燃える夏の日に飛んで火に入る者
第79話〜燃える夏の日に飛んで火に入る者〜
夏休みは本来、楽しい記憶でいっぱいのはずが俺は違う。
両親を失い、幼馴染を失った最悪の記憶のみが存在していた。
沙鳴の家は放火魔による放火で全焼し、二回には一人の少女の遺体だけが見つかった。
もちろんそれが誰のなんて言う必要もないだろう。
しかし沙鳴の両親は俺を恨んでいただろう。
なぜと思われるかもしれないが、放火魔が誰か分からない以上、疑われるのは俺だった。
警察の取り調べも受けて無実が証明されてもなを、その恨みは晴れることはなく、俺は沙鳴の墓参りすら叶わなかった。
彼女の両親は俺を見るや否や睨みつけ、帰れと大声で騒ぎ立てるのだ。
俺はその場から逃げてしまった。
そうして自分に蓋をするように生きる他なかった。
だがこの記憶にはまだ続きがある。
それは夏休みの終わりかけ、傷心しきっていた俺は街中を歩いていると、同じ学校の不良グループに出くわす。
彼らは不良グループの中でも特に凶悪らしく普通に犯罪まがいなことをやっている。
そんな彼らはコンビニ近くでたむろしており、俺は関わるまいと息を殺してコンビニに入ろうとしたその時だった。
「なあなあ、次は田中の家燃やさね? アイツ調子乗りすぎ」
「おっ、いいじゃん! どうせ警察もうちの組にはなんも言えねえしよ。どうせ放火魔とか何とか言って終わるんだ」
そう言って笑い合う四人の会話を耳に挟むと、俺はいてもたってもいられなかった。
俺は振り返り、狂ったような血走った目を向けると、さすがの不良グループも黙り込んでしまったのだった。
「なあ、犬崎沙鳴って名前......知ってるか?」
そう言うと四人は顔を見合わせてニヤニヤと笑い、自慢げに話し出すのだった。
「あっ、ああ、知ってるぞ? だからどうした? ってか! お前誰だよ! 」
「はぁ〜、そんなことどうだっていいだろ? お前らこの間の火事のことなんか知ってるよな?」
そう言った後俺は記憶がなく、気づけば不良グループは鼻から血を流し倒れていた。
胸ぐらを掴まれているグループのリーダー的なやつは怯えながら目に涙を浮かべて、必死に殺さないでと懇願していた。
しかし殴るのをやめない俺に、目の前の人間は丸くなって身を守ろうとしていた。
コンクリートの地面に頭を叩きつけられ、軽い脳震盪を起こし、意識がもうろうとしているのか足元がふらついている。
気がつけば周りにはパトカーが来ており、俺は三度目の取り調べの末、過剰防衛による注意を受けるだけで済んだ。
しかし不良グループらは四人全員が放火をしたと認めたらしい。
その時の様子は知らないが、噂で聞いた話では心が壊れ放心状態であったそうだ。
これにて犯人を捕まえ、ハッピーエンドを迎える。
そんなはずは無い。
失ったものは二度と戻らず、それは心も同様だ。
俺は少なくとも三人を間接的に殺し、六人の人生を壊した。
そして同時に俺は自分を殺したのだ。
自殺なんて生ぬるいものじゃない。
いや自殺をバカにしている訳でもない。
これは俺の弱さや愚かさが招いた結果に過ぎない。
だからこそ今回も奪うのだ。
奪われた何かを取り戻すために、地獄の獄炎に身を投げる覚悟が必要だ。
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