親子喧嘩
第69話〜親子喧嘩〜
案内人は淡々と螺旋階段を上っていくが、一行に終わりが見えなかった。
上を向いても同じ階段が続いており、無限に続くのではないかと思ってしまうほどだった。
「長い階段ですね、ヨグ様」
「そうだねー、これだけ歩いても空が見えないや」
「ご安心ください皆様。もう少しで着きますよ」
そう言われると少し心の余裕ができるというものだ。
俺はメリーヌの顔色を心配しつつ、再び階段を上るのだった。
ーーー
その後、五周ほど階段を歩くと案内人が足を止め、横にあった壁に手を触れていた。
すると先程まで綺麗な壁だったはずが、見る見るうちにズレて行き、目の前には道ができていた。
「皆様、着きました。ここが女王の間です」
「はあー、相変わらずお母様は警戒心が強いね」
そうメリーヌが言うと案内人はニコッと一瞬笑うが、すぐに奥へと進んでいく。
それに続くように、俺たちも中へと進んで行った。
紫色の炎を放つろうそくや切れ目一つない石造りの廊下。
決して明るいものはなく、冷たく冷酷な様子が漂っていた。
そして奥には金で装飾された扉が見えてきて、おそらくあれが出入り口なのだろう。
案内人は出入り口でスっと止まり、扉を開くと、それ以上は進まない。
どうやら俺たちだけで行けということなのだろう。
メリーヌは俺の顔を見て一瞬頷いて、中へと入っていった。
それに続いて俺とリリィーも中へと入る。
すると目の前には少し透けている大きなカーテンが見えてきた。
「来訪者よ。ようこそ、我が寝室へ」
そう声が聞こえてくると、メリーヌが足を止めた。
「その声、忘れもしないよ。久しぶりだね、お母様」
「我が娘よ、我もそなたにこうして出会えたこと嬉しく思うぞ」
メリーヌの母親らしき人物は影でしか認識できなかった。
少し透明なカーテンが良くも悪くも視界を阻害していた。
するとメリーヌは少しづつ前に出て、カーテンのすぐ近くに膝まづいたのだった。
「ほう、我が娘にしては成長したな。枷を外したと聞いた時は驚いたが、半竜半人の血も捨てたものではないな」
「枷を外したのは僕じゃないよ、お母様。僕の後ろにいるヨグが外したんだ」
「......うむ」
そうメリーヌが言うと、奥にいたメリーヌの母親はついに動き出し、カーテンを退けて見せた。
しかし俺は急いで下を向き、顔を見ないようにする。
「よい、我が姿を見ること許そう。さあ、存分に見るがよい」
そう言われたので、恐る恐る顔を上げると、そこにはメリーヌの顔に似た人物がいた。
「どうだ、我は美しいか? それとも恐ろしいか?」
そう言われても答えに困るというものだ。
こういう時は無言を貫くにかぎる。
メリーヌの母親、モンテ・アナスタシアはメリーヌにそっくりで、体つきも似ていた。
違う点としては、大きな尻尾や頭に生えた何本もの角くらいだ。
そのためメリーヌが二人いると錯覚を起こしても無理はないだろう。
すると女王はカーテンから完全に姿を現し、俺の目の前へとうやってきたのだった。
「......ほう、よい眼差しだ。緊張のせいか目が泳いでおるが、魔力自体は美しい。それに......なるほど、そういうことか」
女王の指が俺の頬を掠め、彼女は何かを察したように元いた場所へと戻っていく。
俺の魔力を見て、何を察したのだろうか。
「よい男を捕まえたではないか、我が娘よ。してその者の名はなんと?」
「ヨグ・ランスロットだよ、お母様。僕の自慢の騎士さ」
「ほう、ヨグか。ではヨグ、そなたはなぜ姿を隠しておるのだ?」
「ッ!?」
そう言われると同時に体が重くなり、胸が苦しくなった。
答えようとしても息が詰まるように声が出なかった。
女王はそんな様子を見てニヤリと笑っていた。
「ハハハ、よい。無理に答える必要はないぞ。我が当ててやろう」
(......めろ)
「そなたは......」
(......やめてくれ)
重圧がピークを迎え、意識が揺らぐ。
すると次の瞬間、メリーヌが女王の言葉を遮った。
「はあー、お母様がどう思うおうとかってだけど、ヨグが苦しがることはやめてくれないかな?」
「ほう、我に魔力を向けるか。生意気になったな我が娘」
「僕の大切な人を傷つけることは許さないよ。例えそれがお母様であってもね」
そう言ったメリーヌは俺の耳を塞ぎ、ぎゅっと抱きしめられてしまう。
「大丈夫、ヨグは何も聞かなくていい。それに用があるのは僕だろ、お母様」
「ふん、まあよい。ヨグ、そなたはいずれ気づくであろう。そなたが人ではない何かであることはな」
「お母様!!」
俺を庇ってか、メリーヌが大きな声を出した。
「そう怒るでない、我が娘よ。母として娘を心配しているのだぞ?」
「そんなこと思ったこともないくせに、よく言えたね。だったら僕の十数年を返してほしいものだね」
「それはそなたが枷を外せなかったからであろう。弱き子など竜には必要ない」
「そうだね、お母様はそう言うと思ったよ。だからこそ僕は強くなったんだ。お母様に負けないくらいね!」
そう啖呵を切ってメリーヌは女王の方を見て、睨んでいた。
実際は目が見えてはいないので、睨むと言うよりかは、魔力で牽制しているのだった。
「本当に生意気な娘よの。まあよい、それもまた一興。だが子が親を超えることはない。あの馬鹿な王よりかはましだがな」
「お母様は相変わらずお父様を嫌っているね」
「あの王は我を妃には選ばなかった。穢れた一族の末裔ではあるが、子を成したことには変わりない。その上、あのような小娘を妃にするなど我は決して認めぬ」
「ならお父様に直接言えばいいじゃないか。僕たちに八つ当たりはやめて欲しいな」
「言いたくともあやつは我と会おうとしないだろう。拒絶されたのは我であり、拒絶したのはあやつだ。我を捨てたのは王として名に恥じぬためであろうがな」
そう言う声は少し元気がなく、半ば諦めている様子だった。
しかしどこか悔しそうにも聞こえてくる。
メリーヌは難しい顔をしているが、こればかりは王と女王の問題で、気安く手伝えるものではなかった。
そんな時だった。
「そんなことはないよ」
そう背後から聞こえ、現れたのはメリーヌの父親、つまり王国の国王であった。
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