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意外? な特技

「それで、今日はミスリル銀の製錬方法を教えていただきたいのですけど……」


 あの後。なんとか二人をなだめて、ドミナス様の部屋へと移動した。

 まあ、移動の際には私が真ん中で右手をドミナス様とつなぎ、左手はさりげなくドロテアさんの右腕に組まされていたのだけど。

 うん、それ自体は嫌じゃないし、むしろ光栄だと思うのだけどさ。

 お城のメイドさん達の視線がすっごく気になった。


 ひそひそと遠巻きに噂する、っていう感じじゃなくて「ああやっぱり」とか「いつものこと」って感じの視線だったから。

 そんなにいつもこんな感じじゃなかったと思うんだけどなぁ!?


 でも、直接言ってこられるわけでもないから、弁明する機会もなく、そのままずるずるとドミナス様のお部屋へと連れ込まれて、今。

 私は今日の目的をやっと伝えることができた。

 とは言っても、事前に一度伝えてはいるんだけどね。


「ん、話は聞いている。

 ……ゲルダのご両親に挨拶したことも」

「待ってください、なんでそこまで聞いてるんですか!?

 今日の本題と関係ないですよね!?」


 ドミナス様の返事に、私は思わず声を上げた。

 え、つい昨日の話だよね、それ!?


「だって、ゲルダが妙に浮かれていたから。

 聞いたら、色々白状した。

 ……むかつくくらいにもじもじしてた」

「最後の感想は、できれば心の中にしまっておいていただきたかった!」


 淡々と、でも時折嫉妬のようなものを交えるドミナス様はちょっと可愛い。

 でも、できればそこは堪えていただきたいっ!


 ちらり、ドロテアさんを横目で伺うと……あれ、思ったよりも気にしてないっていうか冷静だな……?


「まあまあ、ドミナスもそこまでにしておきましょう?

 ここで、役立つところを見せつければいいんですから」

「それもそうだね……。私にできないことはあんまりないし」


 ドロテアさんのフォローに、気を取り直したみたいだ。

 でも……『魔術の領域で』っていう枕詞がなくなってるんだけど、大丈夫なのかな!?

 いや、実際魔術を駆使したら大概のことはできちゃいそうな気もするんだけど、さ。


 それにしても。


「では、早速お願いしたいところなんですけど……。

 その、ドロテアさんがいらっしゃるのは、どうしてなんです?」


 もちろん、居ること自体は歓迎なのだけど、お仕事大丈夫かな? という心配が先に立つ。

 詳しくは知らないけど、相当な仕事量だろうし。割かし私のせいで。


「ん、私一人でもできるのだけど、ドロテアがいた方が楽」

「楽、なんですか? それはまた、どうして?」

「ふふ、言葉で説明するよりは見てもらった方が早いでしょうね」


 そう言いながら、ドロテアさんは部屋の隅に大量に置かれた石へと向かう。

 今この部屋には、大量のミスリル銀鉱石が置かれていた。

 これは、スカイドラゴン族や眷属の皆様がえっちらおっちら運んでくださったもの、らしい。

 さすが風竜王ゲルダさん、素晴らしい統率力。

 そして、すっごく申し訳ない。いや、皆さんのお役にも立てるようにするので、それで勘弁いただきたい!


 などと思っているうちにドロテアさんは大量に積まれた石の元へと歩み寄り、それに手を触れた。


「では、よく見ていてくださいね?」


 ドロテアさんが微笑むと。

 うぁん! といった、表現しがたい、何かが吠えるような不思議な音がした。


 そして次の瞬間。

 大量に積まれていた鉱石が、粉々に砕け散った。全て。


「……は、はい!?」


 私は目にした凄まじい光景に、思わず上ずった声を上げる。

 そんな私の反応に、ドロテアさんは満足そうだ。

 ……普段見ない顔だけに、ちょっと、いや、大分可愛い。


「ふふ、これが、私が呼ばれた理由です」

「別に私の魔術で砕いてもいいのだけど、ドロテアにやってもらった方が早いから」


 ドミナス様は、淡々と。若干、不満というか拗ねたような感じもするのは気のせいかな?

