流れ者
第45話〜流れ者〜
輝く太陽と海、そして煌びやかな砂浜で、獣人の少女は走り回っていた。
ここは海から流れてくる漂流物の溜まり場で、トレジャーハンターと称して、少女はよくここに訪れていた。
そんな時、砂浜に打ち上げられた大きめの何かを見つける。
「あっれー? こんな場所に人間が流れ着いてますね! おーい、生きてますかー? 返事がないですね? うーむ、どれどれ...」
少女は寝転ぶ人間の口元に耳を近ずけ、息をしているかを確認する。
「息は...してますねー! それじゃあ、生きてます! 置いていくのもあれですし、運んでいきますよー!」
少女は獲物を取ったように大はしゃぎで運んでいくのであった。
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〜獣人たちの隠れ里〜
ここは獣人や亜人が密かに暮らすための場所。
そんな場所で獣人や亜人といった人々が、盛況に動き回る中をかき分け、着いた先は薬屋。
そこからはなんとも言えない匂いが立ち込んで来るが、特別嫌って訳じゃなかった。
「オババー! 人連れてきたー! 」
少女がそう無邪気な声で言うと、奥からは干からびたような声が聞こえてくる。
「人? なんだいこんな場所に...まさか聖王国の人間じゃないだろうね!! それにあたしゃ、今忙しいんだよ、重傷者でもない限り...」
「いやー、なんか浜辺に倒れてて、今にも死にそうなんだー」
「それを早く言わんかいこのバカ娘!!!」
大きな声とともに奥から走ってくるような音が聞こえてくる。
少女は相変わらずポケーっとしていたが、オババが現れると持ってきた獲物をひったくるように持っていかれる。
そして奥へと運んでいき状態を確認する。
「オババ、この人助かる?」
「あー、こりゃやばいが死ぬほどじゃないね。それに...この腹の傷口は呪いかね。まあ、派手にやられたもんだ」
するとオババは何やら呪文を唱え始め、手元には輝く魔法陣が浮かび上がる。
「オババ何したのー?」
「あたしゃ解呪が使えるからね。これをしてからじゃなきゃ、治療なんて...って、ないだいこれは!!!」
唐突に大きな声を出すオババに、少女は耳を塞いでしまう。
「びっくりしたよオババ! 急に大きな声出てどうしたの?」
「いや、なんでもないよ。それよりリペ! 族長を呼んでくてくれるかい? 」
「いいけどなんでー?」
「流れ者の件は一度相談しなきゃいけないんだよ。ほら、さっさと行った!!」
「ぶー、もうわかったよ! でもその人は私が見つけたんだからね!!」
「へいへい」
そう言って少女は薬屋を出て、駆け足で里の中心にある一番大きな家へと向かっていた。
少女がいなくなったことを確認したオババは、再び人間へと視線を移す。
「はあ、あの子はもうちょっとしっかりしてもらわんとねぇ。それにしてもこんな化け物、どこから拾ってきたんだい。 あたしゃが解呪をした途端、傷口が治りやがったよ。こりゃあ、天からの贈り物か、それとも化け物か...そのどっちかだねぇ」
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王城の内側〜裏庭〜
その頃、メリーヌはいつものように裏庭へと来て、お茶をしていた。
自然に囲まれながのお茶は、どのお茶よりも格別だ。
しかし、これ以上に格別と言えるのは、やはりヨグがいるか、いないかだ。
少女は「はあ〜」とため息を漏らす。
それもそのはず、昨日の時点でヨグに任せた商人の船は、既に戻ってきており、その報告を待つばかりである。
きっと、こんなにも報告が遅いのは長旅で疲れているのだと自分に言い聞かせる。
その後、一時間また一時間と時間が経っていき、気づけばお昼頃である。
諦めかけたその時、裏庭の入口についている鈴の音が鳴り響く。
「はあ! ヨグ、君かい? 遅かったじゃないか!!」
「いえ、姫様。私でっせ!」
その声は今回の依頼を受けたビッパだった。
「なんだ、君か。ヨグが来たと思って喜んで、チビりそうになったじゃないか! それで報告だろう? ヨグはどうしたの?」
そう言うとビッパは青ざめ、汗をダラダラと流し始める。
「答えてくれないと分からないよ」
