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第十二話 イヤではありません!

今回はちょっと文字数少なめです

「も、もう! ヒコザ先輩のバカ! 知りません!」


 絵的には女子が恥らって胸をポカポカ叩く場面を想像してほしい。実際はうつむいてしまっただけだが、ユキさんが恥ずかしがっている姿はまさにそんな感じであった。


「だってユキさんが俺の欲しいものを言えって言うから」

「だ、だからってそんな……き……キスだなんて……」

「やっぱりダメかぁ」


 ここでまた寂しそうな演技だ。さらに口調にも自分を(あざけ)るような雰囲気を織り交ぜてみる。すると俺の思惑通りにユキさんがあたふたし始めた。本当に拒絶されるならダメに決まってるみたいな言葉を即座に返されて終わりだからね。つまりこのユキさんの状態は心の中では許してくれてるか、あるいは迷っているかのどちらかということになる。それに前におでこにはキスさせてくれたんだし、もう少し押せばあの柔らかそうな可愛らしい唇も頂けるんじゃないかと思う。俺ってやっぱり鬼畜なのかな。


「あ、あの……だ、ダメとかいいとかの問題ではなくて……」

「俺とじゃイヤ?」

「ち、違います! イヤではありません! って、あ……」


 勢いあまって発した言葉で見事に自爆したようだ。ユキさん、いくら恥ずかしいからって俺の袖を掴んで肩に顔を押し付けるのやめて、軽く萌え(キュン)死ねるから。ところがそんな幸せに浸っていると、ユキさんが聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で何かを口走った。何となく聞き取れはしたのだが、確信が持てなかったのともう一度言ってほしかったので、俺はあえて聞きなおしてみることにした。


「え? ユキさん聞こえない、もう一度言って」

「こ、ここで……ここではイヤです……」

「ここではイヤ……ってことは別の場所ならいいってこと?」

「うう……そんなこと……恥ずかしくて言えません!」

「ユキさん……」

「なっ!」


 両手で顔を覆って恥ずかしがるユキさんの可愛さに、俺はついに我慢出来なくなって彼女を抱きしめてしまった。平日なのでそれほど多くないとは言え、市場の人通りは街中とは比べものにならないほどである。その中で突然男女が抱き合ったのだから、俺たちに衆目(しゅうもく)が集まるのは当然のことだろう。口笛を吹いたり冷やかしの言葉を浴びせてくる者も少なくはなかった。こうなると相手が帯刀している貴族だとか、そういうことも関係なくなるらしい。


「ひ、ヒコザ先輩!」

「ごめん、つい……」


 俺は慌ててユキさんを放したが、すでに彼女は硬直してしまっていた。逃げ出されなかっただけマシだったけどね。それよりこれだけ人目を集めてしまったのは俺としても計算外だし、さすがにこの状況はユキさんが可哀想に思えた。


「ユキさん、とにかくどこかに行こうか」

「は、はい……」


 俺はユキさんの手を握り、足早にその場から立ち去ることにした。その時ユキさんの体が小刻みに震えていたのに気付いて、ちょっと罪悪感を感じてしまったのは言うまでもないことだろう。

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本作の第二部は以下となります。

暴れん坊国王 〜平凡だった俺が(以下略)〜【第二部】

こちらも引き続きよろしくお願い致します。

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ストックはすでに五話ほどあります。

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