魂の輝きを
第52話〜魂の輝きを〜
聖王国と大隊がぶつかり合ってはや半日。
お互いに消耗はしているが、持久戦となればこちらが、圧倒的に不利になることは目に見えていた。
しかし、中には例外もいる。
例の死神のことガルグは敵地のど真ん中で暴れていた。
さすがと言うべきなのかは分からないが、彼が倒れれば、こちらは終わりだ。
私は武器のリロードを済ませ、再びスコープへと目を通す。
敵味方が混合する中では狙うのも一苦労だが、無理に頭を狙う必要もなかった。
例えば、敵の手足を撃ち抜けば、あとは味方が処理してくれるからだ。
「一人、二人......三人......」
そう呟きながら何度も引き金を引いていく。
スコープに映るのは敵の悲痛な表情と、赤い色の液体のみ。
しかし、聖王国の新兵器であろう、燃える人種は違った。
引き金を引いて、足を貫こうが、頭を吹き飛ばそうが、火花が散るだけで、表情も赤い液体も映ることはなかった。
まるで人形でも撃ってるような感触で、私は少し戸惑ってしまう。
人の命を奪う、その重みが感じられないためだろう。
そんな時、大きな爆発音とともに、私の真下にいた敵味方が吹き飛ばされていた。
どうやらあの燃える人種は爆発するらしい。
しかも爆発が起きた後、地面には火が残り続け、一定時間の間は誰も寄せ付けなかった。
「ガルグ大隊長、こちらリア。例の新兵器は爆発する様です。お気をつけて」
「うん、わかった......」
通信は途切れてしまうが、相変わらず死神は一歩も退かなかった。
「援護射撃は......要らないかな」
彼も相当疲れているはずだが、一向にその攻撃を緩めることはない。
それに新兵器が爆発しようと近づいても、逆に爆弾のように敵へとぶつけていた。
やはり彼は化け物なのだろう。
しかし、そんな希望もすぐに消え去ってしまうことになる。
それは一時間後の出来事だった。
戦況は落ち着きを取り戻し、私たちが優勢かと思われていた。
「リア、弾が切れた。一旦戻る」
そう言われたので、援護のために私は彼の方にスコープを向けた。
彼が戻り、弾を補給するまでは、持たせなければならない。
私は彼を追ってくる敵を撃ち抜いていき、できるだけ数を減らしていく。
溢れた敵は下で構えている味方が処理してくれるだろう。
そう思っていた時だった。
「リア、逃げろ」
突如聞こえた声と共に、彼は立ち止まり、こちらを見ていた。
何を言ってと私は不思議に思っていたが、すぐに理解させられた。
それは突如現れ、たった一撃で大地を切断し、陣形も何もかも破壊された。
「りゅ、竜騎兵装!? こんなもの持ってなかったんじゃ......」
私は驚きのあまり、判断が遅れてしまう。
気づいた時には、背後に回っていたもう一匹の竜騎兵装に、高台から下ろされてしまった。
空中に投げ出された私は、応戦しようと武器を構えて引き金を引いた。
しかし、その銀色に輝く装甲によって弾は、弾かれてしまった。
幸いなことにこちらへの被弾はなく済んでいる。
地面に着地後も何度も弾を当てるが、意味を成していなかった。
「リア、遠くに逃げろ......」
そう後ろから聞こえてくると同時に、風を纏うように颯爽と現れる死神。
そして竜騎兵装相手に一歩も退かず、一回の攻撃で右翼をもぎ取った。
「ありがとうございます!」
私はそれだけを言い残し、その場から離脱する。
そして後ろには副リーダーの指示により、第二大隊が構えていた。
私は安堵し、合流しようと急ぐ。
しかし、それは一瞬の事だった。
走る私の目の前に突如として現れた光とともに、第二大隊は大きな爆発に巻き込まれた。
当然私も吹き飛ばされるが、怪我はない。
「な、なにが起きて......」
目の前にいた大勢の兵士たちが一瞬にして消え去ってしまった。
私は終始困惑し、理解が追いつかなかった。
そんな私背中を押してくれるように、死神は大きな声を出した。
「リア!! ここは俺が持たせる。だから仲間と一緒に撤退しろ!!」
「.......で、でも!!」
「大丈夫、俺は戦うだけだから.....」
その言葉を聞いた私は、悔し涙を浮かべながらも走って逃げる。