 できないことはあんまりないドミナス様だけど、多分ドロテアさんぐらいの人が得意な分野だと、一歩譲る場面もあるのだろう。

 それにしても、これは……やっぱりドロテアさんもチートな人だった! と思いつつ。

 でも、今のはちょっと納得したところもある。


「えっと、もしかして今の……振動、ですか?」


 私の問いかけに、二人の動きが止まる。

 それから、まじまじと私を見つめてきて。


「そう、ですけど……どうして、わかったんですか?」

「あはは、前から、もしかして振動に関わる能力持ちなのかな、って思ってたので」


 私の返答に、二人はちょっとびっくりした顔になる。

 でもさ、最初に会った時、ドロテアさんって私の脈拍とかを非接触で把握してたんだよね。

 ってことは、何某か振動に関わる能力を持っているのかな、っていうのが一つ。


「それから、今の音。聞いたことのない音でしたけど……音って、何かが震えることで生じるものですから。

 だから、あの鉱石を高速で振動させて砕いたのかな、って」


 もちろん、なんでそんなことができるのか、まではわからない。

 多分魔力とかそういうものが絡んでくるんだろうけどさ。

 物理的な面に関しては、多少の推察はできるものだ。

 私の説明を聞いても、二人は驚いた顔のまま。


「……アーシャは、そういう発想をどこから得ているの?」

「あ~……ええと、前世で見聞きした物語とかでそういうのがありまして」


 ドミナス様の質問に、若干曖昧な答え方をする。

 ま、まさかバトル系漫画で見ました! とか言って理解してもらえるわけもないし。


「そんな物語が……アーシャの前世の世界、恐るべし」

「あはは、そうかも知れませんねぇ」


 オタクだから知ってました! って言われてもドミナス様も困惑するだけだろうから、そこは伏せる。

 私の説明に、ドミナス様は一応納得はしてくれたみたいだ。


「少し残念ですね、種明かしをして驚いてもらおうと思ってたのですが」

「あ、でもでも、凄い能力だと思いますよ! あれだけの鉱石を一気に、ですもん!」


 ドロテアさんに、そんなフォローを入れる。

 これは掛け値なしにそう思う。

 一体どれだけのエネルギーがあれば、こんなことができるのか、とても想像がつかない。

 おまけに多分、かなり無駄なく振動が伝わったはずだ。


「もしかして、振動の伝わり方とかもコントロールできるんですか?」

「もう……私が説明することがないじゃないですか」


 あ、拗ねた口調のドロテアさんも可愛い。

 なんだか今日はドロテアさんの新鮮なとこを一杯見るなぁ、なんて呑気なことを思っていたんだけど。


「そう、そこまでコントロールすることができるんです。

 ……だから、人間の身体を、一部だけ、良い感じに振動させることもできるんですよ?」


 そう言いながら見せたドロテアさんの笑みは、すっごく意味ありげで艶っぽいもの。

 身体を、一部だけ、良い感じに? え、ちょっと。


「え、まさか、そういう使い方も……?」

「あら、どういう使い方なんですか? 私に教えてくれます?

 できれば、二人きりの時に」

「はい!? い、いや、それはその、や、からかわないでくださいよぅ!」


 多分、本気ではない。今は。

 でも、いずれは本気でそれを向けてきそうな気がしなくもない。

 

「どういう使い方なの?」

「ふふ、ドミナスにはまだ早い使い方ですよ」


 不思議そうなドミナス様を、ドロテアさんは軽くあしらった。

 うん、そうだね、ドミナス様はまだそのままのピュアな天使でいて欲しいな……。

 色々穢れた魂を持つ私は、そう願わずにはいられなかった。

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