抗戦
第58話〜抗戦〜
戦闘が始まってはや数十分、地面には数多の屍が積み重なっていた。
人間相手は聖光の聖女であるエクシアに任せ、自分は竜騎兵装や燃える者の相手をしていた。
俺の方は元々魔力量が多かったため、今でもなんともない。
それに加えエクシアの方は全ての攻撃が魔法であるため、彼女も相当魔力が多いのであろう。
特に彼女は周囲の光を吸収し、それを魔力を通して形を変え、武器としていた。
なんとも惚れ惚れしそうな魔法であったが、生憎俺は魔法が使えない。
そんなことを考える暇があるほど、聖王国の兵士一人一人の力量不足が否めなかった。
「フハハハハハッ!! どうである! 我が聖剣はまだまだ折れぬぞ! さあ、どんどんかかってくるがよい!」
そう高笑いで相手を煽るエクシアに、聖王国側の指揮官?のような人物が、指をさしながら喚いていた。
一番安全そうな場所にいるのにも関わらず、「なぜ死なない!」とか、「なぜ負ける!」などと、いかにも悔しそうだった。
「エクシアさん、相手が退いて行きますが?」
「なに、信仰心だけで動いてる者たちである。おそらく引いたと見せかけて、一気に攻めるつもりであろう。......ここからが正念場である! 気を緩めるでないぞ、ヨグ」
「了解しました。ですが、主力にしてはあまり手応えがないですね」
「うむ......我もそれは思っていたのである。聖女隊や聖騎士隊の姿は見えぬである。もしや一般兵だけで我らを倒せるとでも思ったのであろうか......」
「まあ、どの道警戒はしておいた方が良さそうですね」
「そうであるな!......おっと、もう来たである! 構え、ヨグ!」
そう言われ正面に向き直すと、先程とは何も変わらない敵の姿。
そして何一つ学ぼうとしない一斉突撃。
俺はため息が出てしまうほど呆れていた。
これほどまでに相手の策士か指揮官が能無しだと、勝てる戦いも勝てないのだろう。
「いでよ、聖光の聖剣!!」
そう叫んだエクシアの周囲には数多の光が集まっていき、剣を模した形に変化する。
そして一斉に聖王国の兵士たちに向かって突き進んでいった。
まるで雨に打たれるような感覚で、次々に剣が突き刺さっていく。
いつの間にか見とれていたが、気づけば近くに竜騎兵装三機が迫っていた。
しかし、俺の真横を通り抜けて、背後にいたエクシア目掛けて一直線に進んで行った。
「まずいッ! さすがに学習したか!」
一瞬行動が遅れてしまったが、急いでエクシアの元へと向かい、全ての攻撃を受け止めた。
「ぐぬぬ......重っ!!」
竜騎兵装三機分の力が合わさっただけあって、その一撃はとても重いものだった。
そんな間でもエクシアは恐れを知らないのか、高笑いをしながら、手には魔法陣を浮かべた。
「ハハッ!! ヨグ、頭を下げるである!」
言われた通り頭を下げると、背後からは大きな光の槍が飛んできた。
竜騎兵装は三機とも串刺しとなり、その場に崩れ落ちた。
「我をあまり侮るでないである!! 」
なんとも逞しい聖女様だが、さすがに彼女も疲れが見え始めていた。
「ヨグッ! 次が来るである! さすがにもう一度あれは出せぬである」
「ええ、わかりました。俺が前線に出ます!」
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〜一時間後〜
「はあ、はあ......」
地面にポタポタと垂れる汗、また足のやり場がないほど敵の亡骸で埋まっていた。
「無事ですか、エクシアさん!」
「ああ、何とか......であるが。さすがに量が多すぎるのである!」
確かにこの数時間、何度倒しても聖王国の兵は尽きることがない。
無尽蔵という訳ではないだろうが、余程エクシアさんを潰したいのだろう。
そんなお互い疲労が溜まった状態で、次の戦闘が始まろうとしていた。
突如纏っていた魔力が分散し、元の姿に戻ってしまう俺。
己の魔力が尽きたわけでもなく、集中しても魔力が集まらなくなったのだった。
するとエクシアさんは何かを察したようにこう言った。
「ヨグ、逃げるのである......」
「何を言って......」
そんな彼女の言葉も虚しく、目の前に現れたのは十二人の騎士だった。
「まずいのである。あれは我が国が誇る最高峰の十二騎士『聖騎士隊』である。おそらく、敵の狙いにはめられたのであろう。はなから消耗戦とは笑わせるである」
「魔力はありますが、上手く扱えない」
「我が国の対魔法剣の影響であろうな。あれは周囲から魔力を奪う性質を持つである。まあ、我はとっくに魔力は限界を向けているであるが」
「つまり、今めちゃくちゃやばい状況ってことでいいですよね」
「つまるところ、そういうことである。消耗した我らのに本命をぶつけてくるなら絶好のチャンスであるからな。さて......」
するとエクシアさんは立ち上がり、杖を構えるがその輝きは失われていた。
「ヨグ、さすがに逃げるである。ここまで付き合ってくれたことには感謝するであるが、そなたをここで失うことの方がまずい」
彼女は諦めていないように見せかけて、内心は諦めていたのだった。
先程まで高笑いをしていたのが、まるで嘘であるかのように、覚悟を決めた顔をしていた。
だからといって俺が逃げる理由にはならなかった。
もしかしたら死ぬかもしれない状況だが、生憎俺は一度死んでいる。
しかも覚悟もクソもない状態でだ。
幸運なのか不幸なのか分からないが、この二度目の人生に恵まれて、今度こそはドラゴンになれるかもしれない世界へと来れた。
だからこそ、こんな場所で終わってなどいけない。
俺は必死に考え、この状況を打開する方法を探った。
「ヨグ、どうしたのである!! 早く逃げるで......」
全身甲冑で覆われた騎士たちは、一斉にエクシアさんへと襲いかかる。
彼女は悔し涙を浮かべ、決死の思いで目の前の脅威に立ち向かおうとする。
しかし、俺はそんな彼女を庇い、十二本の剣先が身体中を蹂躙した。
「グハッ!! 」
「ヨグっ!! 今すぐ離れるのである!!」
エクシアの声も虚しく、その場を退こうとはしない。
それに血反吐を吐いたのはいつぶりだろうか。
そんなことを考えつつ、現実では痛みで泣き叫びそうなのを我慢した。
そして俺は口を拭うと同時に、先程から溜めていた魔力の波動を放った。
もちろん魔力はどんどん剣に吸収されたが、それでも充分な威力であっただろう。
波動は大きく空気を揺らし、相手の脳を揺らすように振動する。
それにより、一部の騎士はその場で倒れたが、直撃を避けた五人は再びこちらに攻撃を仕掛けてきた。
大ぶりの兜割りをするように、脳天めがけて剣を振り下ろそうとする。
しかし、そんな時だった。
「ヨグ様の前から消えろ! 竜槍投擲!!」
突如として声が空から聞こえると同時に、残りの騎士たちは真っ赤な炎に焼かれてしまう。
その様子を見届けた後、俺は神経が切れたかのように倒れそうになる。
「ヨグ様!!」
しかし、倒れかけた瞬間、何者かによって支えられ、地面との接触を免れた。
また触れられた箇所はとても暖かく、懐かしい感覚に襲われた。
そして俺はゆっくりと目を開けて、その者の顔を見てこう言った。
「ただいま、リリィー......」
そう言うと同時に意識をなくしてしまった。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
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