ビーストライン
第51話〜ビーストライン〜
俺が目覚めて半日が経過していた。
意識がなかった獣人たちは続々と目を覚ましており、リペの姉もその一人だった。
「もぐもぐ......これ美味しいよ〜!! 」
既に三人前を食べているのに、その胃袋は今も鳴りっぱなしだ。
良くも悪くも俺の取ってきた肉がどんどんなくなっていく。
怪我の治ったばかりの人に肉を食わしていいのかは不明だが、美味しそうに食べてくれれば、俺としては満足だった。
「それで、もぐもぐ......ゴクッ!! それで、貴方がリペの助けた......ジーク君だっけ?」
「え? あっ、はい!」
「ふーん......なかなか見る目あるじゃん! でも残念、私の可愛い可愛い妹はあげられないなー」
「いえ、俺は助けられたからその恩を返したくて......」
「そういえばまだ記憶が戻ってないんだって? それは不憫なことだね」
そう冷たく告げる彼女はどこか俺を嫌っているようだった。
しかし、俺の記憶は既に戻っていた。
これまで同様に、記憶のない振りをして過ごしているのは、そっちの方がやりやすいからだ。
騙していると言われればそれまでだが、まだバレる様子はなさそうだ。
そんな時、手前のドアが開き、現れたのはテペウスだった。
久しぶりに会えたが、前よりも少しやつれている様子だった。
「取り込み中失礼する。リア、体の調子はもう大丈夫か?」
「うーん......本調子じゃないけど大分マシかなー。でもあの傷よく治せたね。普通じゃ治らないものだったのに......」
「私も驚いているよ。ジーク少年には感謝しかない。それから戦況のことで、聞きたいことがあるのだが......」
そう呟くような声量で言うテペウスはどこか浮かない表情をしていた。
おそらく、あの酷い傷を見て遠慮しているのだろう。
「別に気にしてないから話すよ、テペウス。私たちは兵士だからね。そうだねー.......あれはね、半月くらい前なんだけど......」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも通り、私たちは最前線であるビーストラインで防衛をしていた。
崩れ落ちる廃墟の壁や穴だらけの地面。
ここは昔、獣人たちの住む街だった。
大きな石の壁で覆われ、中心部分には市街地が広がっている。
しかし、聖王国の侵略により、その大半は破壊された。
私たちにとって、ここは思い出の土地であり、同時に殺し合いの最悪の土地であった。
私たちは大隊ではなく、機動性を活かした小隊で、索敵や市街地などの戦闘を得意としていた。
だからこそ、この土地とは相性が良く、敵を欺いたり遊撃したりするにはうってつけだ。
そしてある日の昼過ぎ、索敵をしていた仲間が聖王国の姿を見つけ、私たちは遊撃の準備に入った。
「こちらリア、敵が南門を突破し市街地へ入る」
「了解、リア。こちら遠距離部隊の準備は万全だ。いつでも仕掛けられる」
「それじゃあ、合図をしたら一斉に......」
魔道具の通信を使い、敵を遊撃しようと合図を待っていたその時だった。
「まずい!! リア、これは罠だ!!」
そう魔道具から聞こえたと同時に、私と背後にいた三人の仲間は、物凄い爆発音とともに吹き飛ばされていた。
その衝撃で吹き飛んだ私は廃墟の壁に激突し、気を失ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いてて......」
目が覚めると同時に、当たりを見渡すと、そこには一面火の海になった市街地だった。
「な、なにが......」
急いで通信用の魔道具を拾い、近くの仲間に呼びかける。
しかし、どの小隊も応答することはなく、魔道具は静かなままである。
「こちらリア! 返事ができる者はいないか! 応答してくれ!! ......クソっ!!」
やけくそになり、魔道具を地面に叩きつけた。
あの爆発の後、一体なにが起きたのかも理解できず、大隊にも連絡が取れない。
最悪の状況だった。
私は一度呼吸を整え、体の傷を確認すると、幸い軽い切り傷だけで済んでいた。
地面に落ちていた愛用の火薬武器を手に取り、市街地へと向かった。
