終焉を生き残りし竜騎兵装 ニーズヘッグ
第84話〜終焉を生き残りし竜騎兵装 ニーズヘッグ〜
「ありえません」
そう計算され尽くした心の中にはイレギュラーの発生と共に、己の王は現れることはありませんでした。
ましてや計算や儀式の手順を間違えた訳でもありません。
また器であるマスターに不備があった訳でもありません。
しかし予定通りであればマスターは今は亡き竜王として目覚めるはずでした。
にも関わらずマスターは自我を保ち、竜化を解いていた。
目の前ではボロボロになった二人は抱き合い、お互いを支えるように飛行船へと避難していきます。
その時、私は俄然マスターに興味が湧きました。
我が王を否定し、己を勝ち取ったマスターに。
そしてその希望となったあの愚かな竜の王女に。
ーーー
数千年前。
私、ニーズヘッグは竜王が統治する国で作られた兵器でした。
生み出された瞬間から兵器であった私は、竜王国最強の竜として他国にその脅威を知ら示していた。
しかし私に心というものを与えてくれた人がいたのです。
それは当時竜王国、国王であったジークフリーデ王と王妃ジーククリンデというこの世で最も貴いお方です。
我が王はとても平和的思考の持ち主で、争いを好まない性格上、好戦的な種族であった竜人種たちからは臆病な王と呼ばれておりました。
当時の私は兵器であり戦いがすべてであったが、二人の護衛として旅をした時、その生まれわかるチャンスは訪れたのです。
王と王妃は人に化け、人種を助け、また様々な種族に手を貸していたのです。
そんなことは無意味だと当時の私は思っていました。
馴れ合いなど弱者のすることであり、強者は強者であり続けることがすべてだと、そう思っていました。
しかし現実は変わったのです。
私は目の前にした光景は異種族の生物同士で笑い合い、共に食事をし、危険があれば助け合うそんなものを見せられた時、私は一つの感情を覚えたのです。
それは孤独でした。
今まで戦い、敵を殺すことだけを考えてきた自分がそんな世界には必要ないように思えたのです。
生まれてくるべきではなかった、そういう孤独が私を襲ったのです。
またそれは初めての恐怖でもありました。
仲間の居ない世界がこれ程までに苦しいものなのだと機械仕立ての心には酷く響くのです。
するとそんな私を、王や王妃は必要と言ってくれたのです。
それがどれだけ嬉しいという感情を作ったのでしょう。
それより私は交戦を控え、できるだけ血を流さない方法での対処が最善だと考えるようになったのです。
旅は無事に終わったが、王や王妃は相変わらず私にこう言い聞かせるのです。
「ニーズヘッグ、お前は優しい心を持った者だ。だからこそ強者は弱者を守りなさい。そしていつの日かお前を助けてくれる人が現れることを願って......」
この言葉は王が私と会う度に言っていた言葉でした。
しかし私の制御機関がこれを排除しようとするのです。
ある科学に通ずる者は私にこう言うのです。
「お前は兵器だ。この世が終わってもお前は兵器であり続けろ」
それは私を作った者の言葉です。
酷く冷酷な言葉だと感じることもできるが、これが私であり、存在意義でもあったのですから。
しかしそんなある日のこと......。
他国との戦争が始まり、私は王を信じ、戦うことを控えておりました。
今までは敵は容赦なく命を奪っていたが、無抵抗な者や命乞いをする者には手を加えませんでした。
勝敗はもちろん私の国の勝利に終わったが、被害や損害自体はお互いあまり受けてはいない状況で終わったためか、敵国はこちらを同等だと勘違いをし、五分五分の条約を渡して来たそうです。
それに対して国王はすぐに返事を書いてしまい、そこから国民の不満は爆発しました。
元々好戦的な者が多く、誇りや愛国心などといった忠誠心が高いことから五分五分と舐められたような状況には耐えられなかったのでしょう。
街では暴動が起き、派閥争いなどの関係上、国は割れてしまい、その責任は王にあるとして、愚かな竜どもは王とその一族を処刑したのです。
それを知ったのはすべてが終わった後のことでした。
そう既に遅すぎたのです。
私という護衛がありながら何も守れなかった。
すべてを失ったことから喪失感というものを学び、そしていつの間にか怒りに変わり、醜い復讐心へと変わっていったのです。
私は......祖国を滅ぼし、世界に終焉をもたらした最悪の竜。
その名をニーズヘッグ・アルビオン。
真っ赤に変わった装甲や体には血や涙がこびりついており、その嘆きは決して落ちることの無いものに変わり、そしていつの日かあのお方との再開を夢見て......。
ーーー
現在〜。
「ああ、そういうことだったのですね。ニーズヘッグ、いえ心優しき竜よ」
それはかつて弱者を守ったであろう心優しき竜の残骸。
機械仕立ての心には醜い復讐心で満たされていたはずが、いつの間にかマスターを自分に投影し、同じ運命に身を投げないよう仕向けていた。
すべては自作自演であり、今の私には不要と切り捨ていたもう一つの自分。
「保存ファイル名、アルビオン。弱者のための正義。......理解不能、今の私では許されないでしょう。しかし......マスターを救ったのも、私の計画を邪魔をしたのもすべては自分ですか......。我ながら愚かな竜でございますね。私は......。ですが我がマスターを救ったことは感謝しなければなりませんね」
そう言って私は再び復讐という名の仮面を被るのでした。
ファイルに閉じられた優しさを理解出来ぬまま。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
毎度のこと今週も更新の時がやってまいりました。
さてさて今回はどうだったでしょうか?
少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!
最後に感想とブックマーク、そして評価(☆☆☆☆→★★★★)をしてくれると、大変喜びます!




