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第十話 帰還

「では、後のことは頼んだぞ」


 俺と六人の妻にミノリ姫、それからオオクボ国王とガモウ閣下は、ツッチーと彼の補佐としてコウフに来ているサエキに見送られ、城を後にするところだった。道中の護衛は約十五万の兵士たちである。この大軍を襲うような愚かな夜盗はいないだろう。


「トリイが来たら入れ替わりにエンザンへ迎え。ツチミカド、妻たちと仲良くな」

「陛下もお達者で」

「ツッチー、子が出来たら見せに参れよ」

「オオクボ陛下、お約束致します」

「ミノリ殿との婚儀は欠席で構わん。まずは地固めだ」

「陛下……かしこまりましてございます」


 俺たちを乗せた馬車が城門を出ると、沿道に詰めかけた領民たちから大歓声が沸き起こっていた。すでに兵士たちの半数は母国に向けて行軍を開始しており、残りは俺たちの後に続くことになっている。マツダイラ閣下は馬車の横にピタリと張り付くいつものスタイルだ。


「シナノの姫との婚礼はいつの予定だ?」

「帰還して一月(ひとつき)のうちには、と思っております」

「ミノリ殿には其方(そなた)の素性は?」

「いえ、未だ」

「陛下の素性? 何ですかそれは」


 オオクボ国王の一言にミノリ姫が即座に反応していた。いつ明かそうかと悩んでいたが、婚礼前の今がいい機会かも知れない。


「実はな、()はニセモノの国王なのだ」

「は? またご冗談を……」


 ところが他の妻たちの様子を見て、彼女も真剣な表情になる。


「ご事情をお聞かせ願えますか?」


 そこで俺は自分がタケダの王子に瓜二つだったこと、その王子が暗殺されたため止むなく王子役を引き受けたことを話して聞かせた。


「では初めはタケダが混乱しないように、ということだったのですか?」

「当時のオダ帝国がタケダを狙っていたからな。ハルノブ前国王はすでにこの世になく、残された姫たちもタケダを継ぐ器ではなかったのだ」


 そして、結局タケダが落ちればオオクボ王国が危機に陥るということで、俺が国王の座を継ぐことになったのだと説明した。


「で、では陛下の正体は……?」

「貧乏貴族の次男坊、と言いたいところだが、実はオーガライトの山持ち平民の長男だ。今は父がオオクボ国王に叙任されて伯爵位を(たまわ)っているがな」

「名はコムロ・ヒコザ。国王の前は余の騎士だ」

「コムロって……普段お忍びで城下に出る時のお名前が……」

「あっちの方が本名ということだよ」


 ミノリ姫は複雑な表情を浮かべている。


「隠していて済まん。結婚を取りやめると申すのであればそれも致し方のないこと。この件を口外しないのを条件に、シナノとの同盟を破棄するようなことはないから安心してくれ」

「そんな! ひどいです、陛下!」

「分かっている。だがもう余はタケダの王を退くことは出来ぬのだ」

「いいえ、分かっていません!」

「ミノリ殿?」


 突然泣き出したミノリ姫に、俺はどうしていいか分からずに妻たちに助けを求める視線を送った。しかし六人とも、そんな俺に冷たい目を向けている。


「ミノリ殿、ヒコザは女心の分からん朴念仁(ぼくねんじん)なんじゃよ」

「ぼ、朴念仁って……」

「ご主人さま陛下、ミノリ殿は陛下のどこを好きになったと思っているんですか?」

「え? それは……」


 顔、とか言ったら絶対引っ(ぱた)かれるよね。ところがアカネさんは鼻息を荒くしてこう言った。


「顔です!」

「え?」

「アカネ殿、それでは説明になってませんよ」


 さすがにこれにはユキたんたちも吹き出していた。


「ですが(あなが)ち間違いではありません」


 そしてユキたんは続ける。


「ミノリ殿は陛下のご身分ではなく、陛下ご自身に惹かれたのです。それなのにあんな言い方をされては、彼女が傷つかないわけがないじゃないですか」

「そ、そうなのか?」

「当たり前です! 私は幼い頃からこの容姿で、若い男の人に優しくされたことなんてありませんでした。でも陛下は違った。そんな私に求婚までして下さって……」


 確かに王女という立場上、準貴族のままだったら障害があったかも知れないと彼女は言った。しかしそれなら、王族という立場を捨てても構わないとまで言ってくれたのである。


「そうか。本当に済まなかった」

「私は陛下を好きで好きで仕方がないくらいなんです。それなのに結婚を取りやめてもいいだなんて……」

「いや、だから本当に済まなかったと……」

「でも私の方がご主人さま陛下を好きですけどね」

「私が一番ですよ」

「わ、私だって負けてません!」

「なっ! 妾とて負けておらんぞ!」

「コホン!」

「あ……」


 さすがにオオクボ国王は居たたまれなくなったのか、咳払い一つで皆を黙らせてくれた。しかしこれはこれで嬉しい反面、めちゃくちゃ恥ずかしいぞ。


「ヒコザよ、其方は愛されているのだな」

「義父上!」


 この後、次の野営地から、オオクボ国王が他の馬車に乗り換えたのは言うまでもないだろう。そして四日後、俺たちは久しぶりに王城へと帰還したのだった。


次回エピローグとなります。

長らくご愛読頂きありがとうございました。


なお、本作は第二部に移行致します。

そちらも変わらずお読み頂けると幸いです。

明日のエピローグ更新と同時に、第二部へのリンクを貼ります。

※現在はまだ未公開ですが、その時に公開もします。


今後ともよろしくお願い致します(^o^)

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本作の第二部は以下となります。

暴れん坊国王 〜平凡だった俺が(以下略)〜【第二部】

こちらも引き続きよろしくお願い致します。

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ストックはすでに五話ほどあります。

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