嘘つき同士
第70話〜嘘つき同士〜
突如として現れた王様を前に、俺は開いた口が塞がらなかった。
一瞬偽物だと疑ったが、魔力の色が同じだったため、本人だと確信するのだった。
それにメリーヌもお父様と呟いていたため、間違いではないだろう。
またメリーヌの実の母親であるモンテも目を丸くして驚いている様子だった。
「な、なぜそなたがここにいる!?」
「あはは、驚かれても仕方ないね。でも今日はお忍びで来てみたんだよ、モンテ。いや、我が最愛の妻よ」
「ふん、戯けめ! 今更顔を出してまだうつつを抜かすか? 我を数十年も放置しておいて......」
「それに関しては私の責任だ。だが一つだけ訂正したいことがあってね。ここだけの話、私とテレシアは擬似的な婚姻で、恋愛感情などない仕事だけの関係だ。私が本当に愛しているのはモンテなのだよ。そこだけは勘違いしてほしくないね」
「まだそういうことを言って我を言いくるめる気か!? もうそなたの言葉など信用せぬ!」
「実はもう一個だけ伝えておきたいことがあってね。それはモンテが我が城で住まわえてもらえることになったんだ」
「そなたはいつもいつもッ......へっ? 住まわせる?」
「ああ、そうだよ。やっと我が国も安定していてね。私の粗相も許される雰囲気だし、テレシアの許可も貰った。あとはモンテ、君の意志だけだ」
そう王様が言うと、モンテは顔を手で覆ってしまい表情が読み取れなかったが、尻尾をブンブンと左右に振って喜んでいるようだった。
なんとなく察したが、彼女はおそらくコルク王のことを相当愛しているのだろう。
メリーヌも独占欲というか、少し愛の重い時がある。
さすが親子と関心するが、モンテは意外な答えを出していた。
「それは......できぬ! 我ではそなたに迷惑をかけてしまう」
「迷惑だなんて、ありえないよモンテ」
「もし我のことが街中に広まれば、責め立てられるのはそなただ。我はそれが恐ろしい。だから行けぬ」
「モンテ、自ら犯した過ち一つ許されないほど、私が民に信用されていないと思うのかい? 」
「む、それは......」
「安心してくれ、そんな状態ならわざわざ迎えにくるわけないよ。それに......」
王様は小声になって、恥ずかしそうにこう言った。
「結婚式もあげたいと思っているし」
「なっ!? そ、それは誠か!」
「まあ、今すぐじゃないけどおいおいはあげるつもりだったよ。だって私が最も愛する人なのだからね」
「ん〜!!!!!!!」
そう言われたモンテは今度こそ顔を真っ赤にしていた。
このやり取りを見せられている俺とメリーヌは呆れた表情をし、リリィーは大いに喜んでいた。
また俺たちは今おじゃま虫だ。
さっさと退場するに限り、すぐさまその場を後にした。
〜天威-受付前〜
事を終えた俺たちは胸焼けしそうなほど熱々な二人を置いて、受付まで戻っていきていた。
夜はすっかり深まっており、街灯も少し減っている。
そして出入口で受付に要は済んだと伝えると、一言「ありがとうございました」と笑顔で挨拶をされた。
すると出入口で、メリーヌがふと止まり、何やら言いにくそうにモジモジしていた。
「どうしたの、メリーヌ?」
俺がそう問うと、メリーヌは珍しく顔を赤らめており、服の裾をクイクイっと引っ張ってきた。
腰を下ろし、彼女の口元に耳を近ずける。
すると彼女は囁くようにこう言った。
「ねえ、ヨグ。私、お父様やお母様の見てたら羨ましくなっちゃった。だから今夜......私たちもどうかなって?」
そう呟いた彼女は言い終わりにフーっと耳へと息を吹きかけた。
驚いた俺はすぐさま耳を彼女から遠ざける。
「ななな、何を言って......」
「それを私の口から言わせるのは野暮ってものだよ、ヨグ。うち若き男女が、歓楽街ですることなんて一つしかないよ。リリィーも構わないよね」
メリーヌがリリィーに目線を送ると、リリィーは俯いてしまうが、ゆっくりと「はい」と返事をした。
「だってさ、ヨグ。後は君が決めるだけだよ」
「で、でも......」
俺は戸惑ってしまう。
もちろん前世でもそういうことはしていなかったし、いずれは経験することだと思っていた。
しかしこうも突然訪れるとは思いもしなかった。
俺はもう一度彼女らの方を見るが、彼女らの意志は堅いようだった。
それに応えるように俺は差し出されたメリーヌの手を取ったのだった。
〜歓楽街-小鳥たちの宿〜
