夫婦喧嘩
第81話〜夫婦喧嘩〜
数百を超える魔法による砲弾は俺の体に当たるが、その全ては意味をなさない。
硬い鱗で守られたこの体はそう易々と突破されるものではなかった。
なのでほぼ無視するように俺は帝国を目指し飛んでいくのだった。
またニーズヘッグは流れ弾を華麗に避けながら気にもしていない様子。
俺が敵と認識した対象以外は敵としないのだろう。
しかしそんな時だった。
「今だ!! 対巨龍種用拘束具用意......放てっ!!」
砲撃が止むと同時に、周りに迫っていた竜騎兵隊が俺の体に何やらワイヤーのようなものを突き刺し、およそ二十本ほどのワイヤーが体にまとわりついていた。
「うっ、動けない」
竜騎兵装の推力によりワイヤーが引っ張られ、まるで獰猛な獣を従わせるように体が思うように動かなくなる。
「マスター、今拘束具を切断します。おっと、邪魔が入るようですね」
ニーズヘッグがワイヤーを切断しようと試みるが、他の竜騎兵に邪魔をされてしまう。
俺は身動きが取れず、飛行自体に問題はないが前には進めない状態であった。
「竜騎兵隊一番隊! 対象ニーズヘッグと接触!!」
飛行船内では通信魔道具による内線が繋がっており、おそらくニーズヘッグと戦闘になるのも折り込み済みなのだろう。
俺はメリーヌに視線を移すと、彼女はやってやったと言わんばかりの表情を見せていた。
しかし本当にこれで俺を拘束できたと思っているのだろうか。
だとしたらその認識の甘さがその計画を破綻させるのだ。
「ごめん、メリーヌ......」
そう呟き俺は肺に空気をため、喉にある熱線により灼熱の炎を生み出し、それをワイヤーのついている体に吹きかけた。
予想通りワイヤーは熱に耐えきれずそのすべてが灰となって海に落ちていった。
拘束から解かれた俺は再び前に進もうとするが、どうやら余程俺を止めたいらしく、今度は多くの竜騎兵が武器を向けてきた。
「竜騎兵隊、立ち向かってくるのはいいが死ぬぞ?」
そう忠告するが、一歩も退かない竜騎兵隊を目の前に俺は正直がっかりしてしまう。
相手の強さも分からぬ愚か者だとは思いもしなかったからだ。
しかし同胞を手にかけるというのは心が痛むだろうが致し方ないことだ。
恨まれたとしても俺は奪われたものを奪い返す以外にやり方をしらないのだから。
ーーー
そこからは無意味な戦闘が続いた。
竜騎兵は俺のブレスの前に無力であり、その被弾した多くが海へと落ちていく。
仲間の仇と言わんばかりに突っ込んでくる馬鹿も入れば多少腕の立つ奴もいるが、そのすべてが無意味であり、無惨に散っていくのだった。
ニーズヘッグも俺が竜騎兵隊とその飛行船を敵として認識したと同時に攻撃を開始した。
一番隊をいとも簡単になぎ倒し、今は飛行船を落としにかかっている。
そのスピードと攻撃力に耐え切れる竜騎兵は存在しない。
飛行船もバリアのようなものを貼っているが紙のように破られ落とされていく。
ああ、一体何人の命が無駄になったのだろう。
すべては俺が選択した未来で、望んでいたかどうかは関係ない。
すべての運命は残酷だ。
メリーヌは必死に指示をだし、あらゆる手を使ったいるが自体の解決にはなっていない。
もっともな解決法は初めから関わらないことであっただろうに。
そうして戦闘は続いていくのだ。
そう、どちらかが折れるその時まで。