市街地へと入ると、火とその煙が充満して鼻がもげそうだった。
比較的火の手が薄い路地裏辺りを進んで行くと、大広間に続く道を見つけた。
大広間には私たちの他の仲間がいるはずだ。
私は期待を胸に急いで向かう。
しかし、そんな希望など見事に砕かれてしまう。
「そ、そんな......なんで、なんでッ!!」
大広間には戦った形跡があり、また丸焦げになった死体がいくつも転がっていた。
かつての仲間たちがこんなにもあっさりといなくなってしまう現実に、私はもはや何も考えられなかった。
いつもならくだらないことで笑いあった仲間たち。
そんな彼らもいつかは死ぬとわかっていて、それが今訪れたに過ぎない。
そのはずなのに、わかっていたはずなのに、私は涙を堪えきれなかった。
せめてもと思った私は、死体の中から鉄を彫って作ったネームプレートを手に取り、内ポケットへとしまった。
「みんな、必ず持って帰るから.....」
私はそう言い残し、大隊の控える市街地を抜けた森へと向かったのだった。
しかし、それももう遅かったようだ。
森に着くと、森は火の海へとなっており、その奥には聖王国の兵士たちの姿が見えた。
私は急いで森を迂回し、何とかして大隊へと合流したが、既に戦闘は始まっていた。
「ガルグ大隊長! 小隊長のリアです。ただいま帰還しました」
「リア、生きていたか。仲間は......殺られたか」
「はい......」
「そうか......」
銀狼の獣人のガルグはそれ以上何も言うことはなく、相変わらず無表情のままだった。
彼は戦闘では無類の強さを誇り、その無慈悲な戦い方から、仲間からは「死神」と呼ばれている。
そんな彼がどんな奴なのかは私もあまり知るところではなかった。
「リア、帰ってきてすまないが遊撃の準備だ。今回も俺が出る。後方の指揮は副団長に任せる」
「へいへい、わかりましたよ旦那」
そう怠けたように言い放っているのは、鳥人のグリルだ。
彼は死神の右腕と呼ばれている。
まあ、簡単に言えば死神のサポート全般を行っている奴だ。
死神ほど戦闘で強いわけではないが、戦況の見極めに関しては群を抜いている。
そんな彼ら大隊による、ビーストライン防衛戦が幕を開けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
戦火の中、お互い一歩も譲らない接戦を繰り広げていた。
数は圧倒的に聖王国側が有利だが、種族的アドバンテージを取れているのはこちらだ。
聖王国が人族のみに対し、こちらは他種族の軍隊であり、体格も魔力も上回っている。
しかし、聖王国がいつまでも鉄の槍と盾を使うような馬鹿ではなかったらしい。
奴らは、新兵器を投入し、その戦力は獣人や亜人たちを苦しめていた。
「こちら第四六中隊、謎の燃える人種に遭遇!! 持ちこたえるので精一杯だ!! 応援を頼む!!」
「こちら第六六小隊、仲間が二人殺られたッ!! 本部にもどっ......うわああああああ!!!」
「こちら南側、第四中隊。ただいま交戦中! 」
各方面からの連絡が届いており、本部の通信部は大慌てだった。
そんな中、私を含む第一大隊は、本部の前方に位置する敵と睨み合っていた。
高台からスコープを覗き、相手の出方を伺っていた。
「リア、状況は?」
そう淡々と言うガルグは大隊の戦闘で待ち構えていた。
「燃える体の人種......おそらく新型兵器でしょう。できるだけ接近戦はよした方が良いかと.......」
「まあ、俺は殴るだけだから......」
「はぁー、そういう時だけ脳筋なんですね、大隊長」
くだらない話はさておき、聖王国側が進軍を始めた。
それに合わせて大隊長は指示を出し、ついにその戦の幕が切られた。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
毎度のこと今週も更新の時がやってまいりました。
さてさてこんかいはどうだったでしょうか?
少しでも面白いと思っていただけたら幸いです!
毎回コピペだと面白くないので、一言追加!
PVが安定しなーーーい!!
最後に感想とブックマーク、そして評価(☆☆☆☆→★★★★)をしてくれると、大変喜びます!




