闇に飲み込まれし聖王国③
第57話〜闇に飲み込まれし聖王国③〜
ドアを開け最初に目に入ってきたのは太陽の光だった。
太陽の光はまるで目に何かが入った時のような鋭さがあり、また少しの間、ぼんやりと周りを惑わせたような視界へと変えた。
そして目の前には二人の人物がおり、俺はその一人を見て驚いてしまった。
「し、シニエスタさんッ!?」
そう大きな声を上げると、シニエスタ本人も口元を押さえてびっくりした表情を見せた。
「ヨグさん? ヨグさんじゃないですか!? なぜこのような場所に......」
突然の再開に戸惑ってしまう二人だったが、依然としてリアさんは警戒心を剥き出しだった。
「少年の知り合いなの?」
「ええ、王都の学園に通っていた時にお世話になった人ですよ」
「まさかこのような場所で貴方様に出会えるとは......我が主も我らを見捨てていないかもしれませんね」
そう言って彼女は手を合わせて祈るポーズをしていた。
するとそんな彼女を見かねたもう一人の謎の人物が口を開いた。
「シニエスタの知り合いなら信用しても良さそうであるな......。まずは自己紹介をしよう。我は聖王序列一階の第一位、エクシアである。聖光の聖女と言われておる!」
そう堂々と宣言するように声を上げた少女?は綺麗な緑色の瞳に、同じ色のツインテールが特徴的だった。
シニエスタのように黒髪ロングで、大人っぽい印象とは真逆と言えるかもしれない。
するとエクシアはこちら目線を移し、俺にも自己紹介をしろと言わんばかりの視線を送ってきた。
「俺は男爵第二位のヨグ・ランスロットです。今は訳あってここにお世話になっております」
挨拶をし終えるとエクシアは満足そうに「うむ!」と返事をし、席へと再び座った。
「お互い敵同士とはいえ、対談を受け入れてくれたことに、誠に感謝である。しかし、まだ警戒を解くほどの仲ではないが......どうか我らの話を聞いてほしい」
「ええ、もちろんですよ。その為に俺はこの場に呼ばれたのですから......」
そしてついに敵同士ではあるものの、対談という頭脳戦が開幕したのだった。
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「ではさっそくだが今、我ら聖王国がは存亡の危機に陥っているのである。もちろんそなたら獣人、亜人への侵略行為もその一環であろう」
「待ってください。聖王国は獣人や亜人が、異端だと考え、侵略していたのではないのですか?」
「馬鹿者ッ! 本来であるならば、そのような差別はしないのである! しかし、あの男が来てから全てが変わったのだ!」
「あの男?」
「そうだッ!! あの男、今や教祖にまで成り上がりこのような醜い争いを生んだ張本人である! して、その者の名はネムレリーである!」
「ネムレリー......初めて聞いた名ですね。リアさんは知っていますか?」
リアさんにも一応聞いてみたが、彼女も知らないと首を横に振った。
「それで、そのネムレリーは一体何を企んでいるのですか?」
「やつの狙いは......分からないのであるが、聖王国の国民は皆、やつを信用しきっておるのだ。頼れる存在が近くにあるだけで人は考えが甘くなりやすい。それ故に洗脳魔法と言う邪悪なものにも対抗できずにいるのだ!」
「国民に洗脳魔法を!?」
「ええ、そうです。教祖様は凄腕の魔術師ですので.....」
急に話し出したシニエスタに一同驚いていた。
「シニエスタ、急に話すでない! 驚くであろう!!」
「あら、ごめんなさい。祈りを終えたら話が進んでいたので......」
「はぁー、そなたの信仰心や学びに関しては素晴らしいのだが、少々信仰心が高すぎるのも考えものである」
そう言われ照れているシニエスタは顔を手で覆ってしまった。
「では話を戻すが、やつは洗脳魔法を使い聖王国を実質乗っ取っているも同然なのである。このままではやつの思い通りになってしまうのである。それに国力強化などと申して、貧民街の老若男女を攫い、人体実験をしているのも確認済みなのである」
そう言って彼女は拳を強く握り、悔しそうな表情を見せた。
その表情からこの話しが、本当であることも分かった。
しかし、現状あちらは、国自体を乗っ取ってることになるので、さすがに手の施しようがなかった。
もしこの場にメリーヌがいたら王国の力も借りれたが、今はそうもいかなかった。
「あのー、一応確認ですけどこの場以外に洗脳魔法から解けている人はいるのですか?」
「我ら以外で言うならば......静かなる耳、我の暗躍部隊と、小規模の騎士たちだけであるな。だが圧倒的に数が足りない状況である」
