おかえりなさい
第62話〜おかえりなさい〜
焼け焦げた家々の残骸、風が吹く度に舞い上がる灰の山、先程まで街だったとは思えないほど、綺麗さっぱりなくなっていた。
聖王国という国が本当に地図から消えた瞬間であり、人々はそんな歴史的瞬間に唖然するしかなかった。
その後、王国本大隊が到着し、燃え尽きた聖王国の調査を行うが、死体はいくつか発見されたものの、肝心な黒幕の死体は発見されなかった。
どこかへ逃げたのかは分からないが、いずれは見つかるだろう。
また聖王国は潰れてしまったが、新たに「新聖王国ならぬ神聖王国」が誕生し、海沿いに領土を移した彼らは鎖国状態から解放されていた。
復興は王国の手助けもあってすぐに終わったが、問題はまだまだ多い。
しかし、新たに先頭へと立った人物はエクシアであると聞いたので安心の一言だ。
また獣人たちは迫害や差別が完全になくなったわけではないが、こればかりは時間がかかりそうだ。
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〜王国の内側-地下室〜
重い瞼を開き、目が覚めるとそこは、真っ暗な部屋で寝ていた。
動こうとしても動けず、手足には手錠かけられていた。
俺はヨグ、エクシアを庇いその後、意識をなくしてしまったが、気がつくと暗い部屋に手錠付きで閉じ込められていた。
ふとした時、ドアが開くような音がして、次の瞬間、部屋の明かりがつけられ目がやられてしまう。
暗い部屋から明る場所に出た時と同じように、じんわりと目が慣れていき、明るい部屋の様子が伺えた。
部屋は石のような壁で囲われており、声なんて響きそうにない。
ベッドに縛られ、手錠は短く、腕をあげようものならすぐにつっかえてしまう。
そんな中、俺は周りを見渡していると、ドアの方には見覚えのある人物が立っていた。
「ヨグ様ーーーーー!!!」
そう言ってズドーンと大砲のように突撃してきたのはサラマンダーのリリィーだった。
彼女は俺に抱きつくと、涙を流しながら顔をうずくめており、俺はそんな彼女の頭をポンポンと撫でてやる。
「ただいまリリィー」
「もう離しませんよ。もう絶対、私の前から居なくならないでください! うぇぇん、ヨグ様ぁ!」
「うん、ごめんね。俺がもっと強ければ......」
そう言って俺は彼女を抱きしめる。
前よりもずっと大きくなっていたのでサラマンダーの成長力はすごいなと思いつつ、彼女の肌からは温かさが感じられた。
「えへへ、ヨグ様。好き。大好きです。はあー」
彼女が落ち着くまでじっとしていた。
しばらくして彼女も泣き止み、笑顔で満ちていた。
「そういえばニーズヘッグはいるのか?」
「応答。マスター......私がついていながら申し訳ございません。私ではマスターを守れませんでした」
「別にいいよ。あれはニーズヘッグのせいじゃなくて、俺の不注意が招いた結果だから......」
「マスターはお人好しですね。本来なら私はスクラップになっていてもおかしくないのですが」
「それは困るよ! だからこれからもよろしく頼むよ」
「マスター......承認。私の命に変えてもお守りをお約束いたしましょう」
「それじゃ、さっそくこの手錠どうにかできないかな?」
俺がそう言うとニーズヘッグは困ったのか黙り込んでしまう。
すると目の前にいたリリィーが口を開いた。
「何故ですか? 今日からヨグ様にはここで過ごしてもらうのですよ?」
「えっ? でもこれじゃ動けないし、色々生活にも困るんだけど」
「ダメですよ。ヨグ様のお世話は全部私がしますので......あっ、でも外にどうしても行きたいならこちらにも手錠がありますので、私の手とヨグ様の手につけてなら外に出れます」
「リリィーさん?」
俺は最初冗談半分で言っていると思っていたが、リリィーの表情からそれが本気だと理解した。
「でもリリィー......トイレはどうするんだ?」
「えっ? 」
「俺ずっと我慢してたけどもう限界なんだけど......」
「えっ、でも! わ、私が......やります!」
「いやいや、ここで漏らすなんて一生の恥だよ! リリィー、まじでやばいよ!」
「うーむ......わかりました。手錠は外します。でもトイレまではついて行きます」
リリィーは手錠を外し、本当にトイレまで着いてきて、ドア前で待っていた。
あと少しのところで一生の恥になるところだったが、間に合った俺は安堵していた。
そうしてトイレから出た俺は待ち構えていたリリィーに抱きつかれる。
それだけ心配させたのだと改めて思った。
「ごめんね、リリィー。寂しかっただけだよね。もういなくなったりしないから、安心してよ」
「約束......ですよ」
「うん、約束だ。もし次勝手にいなくなったらその時は針千本でも飲まなきゃね」
「わかりました。でも心配なので......」
そう言う彼女はまるで子どものようにギューッと抱きしめてくる。
彼女の背中をポンポンとしていやると、尻尾を左右に振っていた。
そうして新たな一日がスタートしたのだった。
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