聖女か死神か
第61話〜聖女か死神か〜
さんさんと照りつける太陽の下を低空で飛んでいく雛鳥たち。
そんな雛鳥には希望の聖女が乗せられており、飛んでいきそうな帽子を押さえながらも、道案内をしてくれている。
そうしてついに聖王国の姿が見え始め、雛鳥は更に加速していく。
エクシアは唐突な加速に驚きながらも、体勢を低く保ち、空気の抵抗を少しでも減らす。
もうタイムリミットがすぐそこまで迫っていた。
〜聖王国〜
そうして聖王国の上空から内部へと侵入しようとしていた彼女らだが、意外にも国の警備は、薄く簡単に侵入できてしまう。
中央には噴水が見えており、今も綺麗な水が上から下へと流れ落ちていた。
「ここで大丈夫なのである。後は我が頑張るのみである」
そう言った彼女は握り拳を強く握り、中央にある大きな噴水の広場へと歩いていった。
噴水の前に立ち止まり、エクシアは魔法を唱える。
魔法陣からは鏡が現れ、エクシアを写し、また声は拡張されていた。
「皆の者、聞いて欲しい! 我は聖光の聖女、エクシアである! 」
その声を聞いた民衆は「エクシアだ......」と呟き、驚く者や笑う者、そして崇める者などと様々で、誰もがその場で動きを止め話を聞いていた。
「皆の者、今こそ目を覚ます時である! この国は今や教祖によって乗っ取られているのである! 我ら神が望むのは自由と平和、そして愛である! 罪のない獣人を追い払うなど我らが神は望んでおらぬ! そして今日の昼、この国は王国の手によってなくなるのである! 皆の者、我について来てはくれぬであろうか! 」
そう言ったエクシアだが、民衆は渋ったような表情をしていた。
もしついて行けば助かると言われても、自らの生活を捨てることになるかもしれない。
「信用できぬであろう! しかし、我は皆を失いたくはないのである。たとえ国や家や食べ物を失えど、命は一つしかないのである! お願いである。皆の者、目を覚ますである......」
エクシアの言葉が響いていない訳でもないようで、見た感じでは洗脳もあまり強いものではないのだろうが、あと一歩踏み出せないのは洗脳のせいかもしれない。
必死に訴えかける彼女声も虚しく、誰一人動こうとはしなかった。
「いたぞ、反逆者だ!! 捕らえろー!」
騒ぎに気づいた騎士たちがエクシアを囲うように集まってきており、今にも捕らえられそうになる。
しかし、エクシアは一切の抵抗を見せず、堂々と立ったまま訴えを続けていた。
騎士たちなど簡単に追い払える実力があるのに、わざと彼女は抵抗を見せなかった。
それだけ必死だったということだろう。
騎士たちも、そんな彼女を怪しく思ったのか、一気に距離を詰めるのではなく、ジリジリとその距離を詰めて行った。
「うおおおおお!」
雄叫びをあげるように、エクシアの背後を取った一人の騎士が、彼女を取り押さえた。
「皆の者! 我らは自由で平等な人である! もう一度見てほしい! 我らが目指した本当の楽園の姿を!!」
それでもエクシアの声は国中に響き続けていた。
止まるところを知らない彼女に騎士たちは口元を押さえつけるが、指を噛んだりと抵抗を見せた。
しかし、そんな抵抗など一時的な時間稼ぎしにしかならないだろう。
現に彼女は頭を押さえつけられ、とてもじゃないが話せる状況ではなかった。
数人がかりで押さえつけられる彼女を、目の前にして、民衆は誰一人助けようともしない。
それどころか、騎士たちはおもむろに剣を抜きエクシアへと向けた。
やはりこの国は滅びる運命なのだと悟ったリリィーは、エクシアだけを回収して逃げようと、噴水の方へと出て行こうとした。
しかしそんな時だった。
一人の男が恐る恐る立ち上がり、エクシアを取り囲む騎士たちに向かってこう言った。
「ま、待ってくれ、騎士様! 何も殺すことはないだろう! エクシア様はご乱心かもしれないが、人であればそんなことはよくあることではないか!」
