竜の姫
82話〜竜の姫〜
体感の時間と実際の時間の流れは違う。
そう体感では長時間戦闘が続いていたきがするが、実際は三十分弱程だ。
その間、竜騎兵隊の六割は海の藻屑となって今頃自然の餌となっているだろう。
また青空は輝いて見えるが、海は黒く淀んで見えた。
飛行船に乗っていたメリーヌはおそらく万策尽きた様子で指を咥えている様子が想像できる。
しかしこれ以上邪魔されても面倒なので飛行船の飛行能力を奪い事にした。
「マスター! 飛行船も落としてしまった方が楽ですが、本当に飛行能力を奪うだけでよろしいのですか?」
「構わないよ。でもこれ以上の犠牲は無意味だ」
「そうですか。......ではマスターのご希望通りに実行いたします」
ニーズヘッグはそう言うと圧倒的なスピードで飛行船の真上に移動し、飛行船の動力源を奪っていく。
飛行船能力を奪われた飛行船は予想通り海へと落ちていく。
ゆっくりと落ちていくようでものすごい落下スピードなのだろう。
そして海に着水すると同時に飛行船からは、居場所を奪われた虫のようにわらわらと這い出てきたのだった。
「俺は早く帝国に......」
俺はそう思い、再び帝国を目指そうと振り返ったその時だった。
「ヨグ、君にはこれ以上進ませる訳にはいかないんだ。強引んだけど悪いね」
そう言った声はとても近くで聞こえてきた。
すると目の前には先程まで飛行船にいたはずのメリーヌの姿があった。
「メリーヌ......まだ邪魔をするのか。それにその姿......」
「私だって竜の血を引く者。竜騎兵装くらい扱えるんだよ、ヨグ!!」
俺が睨みつける先には竜騎兵装に身を包んだメリーヌの姿があった。
その竜騎兵装は竜騎兵隊の使うものとは違って見たことのない形をしており、ニーズヘッグにどことなく似ていた。
言わばニーズヘッグの模造版のようであった。
「俺はメリーヌまで失いたくないんだ。だから......だから邪魔をしないでくれ」
「安心してよヨグ。私は死なないよ。だって君を止めに来たんだからね」
「じゃあ帰ってくれ。俺は帝国を滅ぼすだけだ」
「関係の無い人を巻き込んでもかい?」
「ああそうだ、俺は大切なものをこれ以上失いたくない」
「それは私も同じだよヨグ。私は君を失ってしまうと思うと怖くてたまらないんだ。ほら、今も震えが止まらないよ。でも君が帝国を焼いてしまえばおそらく君の自我は崩壊する。だから私は君を通すわけにはいかないんだ」
「あああ、なんでわかってくれないんだメリーヌ」
「大丈夫だよヨグ。私が今助けるから.....」
「邪魔を......スルナアアアアアアア」
竜の大きな雄叫びは空気を振動させ周囲に響き渡っていく。
星空の呼び声のようにそれは曇った声に聞こえ、現実と幻想が曖昧になっていくのだ。
間違っているものも判断できないほどに竜に溺れて堕ちていく。
そんな竜に立ち向かうメリーヌとの戦闘が始まった。
「ウガアアアアアア!!!」
炎のブレスを空中に撒き散らし、荒れ狂う波のようなその姿に人々は恐れるだろう。
しかしメリーヌだけは違った。
彼女の目はそんなものを写しているのでは無く、その根本にある弱々しいものを見ていた。
「私のヨグを返してもらうよ!!」
メリーヌはブレスをギリギリで避けていき、竜の翼を切り裂いたのだった。
竜は片羽を失うと同時によろめきを見せたが、すぐさま羽が再生し、青白い液体がぼとぼとと垂れていた。
メリーヌの持つ剣にも付着しており、微量ながら魔力が宿っていた。
「やっぱり再生するよねッ!」
メリーヌは何度も羽の破壊を繰り返すが、羽は再生する度にその強度を増していた。
しかし再生にはかなりの体力を消耗するのだ。
長期戦になれば俺も危ういかもしれないな。
「くっ! 硬い!! でもまだまだッ!」
メリーヌは魔力を武器に纏わせ、切れ味を補強する。
おそらく再生する度に強度が増しているとバレたのだろう。
そうなれば彼女がとる行動は短期決戦であるはずだ。
俺はそんな彼女の攻撃を躱すように立ち回った。
多少羽にダメージを与えられたが、飛べない程では無い。
するとメリーヌは更に魔力を使い、今度は加速して回避できない連撃を繰り出した。
「大丈夫、逃がしはしないよ!!」
羽への集中攻撃でものの見事にボロボロとなってしまった。
俺の身体が海に向かって落ちていくのだった。
ああ、再セイが間にアワナイ。
「ヨグ......これで終わりにしよう!」
そう言ったメリーヌは全力の魔力を注いだ一撃を構えていた。
俺が海に落ちればメリーヌの追撃がきて、この身体は持たないだろう。
そう思った時だった。
「マスター......遅くなりました」
「なっ!?」
「飛行船は全機墜落。竜騎兵隊の壊滅を確認。......残り一名の適性存在確認......排除致します」
「こんな時まで邪魔をするのニーズヘッグ。いやアルビオンの亡霊ッ!! これ以上お前の復讐にヨグを巻き込まないでくれないかな?」
「否定。私はマスターの意志に従うのみ」
「そう仕向けたんじゃないか! 君の存在はお母様から聞いたよ。過去の異物が彼を巻き込むなッ!!」
「これ以上の会話は無意味と判断。貴方には退場してもらいます。 私の存在を知っている以上、余計な事をされても困りますので」
「ちっ!! なら君は僕が破壊してあげるッ!!」
すると鉄と鉄がぶつかるような音が周囲に響き出したのだった。
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