海に行こう
第71話〜海に行こう〜
翌日、目が覚めるとまだ太陽が顔を出したばかりで、緑かかった青空が伺えた。
リリィーはまだベッドでぐっすり寝ているが、メリーヌの姿が見えなかった。
起き上がり窓辺の方をもう一度よく見ると、そこには空を見上げるメリーヌの姿があった。
「おはようメリーヌ」
「!?」
俺がそう言うとメリーヌは驚いた表情をこちに向けてきた。
しかし彼女はゆっくりと頷くだけで何も話さない。
おそらく昨日のことが原因だろう。
俺も特に気にしている訳ではなかったので、窓辺に座る彼女の横に腰をおろした。
すると彼女はゆっくりと口を開いた。
「すまないヨグ。昨日は......私も初めてで同様してしまったんだ」
「別にいいよ。俺は気にしてないよ」
「あはは、君は優しいね。あれだけ焚き付けて置いて不甲斐ないよ」
そう言って彼女は顔をうずくめてしまう。
そんな彼女の真横へと寄って、背中をポンポンとさすってやった。
「まあ、時間はたくさんあるからね。俺も初めてだったし、次は上手くやってみせるよ。だからメリーヌも気にしないでほしい」
「そっか。うん、少し楽になった。ありがとうヨグ」
そう言う彼女にニコッと笑ってみせる。
そうして新たな一日がスタートしようとしていた。
〜お昼頃〜
あの後朝食を済ませ、午前のティータイムを楽しんでいるメリーヌは今朝の弱弱しい姿はなかった。
優雅な空間は心を和ませ、平和な時間をしみじみと感じられた。
しかしトラブルはつきもので、学生寮の方で発生した問題にリリィーが駆り出されていた。
「スー、スー」
紅茶の啜る音が大きく聞こえるほど静かな空間に、俺の心は落ち着かなかった。
するとメリーヌは俺がソワソワして落ち着かないのを感じ取ったのか、声をかけてくれた。
「ヨグも座って紅茶でもどう?」
「いや、さすがにやめておこうかな。ほら、俺一応護衛人だし......」
「それって私のお茶が飲めないってことになっちゃうけど大丈夫かな」
そう言うメリーヌは笑顔だが、底知れない圧が感じられる。
半ば強制的だが、俺は渋々椅子に腰を下ろした。
ここは元々メリーヌが泊まる予定であった宿屋で、色宿とはまた違うものだった。
そんな宿の外にある庭には机が用意されており、お茶とお茶菓子を用意して現在に至る。
しかし宿の使用人たちは相手が王族ということでビクビクしていた。
「ヨグ......あまり周りを威嚇してはいけないよ?」
「多分、俺じゃないね」
「へ?」
そうとぼけた表情をする彼女だが、その空気に気づいていない訳もなかった。
使用人の方をメリーヌがそっと目線を送る。
すると使用人はビクッと動き、青ざめた表情を浮かべていた。
メリーヌは目線をこちらに戻すと、涙ぐんだ目をうるうるさせて助けを求めていた。
俺は仕方ないと思い、空気を変えようと話題を出してその場を凌いでいた。
そんな時メリーヌはこんなことを言い出した。
「そうだヨグ! お昼食べたら海にでもいこうか! 真っ白な砂浜にヨグと一緒に泳ぐ海はきっと最高の思い出になると思わないかい?」
そう言い出したメリーヌは夢を見る乙女のようで可愛らしく思える。
しかし勝手に海など行ってもいいのだろうか。
それに学園の皆になんて言われるか分からない。
俺は一旦否定的な素振りを見せて様子を伺うことにいした 。
「海か〜。でも一応俺も学園の生徒だしな。それに他の生徒になんて言われるやら」
「なんだ、そんなことを気にしていたのかい? それなら大丈夫だよ。だって学園の子たちも来るんだからね。水泳の授業と合わせて自由に泳げるって訳さ。私も考えたものだろ? これで合法的にヨグとイチャイチャできるしね」
「それを本人の目の前で言わなきゃ完璧だったよメリーヌ。それならわかったよ。でも俺は戦闘服が一応あるけど、メリーヌは水着持ってきたのか?」
「はは、そのくらい......あれ? そういえば持ってきてない......どうしよう、ヨグ。私だけ置いてきぼりにされちゃう!」
そう言って困った表情をしていたメリーヌだが、ここは観光地としても有名な場所であるため、水着の取り扱いくらいあるだろう。
「この辺に詳しい人がいればなー」
「あっ、それなら! 取っておきの人がいるよ!!」
そう言われて俺はメリーヌにある場所へと連れていかれた。
それは昨晩訪れた歓楽街で、メリーヌの母親が経営する天威だった。
もちろんこの辺に詳しい人として選べえたのはメリーヌの(実の)母親だった。
「それで何用だ。我が娘よ」
そう言ったメリーヌの母親であるモンテは寝起きなのか服も髪も乱れていた。