そう男が言うと、他の人たちも徐々に声をあげるようになり、皆エクシアの解放を訴えていた。
しかし民衆に圧倒された騎士たちは、何を思ったのかさっさとエクシアを始末してしまおうと、両手で剣を振り上げた。
リリィーはまずいと思い、急いでエクシアの元へと向かうが彼女が到着するよりも先に、騎士たちは民衆の手によって地面へと押さえつけられていた。
目の前では、先程声を上げた男が騎士に飛びつき、押さえつけながらこう言った。
「エクシア様は、異国人であった私を快く受け入れてくれた。笑顔で毎日のように挨拶をしてくれた。そんなエクシア様を殺すなど、やはり貴様らは信用できない! 私はエクシア様を信用する!!」
その一言によって、民衆は呪いが解かれたかのように、自我を取り戻し、民衆はエクシアを囲う騎士たちを、ボコボコにしていった。
それにたまたま居合わせた者たちだけでなく、周囲からは続々と人が集まりだし、気がつけば凄い人数になっていた。
エクシアは解放され再び立ち上がると、一瞬涙ぐんだが力強よく杖を掲げた。
「我らに光を! 我らに救済を! さあ! 皆の者、我と共に参るである!」
その次の瞬間、民衆の声がどっと湧いてエクシアを崇めるように祈っていた。
〜お昼頃〜
王国の竜騎兵隊が聖王国へと到着しており、作戦の決行時間まで待機していた。
そんな中、突如聖王国の正門が開き始めて出てきたのは聖王国の民だった。
「メリーヌ様、リリィー様とエクシア様が民衆の説得に成功しました」
「そうかい。なら民の安全を確実に行ってね。僕は他の隊の子たちに伝えてくるから」
「はい、失礼します」
そう言って姿を消したのは、メリーヌ直属の暗部の者たちであり、色々な仕事を手足のように動いてくれていた。
そんな彼らの誘導と共に、竜騎兵隊が住民を保護していった。
ものの数時間ほどで移動が完了し、残すは聖王国にはびこる虫どもだけであった。
竜騎兵隊の準備も完了し、リリィーも配置についていた。
最終宣告として、メリーヌは魔道具を使い、聖王国へと声を響かせた。
「これより聖王国への総攻撃を仕掛ける! これは最終宣告だ! 大人しく投降すれば、命までは奪わない! 繰り返す......」
メリーヌの宣告は、再三と繰り返されたが反応はなかった。
恐れた騎士たちや貴族の豚どもが、白旗を振って、投降してくると思ったが、一切その動きはなかった。
メリーヌはため息をついた。
そしてついに予定通りの作戦が、実行されるようだった。
メリーヌが右手を大きく挙げると、リリィーの乗っていたミラージュからは、ものすごい熱気が発せられた。
また同時に魔法陣が浮かび上がり、聖王国全体に固有結界を展開するのだった。
「ヨグ様、私が貴方のために全てを終わらせます......。明日もなく、希望は潰え、夢は終わる......」
そう呪文を唱える彼女の目の前には、太陽のような大きさの青い炎の球体が出現し、その禍々しさはその場にいる全員を釘付けにした。
加えて固有結界の中では、レットキラーが咲き誇り、聖王国を飲み込んでいく。
それはまるで終焉の時のようであった。
「ヨグ様、愛しております......。貴方に、はびこるウジ虫どもは皆、罪人。さあ、罪人は罪人らしく......モエツキロ!!」
リリィーがそう言ったのと同時に、メリーヌは手を下げた。
「世壊の終わり!!!」
蒼き太陽が聖王国を飲み込んんでいき、焼き尽くしていく。
綺麗な道も建物も、何もかも焼き尽くし、まさに天災とも思える光景に居合わせた人々は唖然としていた。
いや、これは神の怒りをかってしまったのかもしれないと誰もが思った。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
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