記憶の破片
第49話〜記憶の破片〜
「名も無き竜の解放を!!!」
その青き輝き共に一面に咲く花たちは、疲弊した兵士たちを癒し、悪しき罪火を消し去っていく。
まるで、かつての聖女が起こした大奇跡のような光景に、周りでドタバタしていた連中は目を疑っていた。
その影響はその場だけでは留まらず、世界各地へとその青き波動が広がっていた。
魔力に敏感な者ならその波動を感じ取るなど造作もないこと。
王国にいるリリィーやメリーヌはしっかりと感じ取り、またその身を隠しているニーズヘッグは急いで波動の原点へと向かう。
そんな中、少年はフラフラとして、意識をなくしたのだった。
「じ、ジーク!!」
少年が地面と接触するスレスレでリペは抱き抱える。
「どどど、どうしよう!? ジークが、ジークがぁ!!」
「いかん! すぐに医者を連れてくる!! リペはそのまま待機しててくれ!」
その後、テペウスは手の空いた医者を呼んできて、少年を見てもらう。
またその間にも、騒然とする現場で指揮を取り、回復した兵士たちを運んでいく。
しかし、中には既に息を引き取ってしまった者もいたため、身元を調べ、順に対処して行った。
なんだかんだで時間は過ぎていき、既に夕日が顔を出していた。
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「うう......」
目が覚めると、そこはフワフワとした視界で、幼馴染の部屋のドア前だった。
しかし、あたりは燃えているが、暑さも煙たさもない。
あるのは、不可解な意識と失われた記憶だけだった。
彼女を火事から助けるために飛び込んだことも、つい最近のように覚えている。
そんな中だが、不思議とここは現実じゃないと思ってしまう。
すると大きな揺れが起こり、火がさらに強くなる。
「犬崎沙鳴......そうだ、沙鳴!!」
ふと思い出したように、この名前が出てきた。
ずっと忘れていた幼馴染の名前。
その名前を忘れないように、心の中で呼びながら目の前のドアを開いた。
ドアの向こうには彼女の部屋が広がっており、所々燃えている。
しかし、彼女の絵だけは無事で、そこには綺麗な海と小さな家が一つ書いてある。
そう、彼女の絵は完成していた。
ここで物語の終わりを告げるかのように、絵は完成されていた。
そしてその反対側に目を移すと、俺は絶望した。
「沙鳴! 嘘だろ沙鳴!!! なんで、なんでなんでッ!!! こんな...こんなことって......」
目の前には体を何ヶ所も刺され血を流し、首を吊られ死んでいる彼女の姿があった。
俺は受け入れられず、その場で吐き戻した。
また火の手がくるのを待ちわびるように、その場で丸くなってしまう。
嫌だ、嫌だと心の中では叫ぶが彼女はもういない。
そんな状況に理解など到底できず、ただただ泣いて謝ることしかできなかった。
そんな時だった。
「カコヲ...クラエ! アラガエ!! コワセ!!!」
そうどこからともなく聞こえてきて、絶望の淵にいた俺をすくい上げてくれた。
俺は立ち上がり、再び絵へと目を向ける。
じっと見つめてみると、この絵は俺が描いたものだとわかった。
こんな絵を彼女が描くはずがない。
なんて言ったって、彼女は外に出かけることなどできなかった。
そんな彼女がこんな絵を描くわけがないのだ。
思い出すんだ。
彼女が描いた絵を...あの時の記憶を!!
その後は何度も彼女の描いたかもしれない、絵を描いていくがどれも違った。
何故、彼女が絵を描こうとしたのかも忘れてしまっていた。
いや、忘れたのではなく、思い出したくないのだろう。
考えろ、考えろ!! 思い出すんだ!!!
自らが閉ざしたこの記憶のその全てを。
破壊され、忘れ去られ、なきものへと変わり果てたこの記憶。
俺は思い出さなければならない。
俺は抗わなきゃいけない。
全ては彼女を救うため、いやもう一度彼女に笑顔を!!
その瞬間、忘れていた彼女の記憶が蘇ってくる。
しかし、どれも絵を描いてはいるが、それがどんな絵かはわからない。
分からないが、彼女はいつも俺を見て笑っているんだ。
「彼女が笑顔になるもの...」
そう呟き、横にあった筆をとり、彼女が笑顔になるものを描いていていく。
その間にも火の手はどんどん迫っており、既にドア前は大きな火で塞がれている。
彼女が好きなものを描いていくが、一向に状況は変わらない。
「分からない。分からないよ沙鳴......君は何故笑っているんだ。俺には、分からないよ!!」
「竜騎...」
「ん?」
「竜騎!」
「さ、沙鳴? 沙鳴なのか!!」
「...」
「あはは、おかしいな。幻聴が聞こえてくるなんて...」
「竜騎、後ろだよ」
そう言われ振り返る。
そこには先程のような無惨な姿の彼女ではなく、椅子に座り、いつも通りの彼女がそこにはいた。
〜???〜
気がつけば俺は真っ白な世界で突っ立っており、目の前には絵があり、後ろには彼女がいる。
「竜騎久しぶりだね」
「沙鳴...ごめん、俺は君を......君を助けられない」
「ふふ、あはははは!! 竜騎、君は...君ってやつは本当に面白いよ。竜騎、私はもう充分、君に助けられてるよ。だって覚えていてくれたじゃないか。私の事をね」
「そんなッ!! 覚えているなんて当たり前だろ! いつも沙鳴だけが理不尽の対象になるんだ。俺が、俺が君を助けてあげられば......こんな目にはッ!」
「相変わらず竜騎は優しいね。でもね、私はいつだって幸せだったよ。だって私には君がいつも隣にいてくれた。君が隣にいる時間はあっという間だったけど、とても楽しかった」
「やめてくれ......」
「どうして?」
「そんな笑顔を見せないでくれ......」
「でも竜騎は私の笑顔が見たかったんでしょ?」
「そうだよ......でも俺にその資格はない」
「はあー、君はいつからそんな堅物になったのやら......そうだ! ねえ、竜騎。人が死ぬのはいつだと思う?」
「人が死ぬ......寿命とか?」
「肉体的には色々あるけどね。でも一人の人として死ぬのは......忘れ去られた時なんだよ」
「忘れ去られた時......」
竜騎は分からなそうに顔を傾げると、沙鳴は立ち上がり近づいた。
その足取りはゆっくりだったが、確実に世界を歩いていた。
「人はね、竜騎。どんなに幸せでも、苦しくても、どんな人生を歩もうとも、誰かの記憶に居続ける限り死ぬことはない。でも人は死を恐れる。それはそうだ。だって.....生きた証も記憶も名誉も地位も! 全部! ......消えちゃうからね」
彼女はそう言うと、今度は俺の隣へときて、笑顔でこう言った。
「でもっ!! でもね、竜騎は私の事、忘れてなかった! 覚えていてくれた! また笑って欲しいって言ってくれた!! それだけで私は貴方の中で生き続けていた!! だから竜騎、今度は君が変わるんだ。君の人生、君が使え! そしてこの世界の本当の姿に気づくんだ。私はそこにいるよ! そろそろ時間だ、最後に一つだけ!」
彼女はぴょんと目の前へと移動した。
そして今までにないくらいの笑顔でこう言う。
「竜騎......大好き」
その彼女の笑顔を最後に世界が晴れ、崩れていく。
俺は覚悟を決め、崩れていく世壊へとその身を投げたのだった。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
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