焦がされた愛
第42話〜焦がされた愛〜
私は学園の廊下を渡り、門を超えた先でニーズヘッグへと乗り込む。
私が中へ乗り込むと不思議と体が浮くような感覚がし始め、出入口が閉まっていきました。
始めてのことばかりで少し緊張と不安が残りますが、ヨグ様のためになるならと思い、私は大空へと飛び立ちました。
私は大空の景色を肌で感じました。
これがヨグ様の見ていた景色。
これがヨグ様の感じていた空。
私はそう思うとなんだか無性に嬉しくなってしまう。
ああ、なんという幸福感、そしてなんという満足感。
そんなものに浸っているうちに、目的地へと着いていた。
そこは森の奥にあった海沿いで、半透明で煌びやかな水が波を打っている。
「わぁ! 綺麗ですね!!」
「私の調査上、ここであれば人も滅多に来ませんし、リリィー様の火によって被害が出ることもないでしょう」
「それで私は何をすればいいのでしょうか?」
素朴な疑問をぶつける。
するとニーズヘッグは海の方を見てこう言った。
「リリィー様の限界の熱量を計測します。ですのでこちらの海に向かって火を放ってください」
「私の限界の熱量......ですか。確かにやったことはないですね。それではやってみます」
そう言った私は両手を前に構えて、いつものように体から火を生み出す。
火はあっという間に体全身へと纏われていく。
そして限界だと思ったその瞬間、前方へと放った。
放たれた火は水面へと触れるとその箇所から爆発し、水蒸気が立ち上る。
「計測致しました。温度は三百度ほどあり、熱量も竜騎兵装を動かす分には充分です。しかし、以前リリィー様の火は今のものより大きく、そして温度も計測ができないほどでした」
「以前というのは、古都でのダンジョン内の時のことですか?」
「はい、あの時のリリィー様の火はこんなものではありませんでした。現在も同じことをするのは可能ですか?」
「正直...私もどうやったかは分かりません。あの時は必死に何かを思って前に進むしかなかったので...」
そう、何を思っていたかは忘れてしまった。
いや、思い出せないようにしているのだろうか。
私はあの時の記憶を必死に甦らせる。
しかし、そう簡単に見つかる訳もなく、その場でしばし考え込んでしまう。
あの時...あの時は? ...とても怖かった? いや、違う。
怪我をして痛かった? ...いや、それも違う。
何かを必死に追いかけて、離さないようにしていた気がする。
いくら考えても当時の自分が何を思い、何をするためにあのような力が発揮できたのか、まったくもって検討つかなかった。
すると、ニーズヘッグが何かを閃いたように提案してくる。
「リリィー様、一つよろしいでしょうか?」
「は、はい! 何か思いついたのですか?」
「これはあくまでも予想でしかありませんが、私の機能である擬似空間により、ある状況をリリィー様に見せます。しかし場合によって精神的ダメージを負う可能性があります。それでよろしければ直ちに実行致しますが、どうなさいますか?」
「精神的ダメージ? もしかして怖い夢のようなものですか? その程度ならおそらく大丈夫ですのでやってみましょう」
「了解しました。しかし、リリィー様に危険を感じた時点で直ぐにでも中止させていただきます。それではリリィー様、こちらの機械を頭に被ってください」
そう言ってニーズヘッグは、耳と目を覆う物が合わさったような謎の機械を渡してくる。
私はそれを被ると、一時的に真っ暗な状態になりました。
そしてニーズヘッグさんの掛け声とともに気づけば、私は王都の中心に立っていたました。
???〜夢〜
王都の中心は繁華街になっており、多くの人で賑わっています。
何度かヨグ様と訪れていたので迷子にはなりませんでしたが、やはりサラマンダーである私は目立ってしまいます。
横を通って行く人たちからの視線は冷たく、そして嫌なものでしかありませんでした。
すると突然地面が揺れ、王都の外へと通じる門の方から人の叫び声のようなものが聞こえてきます。
