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竜への代償

第73話〜竜への代償〜




綺麗なビーチでの戦闘が始まり、早くも五分が経過していた。

先程まで綺麗だった海は荒波を立てて、揺れていた。

俺はニーズヘッグと共にクラーケンの討伐しようと奮闘していたが、どうも苦戦を強いられていた。


「なんだよこれ!? 切っても切っても、すぐに再生してるんだけど!?」


(マスター、クラーケンは再生力と生命力が高い魔物です。一気に倒さないと、すぐに復活されてしまいます)


「んじゃあ、海ごと吹っ飛ばすか?」


(それももちろん可能ですが、環境生物には多大な被害を及ぼす可能性があります。少し面倒ですが、いくら再生力が高くとも生物である以上、限界があります。体力が切れるまで攻撃を加えるしかありません)


「あんまり時間は取りたくなかったけど仕方ないか」


そう言いつつも、クラーケンは八本ある足の内、既に三本を切られている。

しかしその足はものの数秒で生え変わっており、完全に治るのに一分もかかっていない。

そんな中、地上に目もくれず、空中で戦っていたためか地上ではとんでもないことが起きていた。


「きゃー! 海の方から魔物よー!」


そう一人の女子生徒が声を上げると、そこには小さなクラーケンのような魔物が、海から這い上がってきていた。


「まじかよ! 先に対処を......」


そう思い、向かおうとするがクラーケンの邪魔が入り、ギリギリのところで回避する。


「くっそ! 邪魔するな!!」


迫り来る足を切り裂くと、今度は地面に落ちて行く。

しかし驚くことに足は段々と体を生やし、目のような部分までもが再生していた。


「切った足が再生して魔物になるのかよ!!」


(いえ、明らかにおかしいですマスター! この個体......突然変異かもしれません)


「突然変異?」


(はい、いくらクラーケンと言えどここまでの再生力はありません。おそらく突然変異した個体もしくは......」


「ああもう、御託はいいよ! とりあえずこいつをどうにかしないとね!」


そう言って俺は右手に持っていた槍を捨て、魔力を収縮させていく。


(ま、マスター!? なにを!!)


「やっぱり面倒だから吹き飛ばす! でも吹き飛ばすのは下じゃなくて空だ!!」


そして収縮した魔力は槍の形へと変化し、青く輝いている。


幻槍投擲(ドラゴンブレス)!!」


そう言って放たれた一撃はクラーケンを大空へと打ち上げ、空中で爆発を引き起こした。

クラーケンは海に落ちると、魔力の爆発で中身が潰れ、イカ墨のような黒い液体をボトボトとこぼしていた。


「これで一件落ちゃっ!! 」


(マスター? マスター!! 意識が、マスター!)


脳の機能が急にシャットダウンしたかのように、意識が途絶え、気を失ってしまう。

するとニーズヘッグは魔力供給が途絶えてしまい、空中から地面に叩きつけられてしまうのだった。

俺は深い海の底に落ちるかのように、体が重く強い酔いが体を襲った。

遠くからニーズヘッグの声や、駆けつけたリリィーとメリーヌの声が微かに聞こえてくる。

いつの間にかその声自体も聞こえなくなっていた。


ーーー


目が覚めるとそこはテントの中で横になっていた。


「う、うう......」


「はあ! ヨグ様!! 目が覚めたんですね!」


「リリィー、俺はどうしてここに......」


「分かりませんが、クラーケンを討伐し終えた後急に倒れたのですよ。それに......」


リリィーはバツが悪そうにして黙り込んでしまう。

俺は不思議に思いながらも起き上がろうと手を布団から出した時だった。


「な、なんだよこれ!?」


そこには鱗のようなものが生えており、俺の腕を侵食するように覆っていた。

リリィーが黙り込んだ理由はこれだろうか。


「落ち着いて聞いてくださいヨグ様。実は倒れた後、ヨグ様の体に無数の斑点が現れて、あれよあれよと鱗に変わったのです。それにニーズヘッグさんが言うには......」


リリィーは涙を流しながら、こう言い放つ。


「ヨグ様の体はどんどん汚染されていってしまうらしいのです! 病気か毒なのかは私は分かりません。でもこれ以上この奇病が進行したら取り返しのつかないことになります!」


