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明日のために、悪だくみ

「ってことで、場所の確保、できました!」

「さっすがアーシャ先生!

 これで後は、現物を作るだけだねぇ」


 私の報告に、ノーラさんはにんまりとした笑みを見せる。


 昼過ぎに魔王様にお会いしてから、そのままゲルダさんに運んでもらってドワーフの集落へ。

 待ち構えていたノーラさんに報告しているところだ。


「何言ってるんですか、ノーラさんの作る物に間違いはないでしょ?」

「それもそうだ。もちろん、今回もきっちり応えるよ!」


 そう言ってノーラさんは、ぐ、と握りこぶしを作って見せる。

 かっこいいけどかわいい。

 何この二律背反な存在。

 いやでもこの島、カッコよくて可愛いとかいう人多いしな……。


「ふふ、ノーラさんがしっかり作ってくれないと、私の身が危ないからな」


 とか、カッコよくて可愛いの代表格であるゲルダさんが言う。

 

「……ゲルダさんだったら、大概の事でもぴんぴんしてそうな気がするのはあたしだけかな?」

「あ、それわかります」

「こら、二人とも。私だって不死身というわけじゃないんだぞ?」


 ノーラさんと私の会話に、ゲルダさんが割り行って来た。

 とはいえ、もちろん冗談めかした顔で。

 私達も、もちろん本気でそう思ってるわけじゃない。


 ……わけじゃ、ない。多分。

 お父様の拳を食らっても殴り返せるゲルダさんだけど、怪我なんてないのがいいに決まってるしね!

 怪我しないんじゃないかと思わなくもないけども!


 いずれにせよ、何事もないのが一番なのは間違いない。

 と、私が口を開こうとしたところで、ゲルダさんが何かを思いついたかのようにぽん、と手を叩いた。


「ああ、これで私が怪我をしたら、アーシャに責任を取ってもらうこともできるのか」

「はい!? いや、ちょっと待ってください、何言ってるんですか!?」


 慌てて私が声を上げるが、ゲルダさんは涼しい顔だ。

 そして私の隣でノーラさんもぽんと手を叩く。


「なるほど。あたしが作業中に怪我をしても、アーシャ先生に責任を取ってもらえると」

「だから、待ってください!?」


 いや、確かに二人に万が一のことがあったら、それは、それは……。

 だけど、それはどうかと思うしそんなこと今考えたくないし!?


 と、私があわあわとしていると、ゲルダさんとノーラさんは小さく吹き出して、笑いだした。


「ふふ、冗談だ、冗談。

 万が一そんなことになって、あなたを悲しませたくないしな」

「そうそう、アーシャ先生ってば、絶対自分のことそっちのけで、あたしらのことで泣くだろうからねぇ」


 二人にからかわれたのだと気づいて、私の顔に血が上ってきたのがわかる。

 べ、別に私、そんなことないんだからねっ!

 ……いや、でもそうかも知れないなぁ……自分を粗末にするつもりはないんだけど、どっちを優先するかと言われたら……。

 思わず納得しかけたところで、慌てて首を振って考えを払い飛ばす。


「そ、そんなことは、ど、どうでもいいんです!

 とにかく二人とも怪我無くが一番! 多少失敗しても、陛下ならお分かりくださいますから!」

「まあ、確かに、な。概念、理論の部分はもう問題ないし、陛下ならば、発展性まで含めてご理解くださるだろうし」

「それは間違いないよねぇ。つくづく、ここに来れて幸せだと思うよ、あたしは」


 ゲルダさんの言葉に、ノーラさんがうんうんとうなずく。

 実際そうだと、私も思う。

 私の今までのやらかしや、ノーラさんが遺憾なく発揮してきた技術は魔王様が受け入れてくれたからこそのもの。

 頭の固い国王や領主だったら、私のアイディアはもちろん、女性であるノーラさんが技術を振るうことにすらいい顔をしなかっただろう。

 存分に力を発揮できる今の環境は、ノーラさんにとってはさぞ幸せなんじゃないだろうか。

 

「じゃあ、その幸せな時間を、さらに幸せにするために、もう一頑張り、しましょう!」

「おうともさ!」


 そう言うと、私とノーラさんは、ぱちんとハイタッチを交わす。

 それからばっと二人同時に振り返り、ゲルダさんに向かって手を挙げて見せれば、ゲルダさんは両手をあげて。

 二人同時に、ハイタッチ。


「よぉし、じゃあ早速!

 街に戻って仕事してきますね!」


 私の言葉に、ノーラさんががくっと体勢を崩した。

 ごめんね、わかる、わかるんだけど、さ……仕方ないのよ……。


「ちょ、ちょっと、さっき王城から来て、またとんぼ返りなのかい?」

「あは、あはははは……新人さんの工房の進捗とか確認しないといけないので……」


 こないだ来た三人は、三人とも中々の腕だった。

 ちょっと私への信仰心が強すぎることを除けば、全く問題はない。

 むしろその一点が私にとっては大問題だが、薬師として活動する分には問題にならない。

 ということで、早期に私の元を離れて、街の各所に作られた工房へと移動する手はずになっている。

 で、そこの内装やら、薬草の在庫や配達ルートの調整などなど、私が色々チェックすることになってるんだ。


 ……仕方ないんだけどさ、私がこの島最古参の薬師だから、責任者扱いなんだよね……。

 たった数か月の違いしかないんだけどさ!? しかもこの肉体の年齢は最年少だぞ!?

 なんて訴えは、私の事情を知る魔王様に通じるわけもなく、すげなく却下された。


 確かに、自分で言うのもなんだけど能力的にもこの島での人脈的にも、私が適任ではある。

 だけど……なんか、どんどん色々背負い込んでいく予感がしてならない!

 けど、自分がやれることから逃げるわけにもいかない!

 おかげでこのざまだよ!

 まさか転生した先でもジャパニーズ社畜スタイルを貫くことになるとは思わなかったな!

 

 まあ、やりがいはあるし充実もしてるから、いいんだけどさ……。


「いやほんと、薬師の不養生にならないでおくれよ、アーシャ先生?」

「それは気を付けます。キーラに何飲まされるかわかんないし」


 私は遠い目になりながら、答えた。

 こないだ、薬草汁作ってたとこ見たんだよね……キーラ、自分で飲んでたんだよね……。

 キーラが顔をしかめながらも我慢して飲んでる姿は可愛かったけど。

 あれを私が飲まされるのは、正直ノーサンキューだ。


「でも、そんだけ心配されてるってことだかんね?」

「それも、わかってるんですよね~……」


 一部は一時的なものとはいえ、私の仕事は増える一方だ。

 そして、かなり忙しくあちこちに行かなければならないことも多い。

 長距離はともかく、街中だと毎回ゲルダさんにお願いするわけにもいかないし。


「まあでも、それももうちょっとですよ」


 色々と、解決する、はず。

 そのために、今がんばっているのだから。

 だから私は、ノーラさんに向かって力強く笑みを見せた。

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