第十四話 それを可愛いと思った瞬間に機嫌が直ったようだ
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な、なんだ、重たいぞ。これは夢なのだろうか。それにしては感覚が妙に現実的である。一体何事が起こっているというのだろう。
「……コザ様……ヒコザ様」
「う……うう? ウイちゃん?」
その声は紛れもなく成仏して目の前から姿を消してしまったアザイ家の姫君、そして俺の第五夫人であるウイちゃんのものだった。ということはやっぱり夢なのか。大方昼間アヤカ姫とウイちゃんの話をしていたから夢に出てきたのだろう。しかし夢でも何でもいい。あの懐かしい声が聞けただけで俺は涙が出るほど幸せである。でも出来れば可愛い姿も見て、さらに願わくば抱きしめて口づけもしたい。
「もう! そんなにいっぺんに願わないで下さい」
「本当に……ウイちゃんなの?」
「そうですよ。ずっと呼びかけておりましたのに、少しも気づいて頂けなくて寂しかったんですから」
「え、そうなんだ」
成仏って天に召されることじゃないのかな。
「でもお昼に私のことを話されていましたでしょう? ですからもしかしたら今夜は気づいて頂けるかもって、ずっとお呼びしてたんです」
目を開いた先には、あの懐かしいウイちゃんの顔がすぐ間近にはっきりと見えていた。しかも幽霊なのに感じられる甘い香りは、これまで会えなかった分の想いまで一気に昂ぶらせる。
「ウイちゃん!」
俺がもう一度名前を呼ぶと、彼女は掛け布団をすっとすり抜けてこの腕の中に収まっていた。これでもかと言うほどの愛おしさを感じながらそれを抱きしめ、俺たちはしばらく無言のまま唇を重ね合わせていた。
「ヒコザ様、今夜は私にもたくさんして下さいね。早くても大丈夫ですよ」
「え? 何で知ってる……って、まさか!」
「ずっとお側で見てましたもの。私がどれだけ歯がゆかったかお分かりになりますか?」
「いやいやいや、それはちょっと何というか」
「悔しいからヒコザ様にたくさんイタズラして差し上げてましたの」
も、もしかして俺の早漏はウイちゃんが原因だったんじゃないか。まあそれもこれから彼女としてみれば分かることだ。だがその前に――
「ウイちゃん、一つ約束してほしいことがある」
「あら、何ですの?」
「今後一切、他の子たちとしているところを覗いたり割り込んでイタズラしたりしないこと!」
「どうしてですか? その方が楽しくありませんか?」
「多分楽しいのはウイちゃんだけだってば。それとも君は俺が君としてる最中に、他の女の子に刺激されてそっちの方が気持ちいいって思ったとしてもなんともない?」
「うーん、それは確かに複雑な気分になりますわね。かしこまりました。ヒコザ様のお言い付けに従わせて頂きますわ」
他にも彼女には聞きたいこともあるのだが、今はひとまずこの柔らかい感触を心ゆくまで堪能したい。そんな欲望に任せて俺は彼女の全身を楽しみ、そしてとうとう幽霊とも一つになっていた。
「あ、あのさ……」
「ですから大丈夫ですと申し上げたのです」
どうやら俺が早いのはウイちゃんのイタズラのせいではなかったらしい。それに彼女の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「でもよかったですわ」
「何が?」
「私だけ長持ちされたらどうしようかと不安でしたの」
それはよかった、というより俺としては情けないというべきなんだけどね。
「どうなさったのですか? こんなに力強く抱きしめて下さって。私はとても嬉しいのですけど」
「いつもみたいに心を読まないの?」
「まあ、そんなことをしたことはございませんわよ。それに……」
「それに?」
「ヒコザ様のお口から直接お聞きしたい言葉もございますの」
俺はさらにウイちゃんを抱きしめる腕に力を入れてから、全身を強く押し付けるようにして囁いた。
「ウイちゃん、頼むからもう消えないでくれ」
「朝になってもですか?」
「うん」
「お昼を過ぎても?」
「うん」
「明日の夜もですか?」
「うん。でもアヤカ姫とのアレは覗き見しちゃダメだけどね」
危ない危ない、危うく引っかかるところだった。こういうところは本当に変わってないけど、それがまた嬉しいところでもあるよね。
「それともう一つ頼みがある」
「何でしょう」
「明後日までこの部屋から出ないでくれないかな」
「あら、私が外に出ると何か不都合でもございますか?」
「そういうわけではないんだけどね」
明晩はアヤカ姫と約束してるから、明後日になったら皆を集めて彼女が戻ってきたことを報告したいという意味である。
「そういうことでしたか」
舌の根も渇かないうちから俺の心を読んだよ、この姫君は。
「でも、ヒコザ様がいらっしゃらないのに寂しいです」
「昼間はいるから」
「まあ! ではお昼からまた私をお抱き下さいますの?」
それはかなり魅力的な要望ではあるが、アヤカ姫の後は一度ユキたんの許を訪れる約束になっているし、俺を驚かせてくれるって言ってたからね。ウイちゃんにはもう少し待ってもらわないといけないだろう。
そんなことを考えていたら少々拗ねた表情を見せたウイちゃんだったが、それを可愛いと思った瞬間に機嫌が直ったようだ。全く、ずっと俺の心を盗み見たままってことか。
「だって、ヒコザ様のことを考えたら居ても立ってもいられませんの」
「あはは。でも……」
「ヒコザ様?」
「本当に戻ってきてくれてよかった……」
それからしばらく俺たちは互いに強く抱きしめ合って、そして泣いたのだった。




