第四話 先輩、明日の全校集会が楽しみですね
ユキさんの説明によると魔法刀とは使い手を限定する魔法がかけられた刀で、本来の所有者が使う場合は全く重さを感じないのだそうだ。特別切れ味が鋭かったり特殊な効果があるというわけではないが、軽く感じる分切っ先の速度が上がるので、攻撃力は通常の刀と比べて数倍に跳ね上がるということだった。もっともそれは剣術の心得がある者が使用した場合であって、俺のような素人が扱ってもあまりメリットはないらしい。ちなみに鞘に収まっている時は魔法は発動しないので、普通の刀と同様に他人でも持ち運ぶことが出来るようだ。
「私の刀も陛下から賜った魔法刀なんです」
「なるほど、それで……」
あの五人組の女子に対峙した時、ユキさんの刀の動きがまったく見えなかったのはそのせいだったのか。
「他人が持とうとすると物凄く重く感じるということはですね先輩、峰打ちでも手加減しないと簡単に骨まで砕いちゃうんです」
「え? それじゃ前に俺が頭を打たれた時は……」
「あれ、ほとんど力を入れずにコツンとしただけなんですよ」
マジか。こっちは思いっきり殴られたくらいの衝撃と痛みがあったのに。するとあの襲ってきた女の子に対する腹と背中への打撃も、ユキさんは相当な手加減をしていたということになる。それよりユキさん、どんな状況でも力加減を忘れないというのは、ある意味すごいというか何というか。
「先輩、明日の全校集会が楽しみですね」
「よ、よしてよ。俺どんな顔してたらいいんだかって考えると今から胃が痛いくらいなんだから」
「堂々としていればいいんですよ。でもよかったじゃないですか」
「よかった? 何が?」
「先輩の苦手なケイ先輩のことです。これからは気軽に呼び捨てにしたり出来なくなるんですから」
「ああ、そういうことか」
「もし今までみたいに馴れ馴れしくしてきたらですね、無礼者! と言ってこうバッサリと……」
「ば、バッサリって……ユキさん?」
言いながら刀を振り下ろす仕草を見せるユキさん。やっぱりケイ先輩には色々と思うところもあるんだろうな。
「うふふ、冗談です。準貴族には無礼討ちは許されていませんから」
いやいや、半分本気だったでしょ。目が笑ってませんでしたから。
そんな話しをしているうちにそろそろ昼休みも終わりに近づいてきたので、俺たちは空になった弁当箱を片付けてそれぞれの教室に戻ることにした。
「シノよ、今日までよく耐えたな」
「キク様、もったいないお言葉です」
くノ一の女棟梁キクの言葉に、シノと呼ばれた少女は頬を上気させて喜びを隠せないという表情だった。
シノの肩までの艶やかな銀髪と二重で長いまつげに大きな青い瞳、そして美しい曲線を描く卵形の輪郭はこの世界ではかなりのブサイクの部類に入る。胸は大きめのリンゴを思わせる膨らみをたたえ、全体的にほっそりとした体型だが尻は形がきれいで太股もほどよい肉付きである。さらに腰と足首はキュッと締まっており、プロポーションは垂涎ものと言えるだろう。
「そなたの使命は分かっておるな?」
「はい、隣国のコムロヒコザなる者を籠絡して連れ帰ることにございます」
「その者はかなりの美男とのこと。見事役目を果たした暁には褒美としてくれてやってもよいぞ」
「ですがキク様、私のような醜女がそのような美男を籠絡出来るのでしょうか。私はコチョウ様や他のくノ一のような男を魅了する術は使えませんが……」
「妾の見立てが正しければそなたが打って付けなのだ。だが気をつけろ。その者に付いているユキと申す娘はかなりの使い手だそうだ。よもやお前が後れを取るようなことはないと思うが……」
「たかが剣術、我が流派の苦無と忍者刀の突き技の前では拙技と言えましょう」
「さすがは武門の誉れ高きサイカ流の姫君だ。吉報を待っておるぞ」
「あ、あの……キク様……」
「分かっておる。餞別をやろう。こちらに参れ」
それから半刻以上の間、シノの切なげな喘ぎ声が止むことはなかった。




