修学旅行
第65話〜修学旅行〜
再び学園に通い出してはや数週間。
王子一向や他の生徒達に聖王国の件が広まっており、俺は英雄のような扱いをされていた。
その反面リリィーは不服そうな顔を浮かべ、現在進行形で俺の方を睨んでいた。
「ヨグさん! 今度お茶にお誘いしてもよろしいでしょうか?」
「わたくしも......」
「それなら私も!」
そう言われて学園の女子生徒に囲まれている俺。
苦笑いでその場を乗り切るが、周囲の視線は依然として痛いものだった。
特に男子生徒とリリィーの視線は強い殺意を感じた。
すると予鈴が鳴り響き、午後の授業の始まりだった。
女子生徒達も渋々己の席に戻っていき、俺はスレイとウルトの座る席の後ろに座った。
「やあやあ、ヨグ。何やらモテモテのようだね」
「ほんっと、憎たらしいほどモテてるよな!」
振り返るや否や、茶化してくる二人に疲れた表情を見せる。
それにモテているのではなく、ある噂が広まった結果。
権力争いの強い貴族たちは俺を取り込もうと必死なのだろう。
「多分俺がメリーヌのお気に入りだからじゃないかな。取り入りたい連中が大半だと思うと、自分が情けないよ」
「はぁ〜......それでもモテるならいいじゃないか! 僕たちなんて未だに婚約者の一人見つからないんだぞ!」
「まあまあ、その辺にしとけよウルト。ヨグは今や子爵様だぞ! 俺たちの手の届く人じゃない」
「えっ? 子爵? 俺って男爵第二位じゃなかったっけ?」
すると聞き耳をたてていたリリィーは驚いたように声を上げた。
「ヨグ様聞いていなかったのですか! ヨグ様は聖王国を救った英雄である功績とマナ家やメリーヌ様からの推薦によって爵位が上がったのですよ! 」
「えっ! そうなのか〜。メリーヌに呼び出された時は眠くて覚えてないや」
そう言うと突如教室のドアが開けられ、先生が教室へと入ってきた。
先生は息を荒らげていかにも走ってきた感を醸し出しており、また両手には大量の紙を持っていた。
「遅くなってすまない。まずはこれを配るから目を通すように!」
そう言って配られた数枚の紙には修学旅行の文字が大きく印刷されていた。
「しゅ、修学旅行?」
「おおおおお! ついに......ついにこの時が来たんだ、ヨグ!」
「お、おう......。そんなに大きな行事なんだな」
「ヨグは知らないと思うけど、この学園の修学旅行は毎年行われているんだよ。しかも有名リゾート地ってこともあって、男女の仲を深める一大行事として、僕たち貴族では有名なんだよ!」
「男女の仲を......。えへへ、ヨグ様と......ぐへへ〜」
「ちょっ、リリィーさん!? 」
各自違った気合いの入り方をしていたが、一大行事ということはわかった。
前世ではあまりいい思い出はないが、この世界だからか、今世は俺も心が踊った。
「はい、注目! 今から修学旅行について説明するからよく聞くように! 今年の修学旅行は竜人たちが多く住まう街、『サクラ』に行くことになった。綺麗な海と歴史ある竜人たちの交流ができる上に、その魔術の技術を学べる最高の場所だ。しかし参加は各自の判断になっている。もし不参加の場合は休みとなるぞ!」
その後も修学旅行についての説明がされ、詳しい日程や持ち物、そして文化の違いを教えて貰えたのだった。
授業後、クラスの連中は皆楽しそうな表情をしていたが俺は絶賛お悩み中だった。
「授業お疲れ様です、ヨグ様。......ん? どうかしましたか?」
「いや、ちょっとね。修学旅行に参加しようかで悩んでいたんだよ。メリーヌに相談しないとだし、今俺が動くのもアレかなーっと......」
「えっ、ヨグ参加しないのか!?」
「そんなっ! もったいないぞ、ヨグ! 僕たちはともかく、君は青春を棒に振る気か!」
「皆さん、安心してください。もしヨグ様が参加しないと駄々をこねたら、私が責任をもって連れて行きますので!」
そんな会話を挟みつつ帰りの身支度を済ませ、メリーヌのいる王城へと向かい、彼女に参加の有無を聞いてみた。
するとメリーヌは相変わらず呑気そうにお茶を啜りながら二言返事で許可がでるのだった。
「もちろん大丈夫だよ、ヨグ。でもリリィーと二人きりでデートはさせたくないから、私も参加するよ!」
「えっ! メリーヌ様も参加するのですか!?」
「私だってヨグと一緒にデートしたいし。それに護衛なら心配いらないよ。だってリリィーもいるし、何よりヨグがいるからね」
「でも王様がなんて言うか分かりませんよ!」
「そこは安心してよ。ダメなんて言った暁には二度と口を聞いてあげないって言って脅すからさ」
色々王様が不憫だが、なんとか許可をもらえてので俺も彼女らも修学旅行に参加することになった。
内心では何かと嫌な予感もあったが、それ以上に楽しみだ。
そうして月は流れ、ついに修学旅行当日へとなっていた。
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