その後、なんとも気まずい空気を醸し出しつつ、俺たちは恋人たちの宿屋へとやってきた。
外観は普通の宿だが、魔法により音が遮断され、窓も高い位置に設置してあった。
そんな宿屋に見とれて、俺は足が進まなかったが、メリーヌとリリィーが手を引っ張っていき、ついに宿屋へと入ってしまう。
宿屋の中は暖かく、そしていい香りが漂っていた。
それは食欲を誘うような香りではなく、目が覚め、メリーヌやリリィーがより際立つような花の香り。
覚悟を決めた俺は受付へと足を運んだ。
「はぁ〜い、ようこそ小鳥たちの宿へ。お兄さん、今日は三人かい?」
「え、ええまあ」
「あはは、そんなガチガチにならなくてもいいのよぉ〜。もしかして初めてなのかしら〜」
「あは、アハハ......」
そう中性的な声を持つ受付嬢は緊張する俺を見て、かわいいと連呼していた。
「初なのね〜! いいわー、若者の恋! 憧れるわ〜!!」
「あはは、そ、それで、三人部屋を借りたくて.....」
「うんもうっ! わかってるわよ!! 三階の大部屋を貸してあげるわ〜! 代金は初めてみたいだし、十五ドラでいいわよ〜。はい、これ鍵ね! それと......」
受付嬢は部屋の番号の付いた鍵と、手のひらサイズの箱を手渡してきた。
すると受付嬢は耳元でこう囁いた。
「避妊は大切よ。愛し合っているなら尚更ね!」
そう言われ手渡されたものを見ると、『スライムゴム薄め』と書かれた避妊具だった。
「えっ、ちょっ!」
「いいのよいいのよ、それはタダ。持っていきなさい! それじゃあ楽しんでね〜」
半ば強引であったが、俺たちは部屋へと向かったのだった。
ーーー
部屋は三階の一番奥の部屋で、大部屋となっていた。
ドアを開けると目の前には靴置き場があり、その奥にはとても大きなベッドが置かれていた。
またすぐそばの壁は一面窓になっており、綺麗な夜景が目に入ってきた。
「ゴクリッ......」
俺は息を飲み、靴を脱いで奥へと進んで行った。
部屋は綺麗にされており、消毒などもされていた。
やはりこういう宿屋こそ、清潔にしているのだろう。
そして俺はベッドに腰かけ、二人を待っていた。
「ヨグ、私とリリィーはシャワーを浴びてくるよ。君はそこで待っててくれるかな」
俺は黙ったまま頷く。
するとメリーヌはリリィーを引っ張っていき、シャワーのある脱衣所の方へと消えていく。
その間、一人の時間ができ心のざわめきが止まらなかった。
シャワーの流れる音や脱衣所の明かりから見える影が、より緊張感を煽ってくる。
シャワーの音が止まり、彼女たちの声がすぐそこまで来ていた。
心臓の鼓動が速くなり、動揺を隠せない。
そして数分後、彼女たちが脱衣所から出てきた。
「お待たせ、ヨグ」
そう言ったメリーヌは体に湯気を纏っており、肩や節々がほんのりと赤くなっている。
真っ白な肌なので赤みがかった箇所は強調され、とてもじゃないが直視できなかった。
リリィーも同様に恥ずかしそうにしてギュッとバスタオルを持ち、お互い顔が見えない状況だった。
するとメリーヌが呆れたようにため息を吐くと、俺の肩を押してベッドへと押し付けられる。
「リリィーも君も、そんなに恥ずかしがらないでいいのに。だってどうせこれから嫌という程見せ合うんだからさ」
メリーヌはそう言い放つと、おもむろに俺の服を脱がし始め、上裸へとなってしまう。
心臓の鼓動がメリーヌにも聞こえるほど速くなっていた。
しかしメリーヌは動かなくなってしまい、俺が目を開けると、彼女の顔が目に入る。
目線はトロンとしており、自然と笑みがこぼれているがどうしたのか動かない。
「メリーヌ?」
そう呼びかけるが、メリーヌは突如として倒れこんでしまうのだった。
「うへぇ〜、ヨグの鎖骨......ヨグの匂い.....」
完全に目を回して酔っているようにも見える。
どうやら恥ずかしがらずにいたのは痩せ我慢で、とうとう限界を迎えたのだった。
俺とリリィーは顔を見合せて、とりあえずメリーヌをベッドで横にさせる。
結局その日の夜は何も起きず、ダウンしたメリーヌと服に着替えたリリィーを横に、俺は眠るのだった。
やはりそういうことはまだ先のようだ。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
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