再誕者
第77話〜再誕者〜
翌日、俺はメリーヌに呼び出されていた。
朝目覚めたがリリィーは帰っておらず、メリーヌの使いから庭に来るよう指示されていた。
朝食と着替えを終え、身だしなみを整えたらすぐにメリーヌの元に向かうのだった。
相変わらずこの裏庭にメリーヌは佇んでいる。
監禁が解けてもなお、ここの居場所に愛着が湧いているのだろう。
青い薔薇が何本も咲き、花の匂いはメリーヌと同じ匂いを纏っていた。
俺が挨拶をするとメリーヌはピクリと尻尾を動かして、持っていた紅茶のカップを机に置いてニコっと笑ってみせる。
しかしすぐにその表情は変わり果て、真剣な眼差しでもう片方の椅子に座るよう指示してきた。
「ヨグ、朝早くからすまない。でも大事な話しがあるんだ」
「ああ、それはいいんだがリリィーがまだ帰ってないんだ。多分仕事が忙しいんだろうけどね」
「っ......」
俺がそう言うとメリーヌは険しい顔をして、一息つくように間を開けた。
そしてメリーヌが口を開くと同時に俺の耳には聞きたくない事実が告げられるのだった。
「ヨグ、落ち着いて聞いて欲しい。昨日、例の件の海域でリリィーの竜騎兵装の残骸が発見されたんだ。
調査隊は捜索を続けてるけどリリィー本人以外の死体は発見された」
「......」
「でもきっと大丈夫。まだリリィーの遺体は見つかってないし、おそらくどこかに流れ着いて!!」
ドンっ!!!!
叩きつけられた拳からは血が滲み出ており、机にはヒビが入っていた。
「ヨグっ、落ち着くんだ! まだリリィーは死んだ訳じゃっ......」
「誰だ......」
「えっ? 」
「誰がリリィーをやったんだ......」
「わ、分からないけど他の竜騎兵装に付けられた記録石には急に襲われたような通信が残されていたらしい。状況から察してもリリィー以外は全員、すぐに殺られたんだと思う」
メリーヌはそう言って俺の右手に手を当ててきた。
力は強く決して離さないと彼女なりの決意にも感じた。
しかしそんな現実も忘れて、俺は復讐鬼に取り憑かれたように殺意と怒りで満ちていた。
メリーヌもその様子を察しているからこそ俺がどこにも行かないように手を握ったのだろう。
大切な存在を失ったという喪失感はもちろん心の底にあっただろうが、それよりも認めたくないという否定が制御を効かない。
そして俺はメリーヌの手を払い除けるのであった。
「まっ、待ってヨグ!! 頼む待ってくれ! どこに行くんだヨグ!! ヨグっ!!! 待って......」
「ごめん、メリーヌ」
それだけを言い残し、俺は裏庭から出ていくのであった。
メリーヌは俺の魔力が感じられなくなり、涙を流しながら懇願していたが、そんなものすら俺を止める理由にはならなかった。
ニーズヘッグが言っていたじゃないか、選択すればもう二度と戻れない。
これが俺の決断であり、地獄への片道切符であった。
ーーー
あの後、すぐに王都を出た俺はニーズヘッグに乗り込み、例の場所へと向かっていた。
もう少し遅かったらメリーヌが王都を封鎖していただろう。
幸い騎士団の包囲網が敷かれる前に出れたので、今は追っても来てはいなかった。
「ニーズヘッグ、適性反応は見つかったか?」
「はい、ここから約数キロ先に潜伏している竜騎兵を発見。あれで隠れているつもりなのでしょうか」
「場所に着き次第、戦闘に突入する。容赦は......しない」
「了解、マスター」
ーーー
帝国と王国の国境にある海域では負の感情が波となっていた。
そこには秩序も正義もなく、あるのは潮風の音と不協和音のような魔力が漂っているだけであった。
そして火に油を注ぐように、復讐鬼はその引火剤を手元に魔力という魅惑の香りを放ち続けていた。
それは選択をした結果であり、自らの身体などどうでもよかった。
これをだしに狙いが釣られてくれるならこちらとしても願ったり叶ったりである。
すると獲物は予想通りこちらの存在に気づき、見つかっていないと自負し、自ら蟻地獄に入ってきたのであった。
「出てこい!!!」
魔力の波動を放つと、周囲に広がっていき、隠れていた竜騎兵は姿を現したのであった。
「ひひっ、あなたすごい魔力。もしかして黒騎士様?
白い竜騎兵の中には、どす黒い魔力を持つ女性が乗っていた。
こいつがリリィーを殺した張本人で間違いなかった。
すると俺の中では怒りや殺意と言ったものが吹き出るように湧き上がった。
怒りのピークは六秒とされているが、今の俺にそんなものは存在しない。
ただ相手をどう殺すかということ以外は考えられなくなっていた。
「お前が......リリィーを.........」
「ひひっ、りりぃー? ああ、あの赤い竜騎兵か。それなら海の底にぶっ!!」
白い竜騎兵は顔面に強い衝撃を受け、海面へと叩き落とされていた。
海から這い上がると顔面には鼻血でぐしゃぐしゃになっており、目には涙を浮かべていた。
「へぇ〜、人を殺すのに躊躇いのないやつが人間みたく痛がるなよ。さっさと抵抗しないと殺すぞ」
「ひっ!!」
白い竜騎兵は理解したのであろう。
自分は今殺されかかっていることに。
強者というのは長い間、敵がいないことから油断や隙が生まれてしまう。
普段は自分が殺す側であったせいか、いざ自分以上の存在に出会った時、殺されるという感覚が初めて生まれるのである。
それを今、白い竜騎兵は味わっていることだろう。
俺はそう思うとニヤケが止まらなくなり、快楽殺人鬼のような背徳的な悦楽が全身を駆け巡るのであった。
「アハハ!!! ほらどうしたんだ? 反撃しないのか? はやくしないと死んでしまうぞ?」
白い竜騎兵は逃げ惑っていた。
なぜなら、相手には魔法も物理も敵わないからだ。
それなのに相手は殺せるのに殺さない。
つまり遊ばれており、殴られる度に痛みも恐怖も増える一方であった。
虎の尾を踏むと言うがこれはそんなあまいものではない。
例えるなら竜の尾を踏んだのだ。
人間離れした握力から来る拳は岩のように固くそして骨を砕き、肉を潰すため痛覚すら麻痺させるレベルであった。
右頬が腫れて、鼻からは血が止まらず、歯は数本折れているだろう。
殺されるという恐怖から逃亡は虚しく、白い竜騎兵は戦うしか選択肢が残されていなかった。
「沈め!」
「ニーズヘッグ.....」
(了解マスター。相手の魔法を無力化します)
「なっ、なんで! 魔法が発動しない!!」
「哀れだな。お前......」
「ひっ! ま、まってくっ......れ......」
腸からは血がたらたらと海面に垂れていき、その姿は親が子に乳をあげるようにも見えた。
血は鮮血な赤色で、吹き出すことはなく押し当てられた槍先の刃をつたって俺の手に流れてきた。
生暖かい液体が片手を流れていき、死にたくないと最後のあがきで涙を流す白い竜騎兵だが、もれなく死ぬだろう。
こんな奴にリリィーが殺されたと思うと俺は何度も何度も死体に向かって槍を突き刺していた。
怒りのせいか何度も何度も何度も何度も刺して刺して......晴れることの無い気を鎮めるように殺すのであった。
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