それと同時に多くの人が逃げていく中、私は謎の胸騒ぎがして門の方へと向かいます。
門へと到着すると、先程の賑わいが嘘のように人がいませんでした。
聞こえてくるのは剣と剣がぶつかるような金属音のみ。
門を前にこっそり覗くと、そこにはヨグ様と誰かが戦っていました。
「よ、ヨグ様!?」
私がそう言うとヨグ様はこちらに一瞬振り向いて、何かを言い放っていました。
しかし、その声は一切聞こえることはなく、次の瞬間でした。
私がヨグ様の手助けに入ろうとすると、目の前には見えない壁があり、それ以上近づけなかった。
「よ、ヨグ様!! い、今すぐそっちに...」
見えない壁に向かって私は渾身の一撃を叩き込みます。
しかし壁はビクともせず、奥で戦う彼を見守るしかできませんでした。
そんな時だった...。
槍を弾き飛ばされたヨグは、腹部を突き刺される。
すると腹部からは大量の血が吹き出し、口からも血を吐き出す。
「ああ、ああああ......」
目の前の悲惨な光景に後ずさりし、心の奥底から煮えたぎるような怒りが込み上げてきました。
いや、いやっ!! これは現実じゃない......。
そう思うと同時に再び私は、王都の繁華街へと戻されました。
「な、なんで......さっきまであそこに......」
見事なほどの同じ光景に、私はこれが現実か、それとも偽物なのか分からなくなってしまいます。
すると再び人々の叫び声が、私の耳へと聞こえてきました。
ああ、まただ......。
私は息を切らしながら走りましたが、結局謎の壁に阻まれてしまいました。
そして、その結果は変わることもなく、愛する人を失ってしまいます。
戻され、殺されるを繰り返し、自分の不甲斐なさが段々嫌になってきました。
私は......何もできない。
それでも私は走る。
終わりのないこの悪夢の中を駆け巡る。
何度も。
何度も。
何度も。
何度も。
私は何回愛する人を失ったのでしょうか。
どうしたら彼を助けれるのかを考えます。
そしてこの悪夢も二桁を往復した時だった。
「あ、あ...」
私の中で何かが壊れた音がしました。
愛する人を襲うあのゴミ虫を、どうすれば排除できるか、答えは自分の中にありました。
心をなくし、例え畜生に堕ちたとしても、彼を助けられるのであれば、私はそれでいいのです。
例え罪人に成り果てようと......。
「もういい......。き、消えろ......。私のッ!!!! ヨグ様から、消えろ!!!」
心の中から発せられる熱い何かが、全身を覆い尽くす。
そうだ、あの時に感じた私の炎は、これです。
淡い黄色い炎が全て焼き尽くしていく。
まるで良い夢も悪夢に変えてしまうほど強い炎が王都全体を焼き尽くす。
そしてあの謎の壁に到着し、私は手をそちらに向け、炎を放ちました。
ビクともしなかった壁は見る見る炎が覆っていきました。
「消えろ...消えろ、消えろッ!!!」
謎の壁はビキビキと音を立てて、ついにはガラスが割れるように砕け散った。
そのままヨグ様を取り囲むゴミ虫を焼き払います。
「ヨグ様に...触れるな!! あの人は私のだ。ヨグ様に触れるゴミ虫も毒牙にかける蛆虫も全部ッ!!! 燃えてしまえ!!!!!」
そして次の瞬間、私は太陽と言われても変わらない程の炎を生み出します。
そのまま地面へぶつけようとする。
すると目の前には王都ではなく、広い水面が広がっていました。
気がついた私は太陽と変わらぬ炎を水面へと放ちます。
水面は大きく爆発し、一瞬だが地面の底が見え、抉れていました。
「ああ、私はやりました。あの悪夢を終わらせたんですね...」
「はい、素晴らしい火力でした。この測定を元に機体を精製します。リリィー様はその間眠っていて構いません」
「へ、へへ...」
そして私は意識を失いました。
どうも皆さんこんにちはこんばんわ永久光です!
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