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帝国

第74話〜帝国〜



旅行を終えて帰ってきた俺たちだが、いつまで経ってもその空気は重いままだった。

メリーヌもリリィーも会話をせず、ただお互いの顔色ばかり伺っては俯き苦笑いをする。

そんなことをされても俺は人間であると言ってやりたい。

もし竜であろうと人間であろうと、もしくは何でもない存在であろうとも今はヨグ・ランスロットとして生きていくしかないのだ。

俺は暗い表情を浮かべる二人に気を利かせて、紅茶でも飲もうと誘うのだった。


「あー、二人とも紅茶でも飲もうか? ほら、お茶の時間だろ。いつもならメリーヌが言い出すじゃないか!」


「あ、ああそうだね。すっかり忘れていたよ。それじゃあヨグ、頼めるかい?」


「任せてくれ!」


「お手伝いしますよ、ヨグ様!」


「おっ、助かるよリリィー」


そうは言ったものの、会話は長くは続かない。

カチャカチャと陶器が擦れる音が大きく聞こえるほど、部屋の中は静かだった。

俺が茶葉にお湯を注ぐと、良い香りがしてくる。

何度も嗅いだ香りだが、今日のはどこか物足りなく感じてしまう。


〜数日後〜


気づけば王国へと帰ってきており、これで長旅も終わりのようだった。

王都の見慣れた光景はどこか安堵するものがあり、心が少しだけ軽くなる。

また飛行船の下には多くの騎士たちが整列してこちらに手を振っていた。

その後飛行船を降り荷物を運び出し、俺とリリィーは学生寮へと戻っていき、メリーヌとは一旦別れたのだった。


次の日、学園は休みだったので久しぶりの休日だった。

朝早く起きる必要もないが、太陽が昇ると同時に俺は目が覚めてしまう。


「リリィー?」


「ん......んん、よふさま〜」


真横には可愛い寝言を言いながらも口をもぐもぐしているリリィーの姿があった。

彼女はまだ夢の中だったので、そっとしておいた。

俺は手を伸ばしリリィーの頭を軽く撫でてやる。

すると彼女は安心したのか少し表情が軽くなっていた。

俺のせいで色々と負担をかけてしまっていたのだろう。

これからも彼女と一緒に過ごしたいが、魔力が使えないとなると先が思いやられるばかりであった。


「はあー、どうしてこうなってしまったのやら......」


そう呟くが、答えてくれる人などいない。

それどころか、既に答えは知っていた。

全部自分がまいた種でしかないのだ。

それに自分が人間では無いことくらい最初から分かっていた。

また違和感を感じるのも日を重ねる毎に大きくなっていたのだ。

今はニーズヘッグに言われた通り、安静にして魔力を使わないようにしているが、こうも不便になるとは思いもしなかった。

いつの間にか俺も魔力がある状態が癖になっていたのかもしれない。


再び枕に頭を乗せ、布団を被る。

まるで現実から目をそらすかのように......。


ーーー


〜帝国〜


帝国は王国と敵対状態であったが、今ではそのほとんどが停戦状態であった。


「第一皇女様、密偵から国王及び第一王女のメリーヌが東方より帰還したのことです」


「そう、それじゃあキメラクラーケンの件は失敗ね。やはりあの騎士もどきが邪魔かしら。あれがいなければ今頃、メリーヌは地獄の底だったのにね」


「それが朗報です。あの黒騎士は理由は分かりませんが、戦えなくなったようです。あとはあの太陽騎士を落とすのみです」


「フフっ! 絶好の機会じゃない! 今すぐにでも妹を動かしてくれる? あの子、最近じゃ黒騎士ばかり目がいっていたからすぐに動くでしょうね」


「ははっ、ただいま!」


一礼し、静かにその場を後にする執事を前に、邪悪笑みを浮かべた皇女はついに動き出すのだった。


ーーー

〜王国〜


あれから数日が経ったが、相変わらずの日々を過ごしていた。

王都周辺は強力なモンスターが住み着いているとされているが、今日もここは平和である。

リリィーは騎士団と学生を両立しているため、毎日大忙しだが、そんな中俺は授業を終えたら帰るだけの生活を送っている。

生活費は俺の貯金を切り崩せば、なんの問題もないのだが、リリィーが口を酸っぱくして貯めておけと釘を刺されてしまった。

もちろん俺の貯金は決して贅沢できるような金額ではないが、多少の贅沢は許されるほどだ。

しかしリリィーは何があるか分からないと言って、自分の給料から生活費を支払い、学費すらリリィーの給料から引かれていた。

正直これでは俺の頭も上がらないというものだ。

それにしてもリリィーは今日も夜遅くまで仕事のようだった。


「 あっ、ヨグ様ただいまです! こんな時間まで起きていたのですか?」


「うん、リリィーも仕事お疲れ様」


帰ってきたリリィーは武器化したミラージュを持っていた。

ミラージュはニーズヘッグと違い、真っ赤な剣の形を型どっていた。

するとリリィーはすぐさま靴を脱いで、ギューッと抱きしめてきた。


「えへへー、今日のヨグ様補給です〜」


「そっか、疲れたよね。一応お風呂は沸かしてあるから入っておいで。その間に夕食を温めておくから」


「はい! ありがとうございますヨグ様!!」


そう言った彼女は笑顔を見せてくれているが、相当疲れているはずだ。

学業と騎士としての仕事を両立など、普通は不可能である。

魔力を使えない今、彼女に頼る他なく全力でサポートするつもりだ。



どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!

今日も更新の時がやってまいりました。

さてさて今回はどうだったでしょうか?

少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!


最後に感想とブックマーク、そして評価(☆☆☆☆→★★★★)をしてくれると、大変喜びます!

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