それに首元には虫に刺されたような後が数箇所あり、蚊でも入り込んだのだろうか。
「お母様、寝る時は窓を閉めることおすすめするよ。それで本題なんだけど、ここら辺で水着の買えるお店はあるかな。今日海でヨグとデートっ、いや違った。遊ぶ予定でね」
「はあ、なんだ。そんなことか、ではすぐに用意させよう。全く、我を叩き起してまでの用ではないであろう」
「それは申し訳ないよ。あれ? お父様はどこに?」
「ああ、我がベッドでまだ寝ておる。昨晩は夜更かしをしてな。まだ寝かせておいてやろう。それによい夢を見られたのでな」
「はは、お母様が嬉しそうで僕もなによりだよ。それじゃあ失礼するよ」
そう言って立ち去ろうとするメリーヌにモンテは気遣ってかこう言った。
「海は危険だからな。油断はするでないぞ、我が娘よ」
そう呟くようにいいは放つモンテにメリーヌはニコッと笑って見せていた。
いくら疎遠であってもやはり実の娘には変わりないだろう。
そうしてその場を後にした俺たちは、案内通り水着を買うため、街まで来ていた。
〜街の服屋〜
案内された場所は街の中にある普通の服屋で、とてもじゃないが水着が置いてあるとは思えなかった。
しかし案内人が天威からの招待状を片手に話を通してくれていたようで、メリーヌの採寸をして最適な水着を何枚か選んでくれていた。
「ねえねえヨグ! これなんてどうかな? 」
そう言ってメリーヌは布面積がないに等しい紐のような水着を片手に見せてきた。
さすがにその水着は学生に悪影響なので他のものを薦めた。
「それはちょっと過激すぎじゃないかな。他の生徒もいるし......」
「へえ、ヨグと二人きりなら別にいいんだ」
「そういう意味じゃないよ。あっ、これなんてどうかな? メリーヌにはやっぱり青色が良く似合うからね」
そう言って手渡したのは群青色の水着だった。
布面積もそこそこあり、薔薇のような模様が描かれてメリーヌにピッタリなもだった。
「はは、君はいつも口が上手いね。でも私も最初からそれにしようと思ってたよ。まあヨグが選んだのならそれにしようと思ってたけどね」
そう言ってメリーヌは試着してくると言い残し、試着室へと入っていく。
その間にお代を済ませようと店員に支払いを聞くが、既に支払われているそうだった。
どうやら天威宛に支払いが行われており、モンテさんはどこまでも気が利いているらしい。
なんだかんだあったが、結局面倒を見ているようで、こちらも安心してしまう。
するとメリーヌが試着を終えて、試着室からでてきた。
「どう? どう? ヨグ!! 似合ってると思わない!!」
少しテンションが上がったのか、興奮気味の彼女が見せつけるように迫ってきた。
「うん、やっぱりメリーヌは青色が似合うね。それにしても肌白過ぎない?」
「まあ、竜種の血が入ってるからね。太陽くらいの熱じゃ肌が焼けないんだ」
「竜種......聞くだけでヨダレが.........。いかんいかん、それでお代も済んでるし、この後はどうするんだ?」
「うーん、そうだね。昼食を取って少し休憩したらちょうどいい時間なんじゃないかな。私はもう一回着替えてくるよ」
そう言ってメリーヌは再び試着室へと入っていくのだった。
〜少し過ぎて〜
昼食を終えた俺たちは、リリィーとも合流して海に行くことになった。
宿に戻ると手紙が届いており、後でモンテさんと王様も来るらしい。
その前にリリィーのご機嫌取りの方が大変だった。
「リリィー許してよ。別にデートしてた訳じゃなくてメリーヌの水着を買いに行ってたんだ」
「それをデートと言うんですよ、ヨグ様。後怒ってません」
「絶対怒ってるよ。だってほら、頬膨らんでるし」
「これは怒りではなく羨ましく思っただけです。私だってヨグ様とお買い物したり、ご飯食べたかったですよ。なのに騎士団のトラブルだのなんだのって!」
「ごめんね、今度美味しい店連れていくから」
「む、約束ですよ?」
「うん、絶対だよ。......って塩臭いと思ったらもう着いたのか!」
そう言って馬車の窓を開けると、そこには白い砂浜に大きく広がる夏の夢こと、海が広がっていた。
綺麗な海が透き通っており、地面が見えるほど綺麗で、ゴミなど一つもなかった。
正直俺が前世で見た海は、テレビを抜いて大体は緑色に濁っていた記憶がある。
やはりここは異世界なのだと、改めて思った。
すると眩しい太陽がこちらに光を示していた。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
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