「じ、実は...」
そしてビッパは何があったのかを話し始めた。
彼の話によるとヨグは突如現れたモンスターの襲撃により、撃墜されたらしい。
既に捜索隊が海へと出ているが、未だ報告はなく、手詰まりの様子だった。
すると、その話を聞いたメリーヌは頭を抱え、絶望したような表情をしているだろう。
しかし、彼女はあることに疑問を抱く。
本当にモンスターの襲撃如きで、ヨグがやられるだろうかと。
彼女は一度深呼吸をし、心を落ち着かせる。
すると、見かねたビッパが声をかけてきた。
「姫大丈夫で? 顔色が少し悪く見えるで、休んだほうが...」
「いや、大丈夫だ。それよりもその話は本当なんだよね?」
「はい、ワイらを庇って...旦那が海の底へ墜ちていったんでっせ」
「ふーん...」
良く考えればわかる事だった。
ヨグとあの竜騎兵装があればおそらく負けることはありえない。
であれば、ビッパが真実を隠蔽しようとしていると考えた方が早い。
そう思ったメリーヌはいつもとは違う、真っ黒なベルを鳴らす。
すると低めの音が鳴り響き、ビッパは驚いた表情をする。
「う、うわっ....何するんで! 姫様!!」
そう言うビッパの背後は既に囲まれており、首元にはナイフが押し付けられる。
「何をする? そんなの決まってるじゃないか! 君は主人である僕に嘘をついたんだ。それって立派な裏切り行為だよね!」
「う、嘘なんてついて...」
「ああ、言い忘れてたけど僕は観察するのが得意でね。君は嘘つきだが、毎回嘘をつく時に気持ち悪く笑うだろ? もしかしてバレてないと思った? それじゃあ、バイ...」
「待ってくだせえ!!! 確かに旦那を海に沈めたのはワイです!! でも殺らねえと姫様を殺すって言われて仕方なく...」
「誰に?」
「へ?」
「誰に言われたのかな?」
「わからねえが、どっかの貴族の暗殺者でっせ!! これが真実で、姫様!!」
「そっかそっか......それじゃあ、パルマ殺れ」
「まっ!!!!」
次の瞬間大量の血が辺りへと散布する。
綺麗だった青い花びらも、赤黒い色へと変わってしまうほどに。
「ふふふっ、アハハハハハハハハ!!! やってくれたね! よくもやってくれたよ...。誰かは分からないけど、僕を怒らせたんだ。地獄より酷い目に会わせてやる。ヨグの仇は絶対に...」
彼女の中で何かが壊れたような音がした。
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〜獣人たちの隠れ里〜
リペが戻ってくると同時に背後には巨大な影が見えていた。
「オババ帰ってきたー!!」
「やっと戻ってきたかい! そんでアンタさんも忙しいのに悪いねぇ」
「いや、こっちも仕事から抜け出せていい空気が吸えるから、ありがてえもんだぜ」
そう言ったのは獅子の獣人であり、この里の村長のテペウスだった。
彼はその大柄からは感じえないほど臆病で、舐められないように外ではいつも口調をわざと崩している。
根っからの真面目気質なので獣人と言っても様々で個性があるのだ。
「それでリペが見つけてきたのがこの少年?か...」
「ああ、そうだよ。治療はしたけど聖王国の連中なら殺さにゃあかん。でもそれらしきものはないから、十中八九違うだろうね」
「私物であるこの服は謎だが、特別な素材であるのは確かだな...。しかし聖王国の騎士ならば、紋章の入ったペンダントを持ってるはずだが...水中で落としたか?」
「この服を見る限りじゃ、それはないね。なんせピチピチに作られてる。これだけ身体に合わせて作られてたら、布一つ落とさないよ」
「それじゃあ、後は新手のスパイということだけだな...わかった、要観察にする。それで彼は...」
「あがっ...」
突如発せられた声に、その場にいた者たちは皆驚いた表情をする。
特にオババは冷や汗が止まらない様子だった。
そして次の瞬間、死体同然だった一人の少年が新たな目覚めをするのであった。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
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