はアラステ王国にいらっしゃるのは初めてだから、私が色々と案内しないと！
「皆様、よろしければ今、令嬢たちに人気のお店などを教えていただけますか？ミリアム様がいらした時、案内したいのです」
せっかくこの国の令嬢たちと、仲良くなれたのだ。今の流行りを、リサーチしておこう。
「それでしたら、最近王都に出来た…」
「キャリーヌ様、大変です！サミュエル殿下が、急に倒れられました」
私達の元に、血相を掛けてやってきた使用人。
「えっ？サミュエル様が、倒れたですって？それで、容態はどうなの？大変、すぐにサミュエル様の元に向かわないと。もしサミュエル様の身に何かあったら、私は…」
考えるだけで、恐怖で体がガタガタと震えだす。
「キャリーヌ様、お気を確かに。連日の激務で、お疲れが出たのでしょう。きっと大丈夫ですわ」
令嬢たちが私を支え、励ましてくれる。彼女たちの言う通り、きっと疲れが出ただけだ。でも、なんだか物凄く嫌な予感がする。
「皆様、お気遣いいただきありがとうございます。申し訳ございませんが、今日のお茶会は、これにてお開きと言う事でよろしいでしょうか？」
「謝らないで下さい、私たちの事は気にしなくてもいいので、早く殿下の元へ」
令嬢たちが、私の背中を押してくれる。皆に頭を下げて、急いでサミュエル様の元へと向かう。
「キャリーヌ様、こちらです。どうぞ」
サミュエル様のお部屋につくと、ベッドの上にぐったりと横たわるサミュエル様の姿が。
「サミュエル様！しっかりしてください」
急いでサミュエル様の元に向かい、手を握った。なんて熱い手をしているの？本当に大丈夫なの？
「キャリーヌ…来てくれたのだね」
ゆっくりと瞼が上がったかと思うと、美しい青い瞳と目が合った。でも、目はうつろで視点が定まっていない様に見える。
「サミュエル様、お可哀そうに。サミュエル様が苦しそうですわ。お医者様は何をしていらっしゃるのですか？」
「先ほどお医者様の診断を受けられたのですが、やはり疲れが出た様でして。2～３日すれば、よくなるとの事ですわ」
「疲れが出ただけですって！私には、とてもそうは見えませんわ。もしかしたら、何かの病気が隠れているのかもしれません。もっと優秀なお医者様を…」
「キャリーヌ、心配をかけてごめんね…でも、きっと医者の言う通り、疲れが出たのだろう。少し休んだら、元気になるよ…」
力なく笑うサミュエル様。本当に疲れが出ただけなの？そんな風にはとても見えないわ。でも…皆がそう言うなら、信じるしかない。
「分かりました。サミュエル様、どうか私に看病をさせていただけないでしょうか？サミュエル様の事が不安で仕方ないのです。お願いします」
必死にサミュエル様に頭を下げた。少しでもサミュエル様から離れたら、二度と会えなくなってしまうかもしれない。なんだかそんな気がするのだ。
「分かったよ…でも、あまり無理をしてはいけないよ。分かったね」
「分かりましたわ。クラミー、今から公爵家に戻って、私の着替えなどを持ってきてくれるかしら？今日から王宮に泊まる事になったから」
「承知いたしました」
すぐにクラミーにも指示を出す。さらに使用人たちが、わざわざサミュエル様のお部屋に、私が休むためのベッドなどを運んできてくれた。
サミュエル様が元気になるまで、私がしっかり看病しないと！
