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第十九話 城下引き回しの上獄門とする

「陛下の仰せの通り、ミノワ伯爵領に騎兵隊を差し向けました」

「よし、伯爵には召喚状を渡せ。受け取ったらすぐに登城せよと伝えろ」


 ミノワ伯爵が城にやってくる少し前、彼の領地を没収するため俺は騎兵隊を差し向けたのだった。彼がどんな悪人だろうと領民に罪はない。だが仮にも領主がその地位を失うことになるのだ。極力領民の混乱は避けたいというのが俺の考えだった。そして現在というわけである。


「関係のない貴様が何故ハタガヤ・セイメイは殺されたのだと思ったのかと()いているのだ」

「あ、あの者は何かと噂のある人物でしたので」

「噂? どんな噂だ?」

「それは……」

「もうよい。あの者の主な罪状は()に対する反逆罪だ。そしてミノワ、貴様も同罪である」

「お、お待ち下さい陛下! 私は陛下に反逆の意思など……」

「黙れ! 我ら王族を(かどわ)かして何を企んでいた! 有り(てい)に白状せよ」

「王族を拐かしなどと……」


 しらを切ろうとするミノワに呆れ果てた俺は、セイメイと相対した時のことを話して聞かせた。もちろんアカネさんとシノブが襲われた時のこともである。


「そのある者というのが私であるとの証拠はございますでしょうか」

「では聞くが、拐かされたカワチ屋の娘二人が貴様の屋敷にいたのは何故だ? あの者たちを拐かしたのもセイメイの門弟であるアビコ兄弟だと聞いたが?」

「し、知りません! 私は知りません!」

「まだしらを切るか! 貴様の屋敷から娘たちを助け出したのは余の密偵なのだ!」

「なっ……!」


 ようやくここにきてミノワも観念せざるを得なくなったようだ。悔しそうに唇を噛んでいたが、俺は情状を酌量(しゃくりょう)してやる余地など微塵も感じなかった。だが一応は何がしたかったのか聞いておこうと思う。


「ミノワ、何故このような愚行に及んだのだ?」

「愚行……愚行ですと? 誤った(まつりごと)を正そうとした私の行いの、どこが愚行と申されるのです?」

「誤った政だと?」

「オダ帝国との開国は良しとしましょう。しかしながら商い主制度の廃止、あれは何ですか! 自由貿易などと称して金の流れを変えたおつもりかも知れませんが、奴隷身分の者にまで商いを許すなど私には信じられません」


 なるほど、この男は自由貿易の真の目的が分からないということか。既得(きとく)権益(けんえき)にとらわれて目先のことしか見えず、その先にある脅威に目を向けることが出来ないのだろう。


「それで?」

「私が宰相(さいしょう)となって陛下の代わりに政を担えば今より何倍、いえ、何十倍も豊かな世の中になるでしょう」

「そのために女を(さら)ったり、商人の店や屋敷を奪うことが正義と申すのか?」

「そのようなことは大事の前の小事、多少の犠牲はやむを得ません」

(たわ)けがっ! 貴様の欲望を満たすことまでやむを得ない犠牲と申すか!」

「王国一の美丈夫(びじょうぶ)とも言われる陛下には分かりますまい。女子(おなご)の方が圧倒的に多いのに、全く見向きもされない醜男(ぶおとこ)の気持ちなど」


 なんだ、コイツは自分の劣等感から次々と女性を攫っては手籠(てご)めにしていたということか。それを私欲と言わずして何と言えというのだ。


「ミノワ、貴様のような者が余の宰相たる器だと思っているのか? 思い上がるのも大概にせよ!」


 そこで俺は玉座から立ち上がり、ミノワを見下ろしながら判決の言い渡しに入った。


「裁きを申し渡す。ミノワ・ブンゴの此度(こたび)の所業は極めて悪質で、反省の色もなく重々不届き。よって城下引き回しの上獄門(ごくもん)とする。無論爵位は剥奪、領地及び家屋敷を含めた私財は全て没収。ミノワ家の者たちは(ことごと)くを王国外に追放とする。ただし、住み込み以外の奉公人があればその者は無罪とする。以上だ!」

「ちょ、お待ち下さい! それは平民や奴隷に対するお裁きと同じでは」

「愚か者! 貴様がこれまでどれほど多くの民を苦しめてきたと思っているのだ!」


 獄門とは首を()ねられた後に晒され、親類縁者による(とむら)いや埋葬もさせてもらえず、胴体は試し斬りなどに用いられる刑である。主に平民以下の者に科せられ、貴族に対して言い渡されることはほとんどない。というか恐らく俺が国王になってからは初めてではないかと思う。もっとも俺としては南西の牢獄に送られる方が悲惨という気もしないではないけどね。


「せめてこの世にあるうちに、自身の行いを悔いるがよかろう。貴様の領地だった場所も引き回してやるからな」

「そんな……!」


 この判決から三日後にミノワの刑が執行された。城下ではそれほどでもなかったようだが、旧ミノワ領に入ってからの投石は極悪人と呼ばれた罪人に対するよれよりも凄惨だったそうだ。刑場に到着した時に彼の息があったのが不思議なほどだったと言うから、相当なものだったのだろう。


 また、それより先んじて領内にあった岡場所(おかばしょ)からは、多くの女性が助け出されていた。もちろんそこを取り仕切っていた者たちも捕らえられ、領地は王国の直轄(ちょっかつ)領として新たな一歩を踏み出すこととなる。更にハタガヤ道場が閉鎖されたのは言うまでもないだろう。


更新が遅くなってすみません。

明日はもしかしたら更新出来ないかも。


とりあえず一件落着ということで、次は新章に入る予定です。

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本作の第二部は以下となります。

暴れん坊国王 〜平凡だった俺が(以下略)〜【第二部】

こちらも引き続きよろしくお願い致します。

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ストックはすでに五話ほどあります。

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