王国対聖王国
第59話〜王国対聖王国〜
ヨグが気絶した後、聖王国の残党はメリーヌ率いる王国の竜騎兵隊により、一騎として残らず殲滅されたのだった。
そして現在では、森へ逃げていた獣人たちを保護し、その場を占拠して拠点としていた。
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〜緊急会議〜
メリーヌに加え、名のある竜騎兵隊の分隊長たちが集まり、会議を開いていた。
しかし、空気は悪く、ピリピリとした緊張感が場を駆け巡っていた。
「えー、まずは報告致します。獣人たちの保護は完了しました。続いて、この先のことですが、第七中隊としてはこのまま聖王国に攻め入るのは危険だと判断しております」
そう一人の分隊長が言い出すが、否定的な者もいた。
「いや! このまま領土内を侵攻し、聖王国に攻め入るべきだと私は思う! 先程の敵が聖王国の正規軍であるなら、兵力の乏しい内に殲滅した方がよい! もし敵に立て直されては、それこそ危険が大きなるやもしれん!」
「しかし、第一話大隊長! 敵の数とて未知数ではないか。我々の大義名分があるとはいえ、相手は三大国家の一柱、何か罠があってからでは遅いのだ! ならば時期に来る王国の本陣を待つべきだ」
「食料などの問題もある我々に、残された時間もそう長くはない! もし敵がそれこそ秘密兵器などを使われては、我々が全滅する可能性だってあるのだぞ!
それに我らが王国の『男爵』が被害にあっている以上、これは王国への宣戦布告であろう! さあ、戦争である!」
そんな熱中する中、黙って聞いていたメリーヌとリリィーは、一向に進まない会議に辟易し、眠気がでてきたくらいだった。
そして見かねたメリーヌが会議を一旦終わらせ、翌日会議を行うと言って、各自は持ち場へと戻って行った。
「メリーヌ様、お疲れ様でした。今日も結局何も決まりませんでしたね」
「リリィーもおつかれ。僕、もう疲れたよ! みんな、久しぶりの戦いで昂ってるのは分かるけど、ちょっと冷静さが足りないね。僕としてはヨグを連れて、すぐにでも帰りたいんだけどなー」
「はい! それは私も同じです。あっ、それでは私もこれで.......」
「待った! 一人だけ抜け駆けはさせないよ、リリィー。どうせヨグの所に行くんだろ。なら僕も一緒に行くよ」
そう言ったメリーヌはリリィーの手を握り、未だ眠っているヨグの元へと急いだのだった。
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あの戦いの後、気絶をしてしまったヨグ様はもうまる二日目を覚ましていませんでした。
一応王国の医療班(竜騎兵隊の医療を専門とする部隊)に診てもらいましたが、命に別状はないそうです。
しかし、こうも目を覚まさない主人に私の心は心配と焦りでいっぱいでした。
ヨグ様のいる部屋へのドアを開けると、シニエスタさんが座って祈りを捧げておりました。
「あら、リリィーさん! もう今日のお仕事は終わりですか?」
「はい! 結局何も決まりませんでしたけど......それでヨグ様になにか変わったことはありましたか?」
「いえ、未だ反応がありません。ですが、医療班の方々が、体の傷がもう治ったのかと驚かれておりました」
「あはは、ヨグ様らしいですね! えへへ、本当にっ......」
いつものように振舞っていたつもりが、いつの間にか目に涙を浮かべていました。
このまま彼が目を覚まさないじゃないかと思うと、心が締め付けられるように辛いのです。
私は今も眠り続けるヨグの手を握り、額へと当てた。
「大丈夫、暖かい......大丈夫ですよね、ヨグ様。貴方のためなら私は......」
それはまるで騎士の誓いのように見えていたでしょう。
でも私からすればこれは騎士の誓いのように生温いものなんかじゃないのです。
我が命、その心身、その全てをかけて、彼を守るという誓いなのです。
あの頃の奴隷であった私に手を差し伸べてくれた彼のように。
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〜翌日〜
再び会議が行われ、またその場には、聖王国の聖女「エクシア」が参加していた。
彼女は危険がないか分からない状態であったため、まる二日ほど監禁されていた。
しかし、彼女はこちらの質問に嘘なく答えたため、味方と判断したのだろう。
そんな彼女が増えたところでもちろん会議が進むとは思えなかった。
バンッ!!!
「ふざけるな! このままここに留まっていては兵の指揮も下がり、食料も底を尽きるぞ!」
彼は机を叩き、周りを威嚇するようにそう告げるが、他の皆は険しい顔をしていた。
もちろん彼の発言が間違っている訳ではない。
ただ攻め入るには死人だって出るやもしれないと考えると、迂闊には近づけないのだろう。
そんな時、昨日は傍観していたリリィーは握りこぶしをぎゅっと強く握り、ついに口を開いた。
「では聖王国を火の海にしてしまいましょう。それこそ再起不能なレベルで消し炭にしてしまえば、抗うともできません」
そう血も涙もないことを告げるリリィーにメリーヌは驚き、分隊長たちは引きつった表情を見せた。
今までは穏便だった彼女からこんな言葉が出るとは誰も予想しなかったのだろう。
「し、しかしだな、リリィー分隊長。それでは民間人も......」
「関係ありません。全員燃やします。先程聞かされた話によれば、聖王国は既に洗脳魔法とやらで民間人は皆、敵と判断して良いかと。であれば、聖王国自体を地図から消してしまえば終わる話です」
「そんな火力は誰が用意するというのかね! 我々、竜騎兵隊が総攻撃してもそんな火力はない!」
「それは、私であれば可能です。先立って、ミラージュさんに私の全力でどれだけ燃やせるか計測していただいたところ、聖王国の領土であれば、全て丸焦げに出来るでしょう」
そう声色を変えて言うリリィーの圧に押し負けて、周りは黙ってしまう。
しかし、同じく会議に参加していたエクシアはもちろん反対していた。
「認められないである! 幾ら民間人を巻き込むとはいえ、老若男女問わず皆殺しはさすがに正気の沙汰ではないのである!」
「そうですか。しかし、これが最前ではありませんか。私たちは無傷のまま、この戦いを終えられ、そして聖王国は滅びますが、生き地獄のままではなくなるのですから......」
そう血も涙もない発言に、メリーヌは先程から目を丸くしていた。
優しさの塊のようなリリィーが皆殺しを提案し、しかも冗談のようにも聞こえない。
彼女をここまで動かしているのは、おそらく目を覚まさないヨグの存在であった。
そして、会議はそのまま話がまとめられ、翌日の昼に実行することになった。
最後までエクシアは反対していたが、喚くなら外でやれと、リリィーが剣を突きつけたため、押し黙ってしまったそうだ。
また責任者であるメリーヌは立場上、王国のことを最優先しなければならないため、背には変えられないという思いで決断を下したそうだ。
そう、今回は運がなかったとしか言いようがないと、己に言い聞かせて......。
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そうして翌日の朝、リリィーはエクシアの元へと訪れるのであった。
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