第六話 姫殿下の初めてのお相手を務めさせて頂きます
「姫殿下、本当に最後になってしまいましたが」
「よい、妾がそう申したのじゃからな」
部屋に入るとまだ十二歳のあどけない少女は、俺の方を向いて真っ赤になりながらも微笑んでくれた。姫殿下はこちらの世界ではかなりの美少女のばずで、つまり見た目だけなら俺の目には残念な容姿に映ってしまう。しかし俺は王族としての彼女と、それとは別に傷つきやすい少女の一面を知っている。そんな姫殿下を愛しく思って抱きしめたこともあったほどだ。
「時にヒコザ」
「はい、何ですか?」
「そなた、妾の胸を見たじゃろ?」
「はっ! え? いや、あの……」
「あの時、妾の胸を見たじゃろと聞いておるのだ」
「あれはその、何というか……」
「責めているのではないから安心せい。見たなら見たと正直に言わんか」
「み、見ました……」
「そ、そうか」
やっぱり気にしてたんだ。でも責めてないって言ってたし、まさかそれで怒られることはないよね。
「それで、ユキのは見たのか?」
「はい?」
「ユキの胸はもう見たのか、と聞いておるのじゃ」
「ど、どうしてそんなことを……」
「いいから答えよ、これは命令じゃ」
「いえ、見てません」
「そうか」
そこで姫殿下がニヤリと笑った。あれ、何か嫌な予感がするぞ。
「つまりそなたは正妻に迎えるつもりのユキより妾の胸を先に見た、そういうことで間違いないのじゃな?」
「ま、まあ、その通りです」
「のうヒコザ、妾は王族の姫じゃ。分かっておろうな?」
「もちろんです」
「順番を待つ間に考えたのじゃがその妾にそなたは求婚する、ということはじゃ」
「はい」
「そなたが王家に婿入りせねばならんということになるのじゃよ。しかも正妻はユキではなく妾でなくてはならん」
「え? そ、それは……」
「困るじゃろ。妾も本当はユキを泣かせるようなことはしたくない」
姫殿下が言いながら俺に抱きついてきた。言ってることとやってることが違う気がするんだけど、さすがに口に出しては言えないよね。
「ヒコザ、それを解決するよい方法がある。聞きたいか?」
「あるんですか? それはぜひ聞きたいです!」
「その前に、ヒコザは妾を抱く気はあるか?」
「え? いや、それは……」
「妾には女としての魅力を感じぬかの」
そんな寂しそうに言わないで下さいよ。それに女としての魅力って、姫殿下はまだ十二歳じゃないですか。ひとまず俺は彼女を軽く抱きしめた。
「決してそのようなことは……」
「妾のは小さいからな。他の者よりも小さいあの幽霊にも負けておるし」
「お、大きさは問題ではありませんから」
「そうか! ならば妾のことも女として見られるということじゃな?」
「もちろんです!」
「よし、ならば妾を抱け」
「い、今ですか? それは……」
「どうした、これでも裳着以降、妾には縁談の申し込みがひっきりなしなのじゃぞ」
そりゃそうでしょうね。姫殿下は美少女の上に、結婚したら王族の仲間入りが確定してるんだから。でもその年齢で利権の絡んだ縁談ばかりだとしたら、きっと居たたまれないんじゃないかと思う。だが――
「姫殿下、たとえご命令でもそれは出来ません。もしそれでお手討ちになさるというのでしたら、たった今縁を結んだばかりの嫁たちに別れを告げる時間を下さい」
「ヒコザ、お前……」
一瞬絶句したような表情を見せた姫殿下は、抱きついていた腕をほどいて大笑いを始めた。
「妾にお前を討てるわけがなかろう。まだ分からぬか?」
「は、はい?」
「今すぐでなくともよい。ただ、妾の破瓜はそなたに任せるとする。これは命令、否は許さぬ」
「姫殿下……」
「妾はの、お前がよいのじゃ」
急に恥ずかしそうにそんなことを言われたら、俺だってグッときちゃいますよ。
「姫殿下、でもそれでは……」
「ユキを泣かせぬ方法じゃろ、教えてやるから妾の命令を聞くと約束せぬか」
「今すぐでなくてよいのですね?」
「そう申したはずじゃ」
「分かりました。おそれながら、私が姫殿下の初めてのお相手を務めさせて頂きます」
「うむ、では誓いの口づけをせよ」
誓いの口づけって、でもそうか。それでユキさんたちを泣かせることもなく、姫殿下も満足されるのならどうということはない。というか逆に十二歳の女の子と口づけなんて、俺の背徳感がハンパないけど仕方ないよね。
「姫殿下、失礼致します」
俺は一度離れた彼女を抱き寄せ、目を閉じたところに軽く唇を押し当てた。ほんの一瞬の口づけ、それでも姫殿下の顔は茹でタコのように赤く色づく。
「ひ、ヒコザ、もう一度じゃ、もう一度……」
これが十二歳の少女なのかと信じられなくなるほど、その瞳は艶めかしく潤んでいた。まさか姫殿下にまで欲情してしまうとは思わなかったよ。しかし今腕の中にいる小さくてか細いこの少女にたまらない愛おしさを感じ、その後俺たちは何度も唇を重ねていた。
「それでなヒコザ、ユキを泣かせずに済む方法じゃが……」
何度もの口づけを交わし、俺の腕の中で充分に余韻を楽しんだであろう姫殿下は、約束通りその方法というのを教えてくれた。しかしそれはあまりに突拍子もないことだったのである。
「む、無理ですよ、そんなの」
「無理なものか。そなたにしか出来んことじゃ」
そう言うと姫殿下は、俺の膨らんだ一部分を見て呟いた。
「いずれこれも妾のものになるのじゃな」
手を伸ばして触ろうとしたので、それだけは何とか阻止したよ。危ない危ない。




