第三話 制服でするの、私もやってみたいです!
「其方らはこれまで民のためによく尽くしてきたと聞く。よって今後はこの城で商い制度の改革に尽力してもらいたい」
実はここに集まった商い主たちの中で、今回名前を呼ばれた者たちに関しては善良な商い主であるとの報告が上がっていたのである。そこで彼らから商い主という立場を奪う代わりに、それを肩代わりすることになる王国に居場所を用意したというわけだ。分かりやすく言うと、民間から新たに雇い入れる公務員のようなものである。
「おお! さすがは国王陛下。して、我らの処遇はいかがなるのでございましょう?」
名を呼ばれなかった残りの商い主のうち、見た目が大元締めっぽい男が大仰な手振りを交えながら声を上げた。しかしこの者に発言を許した覚えはない。そう思ってオオノさんに視線を送ると、心得たとばかりに一つ頷いてくれた。
「サンシュウ屋のキザエモンであるな。貴様許しもなく陛下に言上とは何事か! この者を即刻捕らえよ」
「そ、そんな!」
すぐに数人の騎兵がキザエモンと呼ばれた男に剣と槍を向けて拘束にかかる。その突然の光景に場内が騒然となったのは言うまでもないだろう。
「本来ならば無礼討ちとするところを、先に陛下よりこの場での無礼討ちはならぬとのお達しを賜っておる。陛下に重々感謝するがよかろう。ただし、事と次第によっては死んだ方がマシと思うかも知れんがな」
この後彼は尋問、あるいは拷問によりこれまでの阿漕な所業を自白させられ、財産などは全て没収されることになっている。それは残された商い主たち全員も同じだった。国の出入りを自由にする政策は、彼らが貯め込んだ財を国外に持ち出せないように没収してからである。
「陛下、お疲れさまでございました」
商い主への通達と逮捕が済み、書斎に戻って一休みしているところにツッチーがやってきた。ユキたんとアカネさんには自室で休養をとってもらうことにしたのだ。現在の俺の護衛は事実上、この部屋に同居しているウイちゃんということになる。もちろん、部屋の入り口と受け付けにも衛兵が控えているけどね。ただ彼らにはウイちゃんの正体は知らせていない。何故なら衛兵は元からこのタケダ城にいた者であり、いつ俺に反旗を翻すか分からないからだ。
「取りあえず大掃除の幕開けといったところか」
「左様でございますな」
「商い主たちから財を引き揚げるのに何日くらいかかりそうだ?」
「オオノ殿の言では、十日のうちには何とかなりそうだと申されておりました」
裁判などで審理する必要はないからね。
「すると告知の期間も含めて、領民への演説は二十日後くらいでどうかな」
「よいと存じます。では早速に演説用の文書を作成致しましょう」
「国境の自由往来に関してはオダ側にも通達が必要だよな」
「心得ております」
オダがどのような反応を示すかは分からないが、こちらはこれまでとは打って変わっての開国政策である。おそらくは度肝を抜かれるだろうし、開国した相手にいきなり攻め込むようなことも出来ないだろう。折を見て使者を送り、不可侵条約でも取り付けられれば言うこともないのだが、そこまでは求めすぎかも知れない。
「国王陛下に申し上げます!」
その時扉の向こう側から衛兵の声が聞こえた。おそらくは来客の類だろうと思う。
「申せ」
俺に代わって応えたのはツッチーである。
「スズネ王妃殿下がお見えにございます」
「通せ」
「ははっ!」
来客はスズネさんだったか。夕食まではまだ時間があるから呼びに来たというわけでもないだろう。何か相談ごとでも出来たのかな。
「陛下、お久しゅうございます」
「あ? あ、うん、久しぶり……」
どうしたんだろう。何だかちょっと拗ねてるっぽいぞ。
「それでは私はこれにて」
空気を読んだツッチーが部屋を出ていく。ウイちゃんもスズネさんに軽く会釈して、すっと壁の向こうに姿を消した。
「スズネさん、どうしたの?」
「アカネさんから聞きました。制服でするの、私もやってみたいです!」
「は?」
アカネさん、彼女に何を吹き込んだのさ。
「その、ヒコザさんを無理矢理みたいな感じで」
「いやいや、ちょっと待った」
「それもユキ殿と二人がかりで。でも私は一人でヒコザさんを……」
「もしかしてくノ一の術を使って、とか?」
「朝には術を解きます。ですから私とも制服で」
スズネさんは制服でしたいのか俺を無理矢理犯したいのかどっちなんだろう。しかしくノ一の術というのも物凄く興味を惹かれる。ただ気になることが一つ。
「あ、あのさ、術を解いたらその、記憶まで失ってしまうとかは……」
「それはありません。記憶を失うようなことになったら私とどんなことをしたのかも忘れてしまうじゃありませんか」
「うん、そうだよね。あはは」
よかった。術にかかって半分正気じゃなくなったとしても、スズネさんに何をして何をされたのかは忘れないってことだ。それならぜひとも体験してみたい。
「分かった。じゃ次の時は制服でしようか」
「本当ですか! では明後日の夜はなるべく早く私の部屋にいらして下さいね。朝まで私を求め続けて頂きますから」
そう言うとスズネさんは来たときとは打って変わって上機嫌で部屋を出ていった。彼女がどうして制服にこだわったのかは分からないが、学校で出会った時はくノ一の任務に縛られていたからね。その抑圧された感情の反動であんなことを言い出したのかも知れない。
それにしてもアカネさんには困ったものだ。次に会った時に注意しておこう。そんなことを考えていると、再び衛兵が来客を告げた。