「そちらだけで解決する見込みもないと?」
「だからこそ、こうやって助けを求めているもである!! 我らだって今すぐにでもこのようなことは辞めさせたい! しかし、力が足りぬのである......。頼む! 我らともに戦ってくれぬあろうか!」
そう言って彼女は机に額を擦り付けて助けを乞うた。
気づけば彼女の手のひらからは、血が滲むように垂れており、それだけ強く握っていたことがわかった。
俺も話を聞いて助けたいのは山々だが、今は獣人や亜人たちの方を優先したかった。
そうして己の中で葛藤していると突如として、後ろのドアが力強く開けられた。
「た、大変です、リア様!!」
「どうしたの? 今は大切な対談中で.....」
「は、はいっ! それはわかっていますが、聖王国の連中が攻めてきました! 目視だけでも数は前回の二倍以上です!!」
「クッ、分かった......遊撃の準備をして!! 門前で迎え撃つ!」
「は、はいいぃ!! すぐに戦える者を用意......」
「待つのである!」
机をバン!と叩いて声を上げたエクシア。
その机の音と彼女の声によって、先程の慌てようは嘘のように消えた。
そして一同が彼女方へと視線を向けると、彼女は胸につけていたペンダントを握り、決意したようにこう言った。
「おそらく、その兵どもは我らを追って来たものだろう。ならばこれ以上、そなたらに迷惑はかけられまい。我一人で行くのである!」
「なっ......」
そんな突拍子もないことを言い出した彼女は、すぐさま出ていこうとした。
しかしシニエスタが腕を掴んで離そうとしなかった。
「シニエスタ、そなたはよくぞ我に着いてきてくれたのである。我もそなたが聖女として人々を導くことを楽しみにしておった。しかし、それも叶わぬかもしれないであろう」
「しかし......やっぱりエクシア様、私も一緒に行きます! 貴方様一人にそんなことはさせられません!」
「馬鹿者ッ!!!!」
今までで一番大きな声を出すエクシアに、シニエスタは狼狽えてしまう。
「我は聖光の聖女である! 若い芽を摘ませるなど、絶対にさせないのである!! それに、今回の軍勢から察するに、おそらくは聖王国の主戦力である。連戦続きの獣人、亜人たちでは確実に勝てないのである」
「し、しかしッ!!」
「わかって欲しいのである、シニエスタ。我ら聖王国を救えるのは獣人、亜人たちの協力が必須なのである。こんな場所で腐らせる訳にはいかないのである!!」
そう言ってシニエスタの手を解き、リアさんに森の奥へと逃げるよう伝えていた。
リアさんも最初は驚いていたが、逃げるよう催促された時には死なないでと、手を握っていた。
絶望の表情を浮かべるシニエスタをリアさんが連れて行く。
俺もその後に続くように、ついて行こうとすると、ついエクシアの顔を見てしまった。
彼女は、笑いながら泣いていたのだった。
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そしてその後は早くも、獣人、亜人たちは森へと逃げていき、戦場となるこの地には聖光の聖女、エクシアただ一人だけが残っていた。
「よし、行くのである......」
そう言った彼女は背負っていた杖を片手に、村の大扉を開いた。
履いていたブーツの鈍い音が鮮明に聞こえてくる。
まるで死を知らせるカウントダウンでもしているかのように。
しかし、そんな彼女のの横に突如として現れた者がいた。
「な、何をしているのである!? そなたも早く逃げ......」
「エクシアさんは言いましたよね......若い芽は摘ませないって。要は若い者が死ななければいいってことです。俺はもちろん死ぬ気はありませんし、それにシニエスタの騎士でもありますから。彼女の大切な人が死ぬのを、見て見ぬふりをして、のうのうと生きているなんて、そんな生き恥は晒せません!」
「......はは、ハッハッハッハ!! まさか若い者に説教される日が来るとはな! これは愉快愉快、それでは覚悟を決めるである、ヨグ! そして一つ約束である!」
「約束?」
「うむ! 約束である。 我の前で勝手に死ぬことは許さぬである。もし死んだら我が一生付きまうであろう」
「はは、それは怖いですね。ですがその約束はお互い様......ですよ!」
そう言って魔力による、擬似的な竜騎兵装を纏った。
「ハハッ! ならばこの聖光の聖女エクシア! 我の本気を見せるである!!」
そうお互い約束を交わし、大切なモノをかけた大勝負が始まった。
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