そう言い終えると、リリィーは落ち着きを取り戻すが、相変わらず泣いていた。

突然の病気と言われて頭が追いつかない俺だが、痛くも痒くもないため、本当に病気なのかと疑ってしまう。

するとテント内にメリーヌとその母親が入ってきて、俺の様子を伺っていた。


「メリーヌ、それにメリーヌのお母様まで......どうしてここに!」


「大丈夫だよ、ヨグ。私がお母様を呼んだんだ」


「うむ、少し見させてもらうぞ」


そう言ったメリーヌに母親は俺の腕をスっと持ち上げ、よく観察していた。

するとため息をついてなにやら神妙な表情をしていた。


「これは竜化に近いものだろう。我が竜族が持つ秘術だが、なぜ人間に......」


「お母様、治す方法はないのかい?」


「うーむ、現状竜化を治すことは不可能だろう。それにこのまま魔力を使い続ければいずれ獣に堕ちるだろう」


「そ、そんな! じゃ、じゃあヨグは一生このままだってことかい!?」


「すまぬ。我が娘よ。本来竜化は竜族のみが扱えるもの。人間に同じ症状が出るなど聞いたことがない。それにそこの古代兵器の力を持ってしても手は無いのだろう?」


「お母様、最初から知ってて......」


「何、我が何年生きていると思っているのだ我が娘よ。古き時代の遺産も一度は目にしている。それでどうなのだろうか。古代兵器、いや......アルビオンの亡霊(・・・・・・・・)よ」


そう言って向いた方向には槍となったニーズヘッグが立てられていた。


「もはやお手上げですね、マスター」


「ニーズヘッグ.......」


「皆様、これより話す話は一切漏らさないと誓っていただけますか?」


そう言うニーズヘッグに三人は顔を見合せて、静かに承諾した。


「信用しましょう。ではまずマスターの現状についてですが、メリーヌのお母様の話通り、これは竜化に近いものです。もしこれ以上の魔力行使を行えばマスターは、自我を失い、肉体を獣に呑まれるでしょう。治療法は現状不可能であり、もし魔力を使い竜化が完全に行われれば、この世界自体が危ういかもしれません」


「じゃあ、ヨグはもう二度と魔力を使えないということ?」


「はい、現状は不可能です」


「そんな、そんなのって......なんでいきなりこんなことに......」


「いえ、いきなりではありません。マスターも薄々は気づいていたでしょう。己が人間では無いことに」


そう言い放つニーズヘッグに四人は驚いた表情を見せる。

俺が人間じゃない?

そう言われた途端、俺は体に違和感が現れる。

これは今まで無かったものではなく、最初から存在しており、自らが気づかない振りをしていただけであった。

違和感や己が何者なのか、いつからそれが分からなくなっていたのか。

そもそも俺は転生者であってここに生きる人間では無い。

いつからかそんな違和感が感じなくなるくらいには、この世界に入っていたのだろう。


「は、ははっ。そっか、俺人間じゃなかったのか」


「はい、おそらくは人間に限りなく近い竜という言葉が正しいでしょう。マスターを形ずくっていたのは記憶。もしくは誰かの思いだったのかも知れませんね」


「じゃあニーズヘッグ。俺はどうすればいいんだ、どのように生きればいい。分からない、分からないんだ自分が。ずっとこの世界に来てから......」


「それはマスターの決めることです。現状は人として生きることの方が幸せでしょう。ですがマスター。もし一度でも堕ちれば二度とは戻って来れません。もちろんこちらもサポートは致しますが、マスターが選択してしまえば私とて無意味な存在となります」


「結局は己が決めろ、そう言いたいんだろニーズヘッグ」


「はい、マスターの選んだ道に私は否定しません。ですが周りはそうはさせてくれないでしょう」


そう言われ俺は周りを見る。

そこにはリリィーとメリーヌ、そしてメリーヌの母親の姿があった。


「ヨグ様......」


「ごめん、リリィー。ごめん皆。一人にしてくれないか?」


そう言うとメリーヌはため息をついて、スタスタとテントから出ていく。

メリーヌのお母様も続いて出ていき、残ったのはリリィーだけだった。


「リリィー?」


「ごめんさいヨグ様。その命令には従えません! 今ここで出て行ったら、またヨグ様に会えなくなりそうで! 私は怖いんです! ヨグ様がいなくなるのが! 」


「俺は居なくならないよ」


「わかっています。でも怖いんです! ヨグ様は私にとっては全てなんです! ヨグ様が連れ出してくれたあの時から! ! 冷たかった世界がほんの少しだけ暖かく感じたんです!! だから私は決してヨグ様を一人になんてさせません! ヨグ様が自分を見失ってしまったのなら私が一緒に支えます! だからヨグ様、居なくならないでください!!」


そう言って彼女は俺の手をぎゅっと握る。

痛むほどではなく、暖かく感じるくらいの力で。

その時俺は、こう思ったのである。


もし自分を見失ってしまっても、彼女の手の温もりさえ守れればそれでいいのだと。


例え人間でも竜でも何でもない自分だったとしても、彼女幸せさえあれば俺は生きている価値があるのだとここの底から安堵したのだった。



どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!

毎度のこと今週も更新の時がやってまいりました。

さてさてこんかいはどうだったでしょうか?

少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!


最後に感想とブックマーク、そして評価(☆☆☆☆→★★★★)をしてくれると、大変喜びます!

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