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戦い終わって、昼過ぎて

 さて一段落して、お昼はどうしようか、と思っていたところだった。


「毎度~っ! ああ、ちょうどいいタイミングだったみたいだねぇ」


 そう言っていきなり入ってきたのは、エルマさんだった。

 はい? はい? なんで??

 とか思ってる間にもずかずかと入ってくる。

 手には何やら籠を持って。

 ……え、まさか??

 思わず、ゲルダさんの方を見る。


「ああ、随分と忙しそうだったから、食事を作る気力もなくなってるんじゃないかと思ってね。

 エルマさんに出前をお願いしてたんだ」

「な、なる、ほど……?」


 いや、いつの間に?

 だって、ゲルダさんも合流してからは結構せわしなく動いてたよ?

 あれか、水道水汲みに行ってた時か!?

 それか、合流する前か!?


 う~む、恐るべし……でも正直、助かったのも間違いない。

 ここはありがたく受け取っておこう。


「じゃあ、お昼にしましょう。

 えっと、エルマさん、こっちに運んでもらえますか?」

「あいよ、こっちだね」


 と、まずはエルマさんをダイニングに案内して。

 それから、とりあえずの飲み物としてレモン水を朝の要領で作っていく。

 ……その間にゲルダさんが支払いを済ませていた……ちくせう、そつがないなぁ。


 ともあれ、取り急ぎの食事の準備はできた、ことにする。


「毎度あり! ああ、夜はまた食べに来るのかい?」

「あ~……多分、また伺うと思います」


 正直なところ、午前中のこの忙しさに午後からの予定を考えると、ご飯を作る気力も体力も無くなってる可能性が高い。

 であれば、素直に言ってしまった方がいいだろう。エルマさんなら気の利いたものを用意してくれそうだし。


「あいよ、美味い物用意しとくから、楽しみにしてなよ!」


 そう言って、エルマさんは帰っていった。

 う~ん……気風がいいなぁ。ああいう人は、正直憧れる。

 私も、かっこいい大人になりたいなぁ。……いや、精神年齢はとっくに大人になってるはずなんだけどさ。


 などと内心で思いながらも、まずは今すべきことをしないとね。

 すなわち。


「じゃあ、キーラ、ゲルダさん。ご飯、食べましょう!」


 私は元気よく、そう告げた。




 エルマさんが持ってきてくれたのは、サンドイッチ。

 うん、この世界に多分サンドイッチ伯爵はいないから、そう変換されたものだ。

 ついでに、実はサンドイッチ伯爵がサンドイッチを発明したのは違うんじゃないかって説もあるらしいけど……まあ、それはそれとして。


 それをありがたくいただき、レモン水で流し込む。

 はぁ……体に、染みわたる……栄養が吸収されていく感じがする……。

 いや、実際に吸収されだすのはもうちょっと後から、っていうのはわかってるんだけど。


 ともあれ、水分をしっかり摂ること自体は大事なことだ。

 後、大事なこと、と言えば。


「じゃあ、午後からの予定なんですけど。

 キーラ、あなたに重要任務を授けます!」


 キーラがちゃんと飲み込み終わったのを見計らって、そう声をかける。

 言われたキーラは、びっくりして肩を竦めながらも、こっちを見てくれた。


「う、うんっ、何?」


 凄く真剣な表情で、こっちを見てくれる。

 うん、午前中の仕事で自信を持ってくれたのか、目の輝きが違う。

 でもね、それだけに、やってもらわないといけないことがあるんだ。


「まず、しっかりご飯食べて。

 それから、午後はお昼寝して、体力を回復させてちょうだい」

「え? ……えええええ!?」


 うん、びっくりするよね、そうだよね。

 でもほんとに、重要な任務ではあるのだ。


「まず、今日の状況を見るに、キーラがいないとここは回らないの。それはわかったよね?」

「えっと……私、役に立ってたってこと……?」

「それはもう! 私一人だったら、絶対この時間に終わってない」


 これは、本気で断言できる。

 キーラの聞き取りのおかげで、私の診察は相当に軽減できた。

 その上、あれやこれやと雑用的な仕事を、文句ひとつ言わずにこなしてくれた。

 それだけで、私の負担がどれだけ減ったことか……。

 

 しかも、それだけじゃない。


「おまけに、やっぱりキーラの『脱水』は凄かった。

 あれのおかげで、すぐに薬作れたしね」


 これもそう。件のキノコだけでなく、他の薬草も乾燥させた方がいいものがあり、それも即座に乾燥してもらえた。

 おかげで、出せなかったはずの薬を、今日どれだけちゃんと出すことができたか……。


「ほんっとに、キーラのおかげで今日はすっごく助かった。

 ありがとう、おかげでちゃんと薬師として働けたよ」


 そう言って、頭を下げる。

 ……あれ、キーラの反応がないな? と思って顔を上げたら。


「わ、私っ、私ぃ……」


 あ。そ、そうだよね、キーラの性格だったらそうなっちゃうよね!?


 感極まったように涙ぐんでるキーラを、ゲルダさんと二人がかりで慰める。

 ……うん、ハグしたりしてたのは、慰めるための正当な行為だからね?


 ごほんごほん。


 とにかく、そうやってしばらくしたらキーラも落ち着いてきた。

 そこでまた、説明を続けていく。


「で、明日以降もキーラの『脱水』は重要だし、何より、明日からは確実に『脱水』の使用回数が増えるの。

 やりたかったことを、明日からすることになると思うから。

 だから、キーラは今日しっかり休んで、体調を整えるのが重要な仕事なのよ」

「休むのが、仕事って……なんだか変な感じ」


 うん、まあ、それはそうだと、思うのだけど。

 ちらり、ゲルダさんの方を見てみた。

 ……心得た、とばかりに小さく頷いてくれるのが頼もしいなぁ、ほんと。


「休むのが仕事、というのは本当の事だ。

 軍でもそれは徹底されている。行軍訓練の時など、定期的な休憩は必ず取らされていたしな」

「そ、そうなんだ……軍でも、そうなんだ……」


 ゲルダさんにまで言われたら、流石にキーラも納得したらしい。

 っていうか、やっぱり軍の活動に休憩もしっかり組み込んでるんだ……さすが、魔王様……。


 ……なんだか、魔王様に世界支配してもらった方がいい気がしてきたぞ?

 まあ、あの性格だったら、そんなことはしたがらないだろうけど……。


 それはともかく、今はキーラに納得ずくで休憩してもらうのが最優先事項。


「ということで、仕事として、きっちり休んでね。

 私はこういうのに慣れてるから、まだ大丈夫だけど。キーラは大分疲れたでしょ」

「それは……えっと、そう、だけど」

「うん、だから、しっかり休んで。キーラが休んでくれたら、私も安心できるからさ」

「うう……わかった……」


 我ながら、キーラの性格につけこんだ狡い言い方だとは思うけど。

 でも、キーラは納得してくれたから、まずはいいとしよう。


「ゲルダさんは、すみませんけど、約束を取り付けてくださった皆さんのところに、案内をお願いできますか?」

「ああ、もちろん。ただし、あなたもちゃんと食事は摂ること。いいね?」

「あ、は~い、それは、ちゃんと食べますっ」


 ゲルダさんを誤魔化せるとも思えないし。

 私は素直に頷いて、サンドイッチにかぶりついた。

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