第八話 コムロさんのえっち
タケダ国の忍者による襲撃があったことで、うちの山の警備は以前とは比べものにならないくらい厳重になっていた。
それはいいとして、俺の腕の傷が思ったより深かったせいか、タノクラ城に留め置かれてからすでに一週間が経過している。その間ユキさんとアカネさんが代わる代わる俺にあ~んしてくれているのだが、これが本当に恥ずかしいったらありゃしない。そりゃね、利き腕やられたんだからありがたいと言えばありがたいよ。俺だってこんな光景を夢見たことだってあるよ。だけど一週間毎日、毎食やられるとさすがに恥ずかしさの方が先に立つってもんだ。
「あ、あのねユキさん、もう自分で食べられるからさ」
「ダメです! あれだけ深手を負っていたんですから、完治するまで食べさせてあげるのは私の義務です」
「いや、そんな義務とか……」
「あ、そう言えばヒコザ先輩、カシワバラ先輩のことなんですけど」
「うん? 彼女がどうかしたの?」
話しをはぐらかされたけどまあいいか。
「うちに住み込みで雇うことになりました。足が治ったらメイドさんとして働いてもらうんです。もちろん学校にも今まで通り通えます」
「なんと! それはよかった!」
その方がいいと俺も思う。前に訪れたカシワバラさんの家より帰ったら必ず誰かが出迎えてくれるこのお城の方が、カシワバラさんの心の傷も癒えるのが早いんじゃないかな。
「それで今日は特別にヒコザ先輩に、カシワバラ先輩のメイド服姿を見せてあげようということになったんですけど……」
「ほ、本当に?」
カシワバラさんのメイド服姿、これは絶対に見逃すべきではないだろう。タノクラ男爵家のあの水色のメイド服は誰の趣味かは知らないが、とにかく可愛いのだ。この先もし本当に皆が俺の奥さんになったとしても、このメイド服だけは着続けてもらおうと思ってるくらい。もちろんユキさんも例外ではないよ。
「ヒコザ先輩……」
そんなことを考えていたらユキさんがジト目で睨んできていた。
「な、何かな」
「ずい分食いつきがいいみたいですけど、そんなにメイド服好きなんですか?」
嫌いな男がいたらそれは絶滅危惧種くらいの希少価値があると思うよ、とはさすがに言えない。
「まあ、ほら、ここのメイド服って特に可愛いからさ」
「じゃ、じゃあ私も着た方が可愛く見えますか?」
ユキさん、急にそうやって照れながら言うの反則だよ。めちゃくちゃ萌えちゃうじゃんか。俺を殺す気ですか。
「も、もちろん! だけどユキさんはそのままでも……」
「分かりました。私も着替えてきます!」
今日の白ニットにデニム生地っぽいミニスカも好きだったんだけど、俺の言葉が終わらないうちにユキさんはさっさと部屋を出て行ってしまった。
それにしてもユキさんのメイド服姿か。カシワバラさんにアカネさん、そこにサトさんまで加わっちゃったら親の大四喜、字一色、四暗刻単騎をツモるくらいの破壊力だよ。もちろんアタマは俺だ。
あ、麻雀知らない人ゴメン。だけど本当にそんなことになったら、いったい俺は何人子供を持つことになるんだろう。そんなことを考えて一人でニヤニヤしていたら、急に扉が開いてユキさんたちが入ってきた。危ない危ない、こんな締まらない顔を見られたら何を言われるか分かったもんじゃない。
「ひ、ヒコザ先輩、どうですか?」
「どうって……ちょっと……」
入ってきたのは三人、ユキさん、アカネさん、カシワバラさんだ。しかし俺は三人の姿を見て言葉を失ってしまったよ。タノクラ家のメイド服は基本的にスカートの丈が短い。ところが三人とも、それをさらに詰めて超ミニにしてしまっていたのである。ひざ上十センチとか十五センチとかのレベルじゃない。もう本当にギリギリ、ちょっとでも屈もうものなら絶対にパンツが見えてしまうという短さだ。眼福とはこのことを言うに違いないけど、正直目のやり場に困ってしまうよ。
「な、なんでそんなにスカートの丈を……」
「アカネさんがそうした方が先輩が喜ぶからって……」
アカネさん、グッジョブ。本当に君は俺の嗜好をよくご存じで。
「コムロさん、あんまり見られると恥ずかしいです……」
「ご主人さま、私も見て下さい!」
ユキさんとカシワバラさんはスカートの裾を押さえながら恥ずかしがってるし、アカネさんは顔を赤くしながらも後ろに手を組んで胸を大きく見せようとしているみたいだ。全員可愛いよ。可愛いすぎて飛びつきたくなるよ。それでもカシワバラさんはまだ松葉杖を手放せないようで、足首に巻かれた包帯が痛々しい。
「あのさ、カシワバラさん、足は大丈夫?」
「ヒコザ先輩! そう言えば足を見ても怪しまれないと思ってませんか?」
「ち、ちがうって、俺は本当に……」
「コムロさんのえっち……」
「ご主人さま! 私を見て!」
この日俺は、人生で得られるであろう幸運の大半を使い切ったような気がしていた。