道中に仲間たちを引き連れて逃げていく。
たった一人の英雄を置いて......。
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「それで命からがら逃げ着いた先がここだったわけ! まあ、道中で私も被弾しちゃったからなー」
話を聞いていたテペウスは目に涙を浮かべ、それを隠すように目を手で覆った。
そんな中、リアはご飯を頬張って、尻尾をフリフリと振っている。
正直見ていて、その温度差に驚いてしまったが、俺も一応神妙な顔をしておいた。
すると、いきなりドアが開けられ、一人の獣人が焦った表情で入ってきた。
「大変です。 聖王国の兵士たちが攻めてきました! 数は約五万です!!」
「何ッ!! もう攻めてきたのか!? まずいな、こちらの戦力などたかが知れてる......」
そう深刻に告げるテペウスの横で、ご飯を食べ終わったリアが、着替えと武器を取り出した。
おそらく戦う気なのだろう。
しかし、そんな彼女をテペウスは止めた。
「リア、これ以上の戦闘は無理だ。まずは森に避難し......」
「森に逃げたところで、あいつらはすぐに追いつくよ」
「し、しかしッ!!」
「はぁー、私たちは兵士であり、誇り高き獣人。そんな私たちが仲間を見捨てて逃げましたー、なんて言ったらガルグに怒られちゃうよ」
「お姉ちゃん!!」
リペは涙目になりながらも彼女に抱きつく。
そしてリアはリペをぎゅっと抱き締めた。
「大丈夫だよ、リペ。私も皆の避難が終わったら、すぐに森に逃げるから......」
「うん、待ってる。だから絶対に帰ってきてね......」
「うん、いい子にしててね。......それじゃあ、記憶のない少年!!」
「は、はい?」
「私の大事な妹を頼んだよ......」
そう言われた瞬間、俺の心中では騎士としての血が騒ぎ立て、命に変えても守ろうと誓った。
それを表すように俺はあのポーズを取り、騎士の誓いを宣言する。
「はっ、命に変えましても!」
「アハハ、これで心配はないね!!」
そうして、約束を交わしたリアは武器を担ぎ上げて、ドアの向こうに広がる戦場へと再び歩き出したのだった。
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〜数時間後〜
テペウスの指示により、兵士として動ける者以外は森への避難を強制し、特にお年寄りや子どもたちなどが優先して森に入っていく。
未だ、爆発音などはしないため、戦闘にはなっていないのだろう。
俺はリペの手をしっかり握って、彼女から離れないようにしていた。
「ねえ、ジーク」
「ん? どうしたの?」
「お姉ちゃん、大丈夫かな.....私、怖いよ」
その怯えるリペの姿を見て、俺はリリィーの出会った頃の思い出が蘇っていた。
「リリィー.....」
「へ?」
「ああ、いやなんでもないよ。ほら! 先を急ごう! 俺たちがはやく行けば、お姉さんもはやく逃げられるからね!」
「う、うん!」
そう言われて、リペは無理に笑顔を作っていた。
そんな姿も、彼女そっくりで、俺は心が抉られる感覚に襲われた。
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その頃、リアたちは......。
獣人、亜人の兵士たち、またまだ動けるであろう者たちを含めた、総勢千人の者たちに向けて、リアは声を出した。
「皆聞いて! おそらくここにいる大半が恐怖で押しつぶされそうになっていると思う。でも! 私がここで戦はなければ、明日はない!! 明日が欲しければ抗え! 今こそ、私たちの魂の使い時だ! 聖王国の犬どもに本物獣を見せてやれ!!!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」
一斉に雄叫びを上げる一同。
先程までの空気が嘘のように変わっていた。
そしてついに獣人、亜人の存在をかけた大勝負が始まろうとしてた。
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